あらすじ
「わび・さび」「数寄」「まねび」……この国の<深い魅力>を解読する!
独自の方法論で日本文化の本質を見通す「松岡日本論」の集大成!
お米のこと、客神、仮名の役割、神仏習合の秘密、「すさび」や「粋」の感覚のこと、「まねび」と日本の教育……断言しますが、日本文化は廃コンテキストで、一見、わかりにくいと見える文脈や表現にこそ真骨頂があるのです。(「はじめに」より)
<本書のおもな内容>
・なぜ日本はヤマトと呼ばれるのか
・神さまをカミと呼ぶようになった理由
・日本人のコメ信仰にひそむ背景
・日本人が「都落ち」にダンディズムを感じる理由
・日本人が七五調の拍子を好むわけ
・世阿弥が必要と考えた「物学」の心
・今の時代に求められる「バサラ」と「かぶき者」
・「伊達」「粋」「通」はなぜ生まれたのか ほか
<本書の構成>
第一講:柱を立てる
第二講:和漢の境をまたぐ
第三講:イノリとミノリ
第四講:神と仏の習合
第五講:和する/荒ぶる
第六講:漂泊と辺境
第七講:型・間・拍子
第八講:小さきもの
第九講:まねび/まなび
第一〇講:或るおおもと
第一一講:かぶいて候
第一二講:市と庭
第一三講:ナリフリかまう
第一四講:ニュースとお笑い
第一五講:経世済民
第一六講:面影を編集する
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Posted by ブクログ
私の読書の動機は言葉との出会いが主たるものなのですが、この本はディープでした。これまで読んだ本とは異質の出会いがたくさんです。こういう方面も面白いですね。って、ジャンルなんかあるのかな?w
Posted by ブクログ
8月は日本という国を学び直したくなる。本書は古代・神話の時代から現在のSNSや地下アイドルの活躍まで、時代や地域を問わない一本とおった筋みたいなものを浮き上がらせてくれる。侘び寂び、粋、コメ信仰など、日本独特の思考・嗜好がどこからきたのか。和を尊ぶ国でありながら、異質性に憧れ、取り入れて独自の文化を作ってきたことなど。松岡さんの本は難解というイメージだったが、これはとてもわかりやすかった。
Posted by ブクログ
この本、素晴らしい
松岡正剛先生、アタマ良い(誠に、まことに僭越なもの言いですみません…)
筋が通っていてウィットもあり読みやすい
「私は、なんて無知だったんだ…
なんて日本の文化は素晴らしいんだ」と思わせて頂き、
(また、この本とは直接には関係ないのかもしれないですが)
「私は生まれ変わっても、
この“水”に恵まれた、素晴らしい国土の日本に生まれたい。
水源を他国民に売るなんて、なんてバカなんだ」
などと、さまざまなことを思わせて頂けて勉強になる… 感謝です
※さらに、これは私の無知で偏見かもしれないのですが、
"キラキラ・ネーム"って、どんな付け方をしておられるのだろう?
(私も知らないでいたことを棚に上げて誠に不遜ですが)
日本の歴史からすれば、(歴史を知って振り返る範囲で、という意味での)
ずっと知的で意味のあるネーミングって、
既にたくさんあることを垣間見ました…
野口悠紀雄さんの"悠紀"なんてのも、そうだったのですね…
逆に、"知らない"ということ、それだけ"のびしろ"があって、
好奇心次第では、人生飽きることは無い、と、
むしろ前向きに考えることも出来る、とも思いました…
(むりやりな自己肯定 笑)
しかし、返す返すも、こんな知識量と、分かり易く、好奇心を曳きだして
くださりながら、読み進むことが出来る、これぞ名著だ!と、
勝手に痛く感心しております。感謝。
この本に紹介されている本の数々、私はまだ数冊しか巡り合ってこなかった
不知を恥じ、これからおいおい、興味を持ってそれらの本に目を通していく機会を
持ちたい、とも思っています。壮大な読書旅になりそうで、ワクワクします!
