あらすじ
ピカソやゴッホ、マティスにモネ、そしてセザンヌ。市美術館の珠玉のコレクションに、売却の危機が訪れた。市の財政破綻のためだった。守るべきは市民の生活か、それとも市民の誇りか。全米で論争が過熱する中、一人の老人の情熱と一歩が大きなうねりを生み、世界の色を変えてゆく――。大切な友人や恋人、家族を想うように、アートを愛するすべての人へ贈る、実話を基に描かれた感動の物語。(解説・鈴木京香)
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Posted by ブクログ
大好きな原田マハの作品
実話を元にしたフィクション。
自動車会社で40年溶接工として働くアフリカ系アメリカ人の男性フレッドが不況で解雇
パートタイマーで働く妻が「私の夢はあなたとデトロイト美術館に行くこと」励ます
彼女は工場で働いたり、皿洗いやレジ打ちの慎ましい生活の中で、時々1人で地元のデトロイト美術館を訪れるのを楽しんでいて、セザンヌの「マダム・セザンヌ」を「私の友達」と呼び、この場所を「私の友達の家」だと夫に紹介。美術は全くわからないけれどけれど、妻にそう言われて、彼もここが大好きになった。
そんな矢先、彼女が病気で亡くなり、生きる気力がなくなった時も、デトロイト美術館を訪れて、「マダムセザンヌ」と心の中で彼女の思い出話をすると励まされた
そんな中、2013年、かつて自動車産業の街として栄えたデトロイト市はアメリカ史上最大の財政破綻を起こす。市民の年金も払えなくなりそうになり、市民の生活を守るため、デトロイト美術館のコレクション売却を検討。
美術館のキュレーター責任者は自分も職を失うだろうと感じつつ、多くの美術品のコレクションは世界中のバラバラな所に売却されていくだろうとあきらめのきもちで売却先との対応を進める
そんな中、新聞で美術館売却の記事を読んだ元溶接工のあの老人フレッドが美術館を訪れて、「妻と私の大切な友達とその友達の家を守って欲しい」
と、はき古したジーンズのポケットに手を突っ込んで、皺くちゃの紙片を取り出した。
それは500ドルの小切手で、美術館を救うためには8億ドルを上回る寄付金が必要らしいが「年金生活者の私にはこれが精いっぱいなんだ」と渡してきた
それを見た美術館のキュレーター・ジェフリーの、あきらめていた暗い心に、「何とか美術品も市民の生活も両方守りたい」という強い気持ちが湧いてきた。
美術館員ジェフリーが毎朝出勤前に立ち寄るカフェで、デトロイト市と債権者との間の交渉を担当している裁判官のダニエルに出会い、「美術品のコレクションと退職者の年金の両方を救うとっておきの案がある」、と言われる
後日、裁判官ダニエルは全米きってのセレブリティや名士たちが集まる会議で
「人類の至宝であるこれらのコレクション、全米が誇る創造と産業の街・デトロイト。両方を守り抜くために力を貸してほしい」と懸命の訴えて、それに共感した9つの財団が巨額の寄付を表明したために、ついにはデトロイト市民と美術館を救済するための寄付金が目標金額8億ドルに達した。
今回の件でデトロイト美術館は市の管理下を離れて独力法人となったために、これから先は経済状態に左右されずに存続できることが決まった
美術館員・ジェフリーがこの嬉しいニュースを誰よりも先に伝えたかったのは、1年前に面会を申し込んできて1枚の小切手を差し出した元溶接工フレッド
「あなたがこの街にいてくれたことが、デトロイト美術館の奇跡を起こした」と伝える
職業も年齢も社会的地位も関係なく「この絵とこの美術館を守りたい」という思いが起こした本当の出来事とそれぞれの登場人物のひたむきさに胸がいっぱいになり、人前でも泣いちゃうくらいいい物語
Posted by ブクログ
物語をきっかけとして自分の好きな場所や好きなものがあって、それに関わる人たちを想像して描かれてるのかな?と。
裁判長の頑張りによる結果は正直どうでもよくて、貧乏な老人と、もっと前を生きた老人のふたりが愛したマダム・セザンヌを巡る想いが素敵だった。
Posted by ブクログ
相変わらず原田マハさんのアートの小説は面白いし、その作品や美術館に興味を持つよなあ
財政破綻のためにアート作品が売られそうになったっていう史実があることを初めて知った
かなり短いからすぐ読み終わった
Posted by ブクログ
あなたがリタイヤして、時間にも心にも余裕ができたら……あたし、一緒に行きたいと思ってたの。
──デトロイト美術館へ。
実際に起こったデトロイト市の破綻と、それに基づいたデトロイト美術館の美術品の売却案。そして、それらに対して奇跡的な立て直しを図ったデトロイト市民たちの熱い想い。
これらの史実に基づいたフィクションのお話。
だけど、原田マハ氏が実際に現地に赴き取材をして作られたこのお話には、確かにデトロイターたちの情熱が、しかと描かれていました。
──思いあるところに道は開ける。
不可能を可能にした、デトロイターたちの奇跡の物語。
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何でもします。
あの絵を、《画家の夫人》を守るためなら。
ゴッホにセザンヌ、ルノワール。綺羅星のようなコレクションを誇った美術館は、二〇一三年、市の財政難から存続の危機にさらされる。市民の暮らしと前時代の遺物、どちらを選ぶべきなのか? 全米を巻き込んだ論争は、ある老人の切なる思いによって変わっていく──。
実話をもとに描かれる、ささやかで偉大な奇跡の物語。
No.042:デトロイト美術館の奇跡/ 原田マハ
Posted by ブクログ
こんな夫婦になりたいなぁ。
素敵な、奇跡。
毎回感じることだけど、一枚の絵に、どれだけの物語があるのだろう。
原田マハさんのエッセイで、旅先で友人に会いに行くように絵画を観に行くと言っていたのを読んで、そういう楽しい気持ちで美術品と向き合うのって、すごくいいな、素敵だなと思っていたので、第一章のフレッドさんの奥さんの言葉が嬉しかった。
第一章だけでとても感動して泣いてしまった。
一緒に暮らしてきた人がいなくなってしまったら、それはもう寂しさで狂ってしまいそうだけど、最後にお願いされたら美術館に通うためにどうにか頑張って生きるかも。
その人との思い出の場所が残っていて、その人と一緒にいるような気持ちになれるのなら、きっと、寂しくないよね。
だから巡礼し切れないくらいにいろんな場所にたくさん行きたい!
もちろん美術館にも。日本は47都道府県全てに美術館があるということなので、まずは制覇したい!
わたしたちにとっての、《マダム・セザンヌ》を見つけたい。