【感想・ネタバレ】疫病と世界史(上)のレビュー

あらすじ

アステカ帝国を一夜にして消滅させた天然痘など、突発的な疫病の流行は、歴史の流れを急変させ、文明の興亡に重大な影響を与えてきた。
紀元前500年から紀元1200年まで、人類の歴史を大きく動かした感染症の流行を見る。
従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあて、世界の歴史を描き出した名著。(全二巻)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

疫病の発生過程の説明にまず驚かされた。初期の人間は、生態系の中に組み込まれており、自然な疫病による人口統制がなされていた。しかし、狩猟や農耕を始めることによって生態系を壊し、ミクロな病原菌の生態系をも壊すことによって細菌の繁殖力を増強することによって都市病等の病気にかかるようになっていった。このように自業自得的な過程があったということに非常に驚いた。

そして、このように周期的に訪れる疫病からの死の恐怖が、キリスト教を発展させていった。というのが面白かった。キリスト教では死は幸福であり、ほかの宗教では不幸であるというはっきりとした違いを再確認させられた。

また、このような疫病が数々の戦争の原因となったり、勝敗を決する要因となったりしていることに驚かされた。さらに、戦争の原因となっているにもかかわらず、その戦争の衛生部隊によって衛生観念が広まっていったという逆説的なことにも驚かされた。

最後に筆者が述べていた、「過去に何があったかだけでなく、未来には何があるのかを考えようとするときには常に、感染症の果たす役割を無視することは決してできない。創意と知識と組織がいかに進歩しようとも、規制する形の生物の侵入に対して人類がきわめて脆弱な存在であるという事実は覆い隠せるものではない。人類の出現以前から存在した感染症は人類と同じだけ生き続けるに違いない。」という文章は、この先も真実であり続けるだろうと思った。技術が発展するにつれて菌の繁殖力が強まっているという背景にはこのようなものがあるのだろうと考えさせられ、技術の発展も一概に良いことといえないのではないかと思った。

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2012年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

疫病からみた人類史の考察。病原体によるミクロ寄生だけでなく、文明によるマクロ寄生という視点。人口増加にはマクロ寄生とミクロ寄生の両方の克服があったとする。科学技術の発達で予防接種の行われる時代に生きることがなんとありがたいことか。ただ、ツエツエバエは怖い。

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2021年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

書かれてのが、エイズが流行してた時代という古いのはともかく、なんか文章が読みにくい。
あと、題名から想像できる内容とは若干違う。
世界史じゃ無くて、「人類史における、権力の発展と感染症との相互作用と、その歴史」とでもいうべきなのか、
まあ、「ミクロ寄生とマクロ寄生という概念を用いて、ミクロ寄生とは感染症であり、マクロ寄生とはあたかも感染症のようにある人間集団が別の人間集団に寄生している様」であり、興味深くはあるのだけれど。

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2020年06月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天然痘がインド生まれだなんて、よくわかるものだなと感心した。病気の伝染と人類史を絡めるという視点が新しいと思った。なおかつ、説得力もある。

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2020年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 人類に寄生、感染発病する疾病、捕食者を地域と時系列で追った社会学的著書。現生人類の誕生前の樹上生活時から、世界各地に文明が栄える12世紀までを上巻で取り上げている。

 著者は寄生を広義にとらえ、ライオン・オオカミなどによる捕食、ヒトによる寄生(略奪・支配)をマクロ寄生とし、微生物についてはミクロ寄生と定義した。さらに気候、統治、農耕による影響を加えて検討している。一例で言えば、ヒトの移動や都市の形成にともない新たな寄生を受けた当初は劇症を発するが、寄生主も生き延びるために変態し、慢性化をして定着していくといった具合である。

 読者が印象的であったのは、戦争の必要性(人口、食糧)、風土的疾病による見えないバリア、宗教発祥の地域性など、単なる道徳やイデオロギーでは解し得ない生き物としてのヒトという観点だ。

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2020年04月25日

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