Posted by ブクログ
大和、ヤマトは山の門(やまのと)
歴史は言葉で作られる
世阿弥の物学(ものまね)、「まねび」を稽古することをもって「まこと」に近づいていくことを「まなび」とした
日本的モードをあらわす言葉、風、様、流、式、派
日本人の表現性は、和歌、俳句から新聞や週刊誌、テレビフリップまで、すこぶるヘッドライン的
日本文化にまうわるコンセプトやキーワードこそが日本社会を探究するための用語になったほうがいい
景気も経営ももとはアートの用語、語源はラテン語のアルス(技芸、方法)
日本文化の精髄は「おもかげ」を通すことによって一途に極められ、「うつろい」を意識することによって多様に表象されてきた
清沢満之の二項同体
面影を編集してきた日本
Posted by ブクログ
哲学、文学、歴史、伝統芸能、舞台、音楽、漫画、アニメetc...と、この一冊を読むだけで松岡氏のカバーレンジの広さに圧倒される。
特に音楽やアニメ、漫画などは最近のものもしっかりと押さえていることに驚愕するとともに、そんな松岡氏だからこその多角的な視点から日本というものを考察した本作は、わかりやすいのだがサラッと読むんでは決していけないんだと思う。
引き摺り込まれるというより、自ら深みにハマっていくような感じか。
中で紹介されている本を読むだけで、多くの時間を費やし結構な深みにハマっていってしまうだろう。
Posted by ブクログ
ニホンとニッポンの呼び方や侘び寂びの意味など、普段自分が何気なく使っている言葉について、語源をたどりながら解説されていて日本について少し知ることができた。
日本は同調圧力が強く単一民族だから多様性がないと思っていたけれどそうではないことを知った。
縄文時代以降、稲・鉄・漢字の登場によって、さらにそれらを日本独自にアレンジしてきたことを考えると、現代のグローバリズムに乗る必要はなく、それを取り入れながら日本にとっての良い形に変えていけばいいのだと言われていた。
この考え方に関しては、まだまだ理解しきれていないので、自分でも使えるように考え続けていきたい。
Posted by ブクログ
正剛さんの世界にどっぷりと浸って、日本について考えることができた。私にとって、正剛さんの本はいつも難解だし、初めて知ることも多い。もっといろんな本を読みたい、もっと知りたいという知的欲求を高めてくれる本です。
Posted by ブクログ
久しぶりによむ松岡正剛さんの日本文化論。
新書なの気軽に読み始めたのだが、350ページくらいで厚めで、16の角度から日本文化に接近していて、内容的もかなりの圧縮度で、読み終えるのに数日を要した。
松岡さんの仕事をそんなにおかっけているわけではないのだが、これはちょっと日本文化論の集大成なんだろうな〜と思う。
書いてあることは納得感があるし、自分がここ数年、考えているんだけど、思考の行き詰まりを感じていたことへのかなり直接的なヒントをいくつかもらった。
あ〜、やっぱ、欧米的なロジックの世界で考えていくと、自分が納得できるような出口はなかったんだ。でも、ちょっと角度を変えて、多様な日本という視点でみてみると、問題だったものが、すこしゆるまったり、ほどけてきたりする感じがある。
これはしばし維持したい視点。
次に進むためには、どのあたりの本を読めばいいのかも教えてもらった感じで、お得感があった。
う〜ん、この本のコスパって、かなり高いと思う。
Posted by ブクログ
日本文化
ハイコンテキスト(以心伝心)で
一見わかりにくいと見える文脈や表現に真骨頂
柱=神々 :客神
産霊(ムス ビ)
「稲・鉄・漢字」の伝来 →漢和リミックス
紀貫之 土佐日記
仮想トランスジェンダー 仮名
→枕草子、源氏物語へ
しつらい・もてなし・ふるまい
多神多仏
七福神
恵比寿:日本の漁業の神
