【感想・ネタバレ】疫病と世界史(下)のレビュー

あらすじ

かつてヨーロッパを死の恐怖にさらしたペストやコレラの大流行など、
歴史の裏に潜んでいた「疫病」に焦点をあて、独自の史観で現代までの歴史を見直す名著。
紀元1200年以降の疫病と世界史。
「中国における疫病」を付す。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

下巻の半ばから、ようやく(期待していた)本題。

何故、かくも少数のスペイン人に、アステカとインカという二つの大帝国が征服されたのか。
確かに、スペイン人がやってきて疫病が大流行して膨大な死者が出、且つスペイン人は疫病の被害を受けない。それなら、人口が激減して軍のみならず国家も社会も崩壊するし、「神の恩寵を受けているとしか思えない」スペイン人への抵抗は物理的にも精神的にもできなくなるな。そりゃあ、キリスト教に改宗するわけだ。ようやく理解できた。

そして、「悪疫によって引き起こされた一般大衆の憎悪と恐怖の感情は、激越な形をとってほしいままに表現された。特に貧者の富者に対する長い間抑えられてきた怨恨が、しばしば表面化して爆発した。こうして各地に起こった暴動と私邸の略奪は、社会組織を重大な試練に直面させる事となった」

この一説は、新型コロナウイルスからの黒人暴動を予言した形となってしまった。残念である。合衆国がこの試練を乗り越えんことを祈りつつ。

それにしても、「マクロ寄生」という概念(一般に言うところの分業化と権力)は必要だったのか未だに酔うわからんが。

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2020年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。

そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。

また、このような疫病が数々の戦争の原因となったり、勝敗を決する要因となったりしていることに驚かされた。さらに、戦争の原因となっているにもかかわらず、その戦争の衛生部隊によって衛生観念が広まっていったという逆説的なことにも驚かされた。

最後に筆者が述べていた、「過去に何があったかだけでなく、未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、規制する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は覆い隠せるものではない。人類の出現以前から存在した感染症は人類と同じだけ生き続けるに違いない。」という文章は、この先も真実であり続けるだろうと思った。技術が発展するにつれて菌の繁殖力が強まっているという背景にはこのようなものがあるのだろうと考えさせられ、技術の発展も一概に良いことといえないのではないかと思った。

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2012年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 下巻はモンゴル進出以降の疫病の歴史。黒死病と言われたヨーロッパのペスト禍。この間を含めローマ帝国最盛期からルネッサンス期まで、ヨーロッパの人口は殆ど増加しなかった。そして、新大陸到達におけるインディオの低免疫によるユーラシア・アフリカの疫病禍。絶望的ともいえる人口の減少は数百年かけて奥地の小部族をも全滅させた。
 終盤は天然痘。いわゆる種痘免疫法は、古来よりアジアの庶民風俗として定着していたらしい。その技術が英国をはじめとする欧州の王室を救った。また戦死は、従来ほとんど疫病の感染が原因であった。しかし日露戦争における日本兵の集団混合接種により人類史上初めて相手方の攻撃が主因になった。
 人類史においては鉄器、大砲、疫病が人口減少に寄与した物であるらしい。(「鉄・銃・病原菌」という本がある)ガンや心臓病が克服されても、人類は疫病とだけは付き合っていかざるを得ないと著者は語る。他生物には人類こそが最大の疫病であろう。

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2010年06月14日

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