あらすじ
19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画
商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で
浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの
前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホ
と、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇
跡の出会いが〝世界を変える一枚〟を生んだ。
読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜
持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
林忠正はテオの次にゴッホのファンなのだと途中まで思っていたけど、ゴッホを通して過去の自分を見ていたのだと思う。
早くお前もここまで辿り着け、お前ならできる、なぜなら自分もここまで来てるんだ、早く来い。そんな想いを持ってゴッホを見守り、接していたんでしょう。
林忠正は、仕事で成功してお金を手に入れただけでなく、サロンに招待されるような人間になり、フランス パリに認められている。一方でテオのような自分の半身のような存在はいない。重吉はあくまで部下、後輩という立ち位置なので半身にはなり得ない。
ゴッホは、仲間内にはその絵の価値を認められている、みんながこれは新しい絵だと衝撃を受け褒め称えるものの、世間には認められず、パリに拒絶され、お金もない、惨めな暮らし。でも自分の全てを信じてくれるテオがいた。
林忠正がゴッホにもなり得たし、ゴッホが林忠正にもなり得た。2人を分けたものはなんなのだろうか。
全部読んでから改めて冒頭にもどると、ああ、あなたはテオとヨーの息子だったのか、と思い知らされます。どんな思いでオーベルジュを訪ねたのだろう。
Posted by ブクログ
特に印象に残ったのは、テオが兄ゴッホを献身的に支え続ける姿だった。金銭的にも支え続ける一方で、ゴッホはそのお金を酒などに使ってしまう。それでもテオは兄を信じて支え続ける。
ただ、読んでいて「テオは兄だから支え続けたのか、それとも兄の才能を信じていたからなのか」と考えてしまった。血縁だからなのか、ゴッホの絵に何かを感じていたからなのか。その両方なのだろうけれど、もしゴッホに絵の才能がなかったとしても、テオは同じように兄を支え続けただろうか、ということも気になった。
そして、これだけ献身的に支えてくれる弟がいながら、自分の作品はなかなか評価されない。ゴッホの側からすれば、才能を信じてもらっているからこそ、その期待に応えられない苦しさもあったのではないかと思う。社会や周囲への不満を酒で紛らわせてしまう姿にも、単純に「だらしない」とは言えないものを感じた。
作中では浮世絵についても何度も描かれていて、当時の日本では価値を認められていなかったものが、フランスで評価されることで日本でも見直されていったという話が出てくる。
芸術は作品そのものだけでなく、それを評価する時代や環境にも大きく左右される。ゴッホに才能がなかったのではなく、彼の才能を理解し、評価できるところまで見る側が追いついていなかったのだと思う。
そう考えると、生前ほとんど評価されなかったことこそ、ゴッホの不幸の一つだったのではないかと感じた。