大黒天:ヒンドゥー教のシヴァ神
福禄寿:道教の神
毘沙門天:仏教の四天王 ・・・
侘び≒詫び
寂び≒荒び(すさび)≒遊び:夢中な状態→数寄=好き
小さきもの
ポケモン、かぐや姫、一寸法師、桃太郎、根付、
コギャル
メディアとしての器、器用と器量
貨幣
弊=神への捧げもの →賽銭 銭を洗う
日本の情報文化 ニュースと笑い
わかりやすさ 編集力の低下
(情報=編集されたもの)
日本=システムなきシステム
「権力中枢の不在を補うシステム」
おもかげとうつろい
記憶の中の面影を編集し情報化し編集を加えていった
Posted by ブクログ
日本文化の核心とは何か――その本質を「文脈知」に求める。四季を愛し余白に美を見いだし言葉にせずとも気配で通じ合う。この国の文化は茶道や和室、仮名文字に至るまで独自の感性と文脈で編まれてきた。しかし現代の日本は西洋的な価値観に流され自らの文化を見失いつつある。断片的な知識ではなく全体をつなぐ文脈としての日本文化。その深い魅力を私たちは本当に理解しているのだろうか。松岡は今こそその核心を見つめ直すべきだと問いかける。
Posted by ブクログ
【たまには内向きに。】
日本文化の特質とその歴史を解説した本。
日本人として生を受けたのであれば、それを最大限味わい尽くしたい!そんな人におすすめ。
自分の文化の特質に自力で気づくことはそう容易くない。
それを知ることができるというだけでも本書は一読の価値がある。
この本を読めば、数百年、もしかしたら数千年をかけて脈々と受け継がれてきた感性で日々を生きることができる。
そこに浪漫を感じるのは私だけだろうか。
私たちは、強い統治者に支配された5000年の歴史を持つ中国人の感性を理解することはできない。
ましてや遠く遠くの自由と権利を求めるフランス人の感性を理解することなんて到底できない。
そんな私たちでも、日本人の感性なら、限りなく近く理解できる。
折角日本人として生まれたから、大事に味わい尽くしたいものだ。
Posted by ブクログ
日本文化を本当に伝えることができているか?
本書の掲げる問いに、ちょっと虚を突かれた思いがする。
内村鑑三、岡倉天心、西田幾多郎など、恐ろしく外国語が堪能な人々が、それでも伝えられないと思い至ったギャップとは何だったのか。
俄然そんなことが気になってくる。
それにしても。
相変わらずこの人の持つ情報量のすごさに圧倒される。
ポケモンと桃太郎、一寸法師から、スクナヒコナに遡る。
過差とバサラの関係。
そういったハッとするような見方を提供してくれる。
もちろん、細かいところでは自分の見方と異なるところがある。
鴎外の「ヰタ・セクスアリス」はそれほど軽い作品なのか?とか。
根本的なところでは、文化は「情報」なのか?とか。
(情報とみなしてしまうことで見落とされていくものはないのだろうか。)
結局「日本という方法」とは何なのか。
すっきりわかった気がしない。
Posted by ブクログ
「知の巨人」と言えば立花隆氏となりますが、最近は、松岡正剛氏ではないかと思うようになりました。「千夜千冊エディション」では、膨大な書物のエッセンスを抽出し、編集工学研究所で「編集」をテーマに活躍されています。そもそも、この人の読書量は並ではない…。
「知の編集術」以来、久しぶりの新書書き下ろし版が出て、しかも日本文化についてとあり、さっそく読んでみました。西洋の一神教に対して日本は客神、「和する」と「荒ぶる」両方併存が日本の文化、「わび」が「侘び=詫び」、「さび」が「寂び」がもともとの語源とか、などなど…、知らないことのオンパレードで、この博覧強記にはひたすら感心しました。
知識の開陳という側面が強いかもしれませんが、「第十三講」からは独自の解釈も出てきます。若い方には知らない固有名詞が多いとは思いますが、日本人は一度は読んでおきたい一冊です。
