【感想・ネタバレ】ツインスター・サイクロン・ランナウェイのレビュー

あらすじ

人類が宇宙へ広がってから6000年。辺境の巨大ガス惑星では、都市型宇宙船に住む周回者(サークス)たちが、大気を泳ぐ昏魚(ベッシュ)を捕えて暮らしていた。男女の夫婦者が漁をすると定められた社会で振られてばかりだった漁師のテラは、謎の家出少女ダイオードと出逢い、異例の女性ペアで強力な礎柱船(ピラーボート)に乗り組む。体格も性格も正反対のふたりは、誰も予想しなかった漁獲をあげることに――。日本SF大賞『天冥の標』作者が贈る、新たな宇宙の物語!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ある星にたどり着いた宇宙船の人々はその星に資源があることを期待していたが、あいにく着いた星はガス惑星で資源を得られそうになかった。しかし、大気中を泳ぐ魚が資源化できることが分かり、漁を発達させ、得られた資源をもとに繁栄していく。結果的に主人公らの時代では封建的な氏族社会になっていたが、テラとダイの二人は異例の女性同士のペアで漁に挑み、色々な慣習を打ち破ろうとする。

スピード感のある漁の様子とテラとダイの絡みが魅力。ガス惑星に沈んでいる生き物が自身から魚を作っており、人類にそれを大気圏外まで運んでもらうことで脱出を図っている、という話も個人的には好みだった。

オーディブルで聴いたが、耳慣れない単語が多かった印象で、なかなか理解に苦戦した。用語などを別に調べて分かるようにはなったが、文章で読んだ方が分かりやすかったかもしれないと思った。

0
2025年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 凄く面白く読んだが、結末はあまり好みではなかった。
 もう少し長くあって欲しかった、と思うのは、欲張りだろうか。きちんと許可を受けて、(たとえそれがストーリーを進行させる上で要請されるシーンでなくとも)漁をするシーンはもっと見たかったし、二人の結末が描き切られていたか、というとちょっと落ち着くには足りない感じがした。今後の展開は示してあるから想像はつくけど、一番盛り上がるところで終わってるような気がする。
 ダイオードが過去の記録を漁っていたのは、合法的に結婚するためではないかと思いながら読んでいたのだが、結局「想いが通じ合っていれば」とか「世界なんて関係ない」みたいな、百合だとありがちな結論を出してしまっている気がして、そこが少し釈然としなかった。
 が、百合SFとしてだめか、というと全くそうではない。台詞回しがちょっと軽すぎるかなーと思う箇所はあれど、キャラクター造型は魅力的だし、彼女らの織りなす関係性は素敵だ。慣習に縛られながらも溶け込めないテラと、少女らしい美しさを持ちながら、芯の強さと荒々しさを秘めたダイオード。彼女らが正体を探り探り、お互いを必要としながらも、どこまで距離を詰めて良いのか戸惑いつつ、少しずつ心を通わせて行きーーかと思えば、一気に行き着く思い切りのよさ。緩急の効いた良い進展のさせ方だったと思う。
 また、設定の扱いが硬すぎず、雑すぎず、SFとしては非常に好みな塩梅だった。とりあえず固有名詞ぶん投げても、然るべきタイミングできちんと説明がある。お陰でくどくなり過ぎず、勢いが削がれることなく、徐々に世界設定の霧が払われて行く感じがあって、楽しく読めた。個人的な難点こそあれど、それでも本作は百合にもSFにも妥協なく、一粒で二度美味しい傑作であると、言えるだろう。

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2020年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 僕たちには
 物語、しか
 ない。



 ひとことで云えば、気持ちの良いSF。
 元々が百合アンソロジーの短編なので、それはもちろんそうで、
 長編とするにあたって、それがそうであるから出てくる問題、というか社会的な部分に、触れるか触れないか。
 それは見て見ぬふりをするかしないか、ということなのかも知れないけれど…
 むしろそれ自体を推進剤としているようにさえ感じて、素直にぐっときました。
 風穴を開けるドリルのコアチップというか。
 物語の要石というか。
 こういう書き方もある、なんて偉そうだけれど。
 開けっぴろげで、
 わざとらしくなくて。

 そう。
 ここには感じるべき物語しか、ない。

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2020年03月24日

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