あらすじ
好きになった人に“たまたま奥さんがいた”
だけの、二人の女。杏子は「もうひとつの家」
に帰る彼を毎夜見送り、みずきは病身の妻を
養う彼の訪れを今日も待ちわびる。守られな
い約束、聞き慣れた噓、会えない時間が増え
続けても二人はとても幸せで……。しかし、
たった一通のメール、ほんの一回の情事が、
〝恋濃き〟大人の女たちを狂わせる――。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
切なかった。
小手鞠るいさんの作品は3作目になるが、前回は読みながら号泣して、今回も泣きはせずとも切なくて胸が締め付けられた。
不倫だから悪、は綺麗事で形はどうあれ恋は恋で愛は愛だ。馬鹿な女と憎い男なのかもしれないけれど、そこには他人が介入できない当事者だけの思いがある。私には彼女たちの気持ちがよく分かった。感情移入して本当に辛かった。胸を抉るような切なさを描くのがなんて上手な人なんだろうと思った。
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すごく惹き込まれるお話でした。二人の女性のお話。二人なのか一人なのか。途中二人が交差するところが面白い。終わりというのは急に来てしまうのだと、ビックリしました。あんなに離れられないと語っていた二人が、あるきっかけで離れる決断をする。その事実はそれくらいの出来事なのだと、事の重さを再確認しました。
Posted by ブクログ
「私の本当の恋を人は不倫という」不倫中の女性の手記。なんというか、文章がとてもオシャレだなと。「今の私の生活は、他人の目から見れば不幸に、あるいは異常なものに、映っているかもしれない。けれど、そう、そうなの。『不幸もまた、幸福の一部である』ということなの」
Posted by ブクログ
誰かを好きになるということは、誰も制限することはできない。好きになっちゃいけない人なんてこの世にはいない。恋は自由。だからこそ不自由。
何も気にせずあの人の胸に飛び込むことができたらどれだけ幸せだろうか。理性なんて今すぐ捨てたい。でも、できない。
だから。だからせめて。ちゃんと返すから。だから今だけはどうか。
そう願わずにはいられない。
Posted by ブクログ
読んでいるうちにどんどん引き込まれていった。幸福の中に不幸があるからその幸福は幸福として成り立っているのか。恋愛って人の数だけ色んな形があってそれぞれに色んな思いが交錯していって、恋愛ほど単純で難しいものってないのかもしれない。
Posted by ブクログ
杏子と幹広、そしてみずきと明典、2組の不倫カップルの恋。
女性側はそれぞれ若い時に離婚歴があり、現在独身の30代。たまたま恋に落ちてしまった相手が既婚者だったという(それを知らないうちに好きになってしまっていた)ごく普通の女性たち。
厚めの本で、わりと短いエピソードが順番に描かれているので、「不倫の恋にはこういうことや苦しみや罪悪感などがあるだろう」と思える内容がてんこ盛りで、自分自身もそういう苦しい恋をひとつ経験したような気分になった。
おしゃべりで外交的な杏子と、物静かで本の世界に浸るのが大好きなみずき。ぱっと見は対照的な2人。
杏子とみずきの間には関わりはないけれど、読み進めていくにつれて、重なる部分があることに気づいていく。それも不思議な感覚で。
無責任に甘い言葉をかける男の狡さが残酷だけど、それを信じて選んでしまった女にも責任はある。
蜜月めいた時間が長く続いてしまう関係だけど、その時間は結果的に空虚なものに変わることも多い。そういう意味ではやはり、不倫の恋というのは報われないことが多い。
でも、人の気持ちや行動はすっぱり善と悪には切り分けられない、ともやはり思う。善くはないとわかっていても、それが拠り所になってしまうことも、きっとある。