Posted by ブクログ
日本文化、芸術、システム工学に詳しい著者が、日本文化の根幹にあるものについて述べた本。「柱」「結び」「神」「間」「家」など、カギとなる言葉について解説しながら、日本文化の核心に迫っていく手法をとっている。もちろん明確に核心が示されているわけではないが、おぼろげながら感じることができる程度の理解であろうか。1つ1つの事柄に関する研究は精緻で勉強になった。
「ディープな日本の特色」p3
「日本文化はハイコンテキストで、一見、わかりにくいと見える文脈や表現にこそ真骨頂があるのです」p6
「日本人はディープな日本に降りないで日本を語れると思いすぎたのです。これはムリです。安易な日本論ほど日本をミスリードしていきます」p8
「(稲、鉄、漢字)約1万年にわたった自給自適の縄文時代のあと、中国から稲と鉄と漢字が入ってきて日本を一変させたのです。紀元ゼロ年をまたぐ200~300年間のこと、弥生時代前後の大事件でした」p17
「(柱の文化)神さまを「御柱」と呼んだり、神さまの数を「柱」で数えてきた。家の中心は「大国柱」、床の間には「床柱」があった」p22
「柱を立てる、身を立てる(立身)、志を立てる(立志)、国を立てる(立国)、いずれも立ててナンボです」p22
「(ムスビの国)「横綱」「結納」「結婚」「おむすび」」p26
「地鎮祭では、その土地の一角の四隅に四本の柱を立て、そこに注連縄を回して結界を張ります。内藤廣や隈研吾という建築家は地鎮祭をたいへん重視しています」p27
「仮名の出現が日本文化の確立を促した最大の事件(ドナルド・キーン)」p44
「(リミックス)神仏習合もかなり大胆な日本特有の編集力によっておこった」p89
「王朝感覚の「あはれ」を武家が感じると「あっぱれ」になる」p119
「西行や能因法師がタブの途中で田舎家を訪ねても、その家の主人は「こんな田舎家を訪ねてくださってたいへんありがたい。どうぞ一夜お泊りください。ただ申し訳ないことに、粗茶、粗食しかお出しできません」などとお詫びをします。けれどもそこを訪ねた西行や能因法師からすると、亭主たちのこの「詫びる気持ち」こそが何より尊いものに感じられる。こうした気持ちの交わしあいから「詫び」が転じて「侘び」という価値が生まれていったのです」p124
「ハーンやフェノロサやコンドルが見出した日本の美は生活の中に生きていたり、徒弟的に師から弟子に伝えられたりしてきた技法やセンスにもとづくもので、教育的に継承されてきたものではありません。「生」と「技術」と「美」がつながっていたのです。彼らはそこに感動したのです」p192
「日本においては学ぶことの基本はまず「写す」ことであって、学びを評価される場合も、オリジナルの要素を出せたかどうかではなく、お手本を上手に写していたか、そっくりであるかが評価されてきた。「まなび」は「まねび」にもとづいているのです」p202
「歌舞伎という名称は「傾く(かぶく)」という言葉から生まれました」p229
「バサラに前後の系譜があるとしたら、後醍醐天皇を助けた楠木正成の「悪党」の一群や南朝ロマンの残党で、もっと前なら木曽義仲や巴御前で、これよりあとの例なら織田信長の「うつけ者」や歌舞伎十八番の市川團十郎、あるいは浮世絵の主人公たちでしょう」p231
「今日の日本社会はコンプライアンスに惑わされ、監視カメラと賞味期限に縛られ、安心安全なところでしか仕事ができないようにしています。セクハラ、パワハラはもってのほかです。多くの現象や表現が衛生無害なものに向かっていて、このままでは和風に整った和霊はともかく、荒ぶるものまですっかり縮こまってしまっているのです」p234
「日本の理性は民主主義や平等主義によってつるつるになってしまっているのです。これはいけません。ガチンとしたものやゴツイものが出てこない」p234
