あらすじ
女たちが夢見た「革命」とは?
連合赤軍事件をめぐるもう一つの真実に光をあてた傑作長篇。
山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。
アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。
しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。
解説・大谷恭子
※この電子書籍は2017年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
思想や情熱を持って何かを変えようとしていたはずなのに、変わらずに命が失われてしまい、それに加担したことを償いきれないからこそ覆い被せて隠して生きていくしかない。その孤独を生きる主人公の奥底に希望があった。そしてその希望は生まれてきた喜びをいう。それが救いになって、終わったことに満たされたから、今まで読んできた山岳ベースに関しての物語のなかで一番好きかもしれない
Posted by ブクログ
面白いという表現は違うのかもしれないが、すごく引き込まれてあっという間に読み終わった。
私はその時代のことも、この事件のことも名前しか知らず、初めて知ることも多かった。
あの時代変革を掲げて自分たちの子どもさえ新な時代の戦士として育てたいという理由もあって山岳ベースにはいった女性たち。
その掲げたことさえもどこにいってしまったのか総括の対象になった妊婦の女性の亡くなり方が切なく苦しかった。
その山岳ベースに入ったうちの1人の女性のその後に焦点をあてたこの物語。
服役した後待っていたのは両親の死、親戚の絶縁、孤独。唯一妹と姪っ子と関係はあるが、そことも溝はある。終始彼女と関わる人との場面は言い争いが絶えない。主人公自身、自分の主張がすごく強いし正しいと思ってる節があるような。元闘争の時の夫婦となっていた男性が前に現れるがそこの場面もなかなか切ない。
彼女が服役後もずっと人の目を気にして、世の中に許しを求めているのは、やはりそれだけ惨殺で残酷で残忍な事件だったから。
ライターという古市。彼だけは彼女に対して穏やかに話す。なぜなのだろうと思いながら最後、啓子は出産して里子にだして、その子が古市だということがわかる。これは希望なのか?それとも新な風穴なのか、それは分からないが。生まれたことを後悔してないという場面はぐっときた。
Posted by ブクログ
山岳ベース事件を元に、その後ひっそりと暮らす主人公のはなし
事件のせいで疎遠になった妹とのやりとり、
とてもリアルで、私は主人公の身勝手さを
感じた。妹もイヤな言い方をするんだけれど、
その気持ちの方が普通というか。
事件の関係者と40年ぶりに連絡を取りはじめる
気持ちの動き、普段の生活の中にある疑心暗鬼、
事件を思い出したく無い気持ちと懐かしむ気持ち、
主人公の感情が伝わる。
実際に起きた事件が元になっているけれど
ラストは小説らしい驚きでよかった
Posted by ブクログ
1971-1972年、連合赤軍が起こしたリンチ殺人(山岳ベース事件)を題材にした物語。末端の女性兵士らに焦点を当て、事件のその後を描く。
12名の死者を出した惨い事件。閉鎖空間でエスカレートする様、周囲の人々が受ける影響、それらが手に取るように分かる。いくら年月が経とうとも消えることはないのだと思った。
事件を背負って生きる一人の物語として興味深く読んだ。啓子が何故ずっと煮え切らない態度だったのか、何故家族にすら分からないと思われているのか、その理由が最後に分かってハッとした。
Posted by ブクログ
あれから40年、当事者の心のうちに分け入る試み。あれはどういうことだったかという問いに、通り一遍でなく向き合おうとした作品だと思う。
正直、この本より先に当事者の手記などいろいろ読むべきだったと思う。不幸にも凄惨な事件になってしまったものの、当時の自分たちは大筋で間違っていなかったという主人公の強い思いが理解できなかった。
そこは読者はわかってる前提で描かれているように思う。多少予備知識のある自分でこれだから、知らない人は全くわけのわからない話では無かろうか?
理解されない孤独感でいっぱいの主人公、心労で命を削られた親や人生を狂わされたきょうだい、40年あまりたってなお理解も許しもできない家族や元の仲間たち。このどうしようもなさはリアルなんだろうと思う。