あらすじ
大手生保会社が資金繰りのため国債を投げ売りする事態が発生、国債価格が暴落した。国債頼みの政治は、誰かが終わりにせねばならない……。国家予算を半減すべく、江島隆盛総理のもと若手財務官僚が集い、極秘作戦(オペレーション)が始動する。しかし他省庁や与党守旧派が抵抗し、世論も猛反発、メディアの攻撃が渦巻くなか、総理はついに国会を解散する大博打を打つ――。息もつかせぬ緊迫のメガ政治ドラマ!
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Posted by ブクログ
経済小説ですが、日本経済の入門書だと強く感じました。同時に政治小説としても読めますし、エンターメントとしても抜群に面白い作品でした。文庫本で650ページにわたる大作ですが、一気に読んでしまいました。
日本の経済問題や財政問題にはとても疎く、漠然と借金が莫大であるという知識しかない私にとって、とても衝撃的な内容でした。フィクションでありながらとてもリアリティーを感じさせてくれたのは、巻末に示された圧倒的な量の参考文献です。
テーマは多岐に渡ります。財政赤字が1,000兆円の件、国会破綻(デフォルト)、IMFや海外の国家破綻の事例、アベノミクスの功罪、地方財政の破綻ー夕張市(作中は北海道の架空の市)の例、地方再生の取り組み等々、小説という手法に抜群のエンターテイメントを加味して読者に届けてくれました。著者の真山仁氏には感謝の気持ちで一杯です。上記の問題の入門書として、多くの人に読んでいただいて、自分たちの事として捉えて欲しいと思いました。
作品の大きなテーマは、日本がデフォルト回避のための政策として、歳出を現在の半分にするというとんでもない荒療治を実施するために、総理と若手の財務官僚が悪戦苦闘する物語です。
しかし、この極端なテーマの設定が、今の日本経済の問題をわかりやすく解説する手助けになっていると思いました。著者の意図や思いがとても伝わってくるように思いました。
作中作に『デフォルトピア』という作品が登場します。このネーミングもこれしかないというタイトルでだと思いました。
多くの登場人物に、それぞれの立場で主張を語らせますが、決して正解を提示するような内容ではありません。むしろ立場が変われば、主張が異なることは当然で、それを可能な限り可視化してくれたように思います。故に、我々読者に日本経済のことをしっかり考えてください、その材料は示しましたと言われているようです。
日本経済という難しい問題も、結局は私たち国民一人ひとりの問題で、無関心ではいられない点が明らかにされていたと思います。政治家や官僚に委託はしているけど、受託者達だけの責任ではなく、委託者である国民の責任もあると思いました。
要は政治に無関心であることは、まわり回って自分たちに返ってくるという当たり前の事に気づかされるのです。