「バサラやカブキの精神には「出る杭は打たれる」とは反対の気骨が流れてきました。出る杭になっても怖れないようにする、それがバサラやカブキの精神です」p236
「(情報文化の劣化)なぜ、そんなふうになったのか。それがネット社会による「いいね」文化の拡張のせいか、日本の反知性主義の蔓延のせいか、コンプライアンスと情報公開主義の定常化によるのかどうかは、にわかに判断しにくいけれど、私の実感ではこのところの日本の情報文化は「わかりやすさ」のほうに大きく流れていっていると思います。短時間でピンときたり、笑えたり、おぼえられるものが主流になってしまったのです。これは情報文化が細切れになっているということです」p295
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久しぶりに手にしたセイゴウ本は、新書とは思えない高密度。「ハイコンテキストで、一見、わかりにくいと見える文脈や表現にこそ真骨頂がある」日本文化を、自ら考案した10数種類の「ジャパン・フィルター」を手がかりに読み解こうという試み。
博覧強記、縦横無尽、硬軟自在…セイゴウ本を読むと、こんな言葉が頭に浮かび、それに気圧されるばかり。いや、それではいかん、丸ごと肯定してはいかん、といつも思うのだけれど、やはり今回も撃沈。腹にストンと落ちることばかりだから敵わない。
元来、この国は外来のものをそのまま受け入れたのではなく、巧みに編集をして取り込んできたが、明治の文明開化では編集を怠ったという指摘。また、「かぐや姫」は「歴史的なポケモン第一号」であるという指摘。本書で響いた指摘を挙げたらキリがないので、それは自分用のメモに回すとして、改めてセイゴウ本について気づいたことを記しておこう。
セイゴウ本に触れると、知らない日本語に必ず出会うことになる。例えば、本書では「和光同塵」。上記した「編集して取り込んできた」ことの証左としてこの四字熟語の存在を挙げている。また、普段使っている言葉の語源にも多く出会う。本書では「歌舞伎」「打ち合わせ」「結び」「侘び」などなど。こうした形で出会うと、やはりどうしても自分で辞書を引いて確認することになる。だから、セイゴウ本を読むのは時間がかかるし、覚悟も要る。
でも、こうした手間をかけながら読むことは、セイゴウ本には相応しいのではないかと。気圧されるばかりではなく、この博覧強記の超人に面と向かうにはこのくらいのことはしないと…などと不肖な一読者は思うのである。
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
第1章 柱を立てる~古代日本の共同体の原点「柱の文化」から話を始めよう。
第2章 和漢の境をまたぐ~「中国語のリミックス」で日本文化が花開いた。
第3章 イノリとミノリ~日本人にとって大切な「コメ信仰」をめぐる。
第4章 神と仏の習合~寛容なのか、無宗教なのか。「多神多仏」の不思議な国。
第5章 和する/荒ぶる~アマテラスとスサノオに始まる「和」の起源。
第6章 漂白と辺境~日本人はどうして「都落ち」に哀愁を感じるのか。
第7章 型・間・拍子~間と「五七」の拍子にひそむ謎。
第8章 小さきもの~一寸法師からポケモンまで。「日本的ミニマリズム」の秘密。
第9章 まねび/まなび~世阿弥が説く学びの本質。現在日本の教育に足りないこと。
第10章 或るおおもと~公家・武家・家元。ブランドとしての「家」について。
第11章 かぶいて候~いまの日本社会に足りない「バサラ」の心意気。
第12章 市と庭~「庭」「お金」「支払い」に込められた日本社会の意外性。
第13章 ナリフリかまう~「粋」と「いなせ」に見るコードとモードの文化。
第14講 ニュースとお笑い~「いいね」文化の摩滅。情報の編集力を再考する。
第15講 経世済民~日本を語るために、「経済」と「景気」のルーツをたどる。
第16講 面影を編集する~一途で多様な日本。「微妙で截然とした日本」へ。
<内容>
日本とは何か?この辺境にある国が、世界の他の地域とは少し違った生き方をしてきた、そしてそれ故に今の地位を築いてきたのはなぜか?「日本文化」を常に考えている著者の、ある意味集大成な本。章立てを見ればわかるように、「キーワード」が並ぶ。そこから意外な展開を見せつつ、ちゃんと着地する。溢れるような知識が適所にちりばめられ、読めば納得する論を展開する。
授業で、単純に文化史を語るのではなく、現代の日本人につながる視点を意識したいと思った。
Posted by ブクログ
松岡正剛(1944年~)氏は、編集工学研究所所長、ISIS編集学校校長。2000年から続く書評サイト「千夜千冊」(最新で1736夜)は、本好きで知らぬ人はいない有名サイトである。「千夜千冊」は、2006年に求龍堂から全8巻で一括して出版されたほか、2018年より角川ソフィア文庫から「千夜千冊エディション」として、毎月テーマごとに出版されている。
本書は、松岡氏がこれまで最大のテーマとしてきた「日本文化」について、語り下ろしたものである。
松岡氏は、「日本文化はハイコンテキストで、一見、わかりにくいと見える文脈や表現にこそ真骨頂がある」としながら、その手掛かりを、“ジャパン・フィルター”と名付け、本書の中では、客神フィルター、米フィルター、神仏習合フィルター、仮名フィルター、家フィルター、かぶきフィルター、数奇フィルター、面影フィルター、まねびフィルター、経世済民フィルターなどを通して、日本文化を分析している。
そして、「日本という国をアイデンティカルに捉えることはできない、しすぎるとまちがうと見てきました。」といい、「日本文化の正体は必ずや「変化するもの」にあります。神や仏にあるわけでも、和歌や国学にあるわけでもありません。神や仏が、和歌や国学が、常磐津や歌舞伎が、日本画や昭和歌謡が、セーラー服やアニメが「変化するところ」に、日本文化の正体があらわれるものです。それはたいてい「おもかげ」や「うつろい」を通してやってくる。これがジャパン・スタイルです。」、「「おもかげ」は・・・何かを思い浮かべてみたときに脳裡に映ずるイメージのようなもの・・・「うつろい」という言葉は・・・四季のように移ろい、花の色や朝晩の光や人の心のように変化していく「常ならぬ」さま」、「日本文化の精髄は「おもかげ」を通すっことによって一途に極められ、「うつろい」を意識することによって多様に表象されてきた・・・日本は一途な「おもかげ」を追い求め、多様な「うつろい」を通過してきたのではないか」と結論付けている。
更に、日本の今後については、「日本文化の正体はたいそう微妙で、たいそう複雑なのです。グローバル資本主義やコンプライアンスの蔓延が、これらの「一途で多様な日本」や「微妙で截然とした日本」をカラッケツにしてしまわないことを祈るばかりです。・・・「かわいい」や「やばい」だけでなく、「粋」や「通」や「お侠(きゃん)」のような独特の美意識も創生するべきです。」と警鐘を鳴らしている。
古今東西の現象や、各分野の泰斗とその思想・著書を縦横無尽に分析、引用している点において、現代日本の知の巨人のひとりとも言われる松岡氏でなければ著し得なかった作品であり、また、本書で興味を持った部分をさらに深く掘り下げるためのきっかけをくれる一冊とも思う。
(2020年3月了)
Posted by ブクログ
今の日本のアレコレの起源から現代にいたるまでの流れを読み解くことで、日本文化の真髄に迫ろうと試みる本。
これが始まりだったのか、と目から鱗だったり納得するものが多い。
しかし後半になればなるほど、「現代にはその良さは失われている」と懐古主義的な結論になることが多く、いち若者としては首を傾げるばかりだった。また、結論現代にどう受け継がれているのかはわからないことばかりだった。(冒頭に、日本文化を明確にするのは難しいと述べられてはいるが…)
Posted by ブクログ
たたら
もののけ姫など
最初の黒船=中国
「稲・鉄・漢字」
林屋辰三郎『日本の古代文化』
「日本の古代働きながら柱の文化であり、中世は間の文化であった」
神さま→「御柱」
伊勢神宮や出雲大社その他の神社では、真柱そのものが神々です。
…山車だしや山鉾やまぼこでも、その中心を柱が担う
…「どんど焼き」や「ぼんてんさま」も高い柱になっている。
…日本家屋では(特に農家では)、必ず大黒柱が中心にありました。
[中世以降に出現する床の間にも床柱]
立てる文化
村立て国立て 身を立て志を立て
=「結界を立てる」
日本の神は「客神」
日本神話の冒頭は「結び」が重視
「地鎮祭」
産土うぶすな 産屋
神主による魂振り
マザーカントリー
漢字を大和言葉に当てはめる革命
賀茂真淵・本居宣長による「中国離れ」
この後の文明開花
アジアの稲ジャポニカかインディカ
祭りの文法「神迎え・神送り」
ハレ=晴れ ケ=褻
柳田国男 ハレ=殊 ケ=常
宗教社会学 ハレ=聖 ケ=俗
餅と白鳥伝説
数奇 好き 梳るくしけずる
東下り 路線バスの旅のルーツ
かぐや姫 一寸法師
ポケモン たまごっち
柳田国男『桃太郎の誕生』
小さ子という伝承形態
石田英一郎『桃太郎の母』
スクナヒコナ
lesser art minimalism
芥川龍之介の卒論はモリス
レフ・ヴィゴツキー
バサラっぽい 歌舞伎っぽい
P.242〜
小松和彦『経済の誕生』『神々の精神史』
Posted by ブクログ
著者の提唱する「編集工学」の観点から、16のキーワードを通して日本文化の特質にせまろうとする本です。
「はじめに」で著者は、たらこスパゲッティをはじめて食べて、「よしよし、これで日本はなんとかなる」と確信したことを回想しています。おなじく著者は、コム・デ・ギャルソン、ミヤケイッセイ、ヨウジヤマモト、井上陽水、忌野清志郎、桑田佳祐、大友克洋らの仕事にもたのもしさをおぼえ、やはり「よしよし、これで日本はなんとかなる」と確信したといいます。本書は、「日本文化の核心」という大上段に構えたタイトルをあたえられていますが、著者は「核心」が実体的に存在しているかのような語りかたを回避し、むしろさまざまなものを「編集」するスタイルに、日本文化の特質を見て取ろうとしていることが、これらの例に明瞭に現われ出ているように感じます。
さまざまな時代を横断的に眺めわたし、共通するスタイルを発見していく著者らしいスタイルで書かれた日本文化論といえるように思います。こうした著者の戦略は、文化的ナショナリズムの陥穽を避けつつ、日本文化をテーマにして語る一つの実例を示しているようにも感じられて、興味深く読みました。ただ、伝統的な文化と現代文化のへだたりをあまりにも軽々と飛び越えていく著者のアクロバティックな議論に、正直なところ着いていけないと感じてしまったところもあります。
Posted by ブクログ
初めて松岡正剛を読んだ。
ちょっと難解でしたが、日本について
日本人について、日本文化について
日本語についてのそれぞれの考え方について
いろいろ面白く読ませていただきました。
Posted by ブクログ
博覧強記は相変わらず。脈絡がなく思いつきのように話が飛ぶあたりが、専門家とはひと味もふた味も違う。アイデアはいっぱい詰まってるけど、そこから先は自分次第ですかね。個人的には今は日本に回帰する時期ではないということが分かった。将来時が来ればまた本書に戻ってくるかもしれません。