あらすじ
美しく、儚く、切なく、哀しく、馬鹿馬鹿しく、愛おしい。
鬼才と奇才。文学界の異才コンビが詠む、センチメンタル過剰で自意識異常な自由律俳句集。
『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』に続くシリーズ第三弾。四〇四句の自由律俳句と五〇篇の散文を収録。
琴線に触れまくる言葉たち。
しみじみってもんじゃない。
これは自由派の記録の最終章である。
誰もいない時計店で動いている針
写真にうつらない月を仰ぐ
もう引き返せないということもない
ブランコに濡らされた手を拭く
用途の無い棚を眺めている
そうだふりかけがある
*自由律俳句とは、五七五の形式を破り自由な韻律で詠む俳句のこと。
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Posted by ブクログ
又吉が好きで、最初又吉の部分だけ読んで、読み終えてやっぱ又吉好きだなって思った。
つぎにせきしろさんの部分だけ読んだ。せきしろさんて初めて知ったのですが、すごく周りの目を気にする人なんだなって。自分もそういうタイプではあるけど、突き抜けたひとだなって。あと、知らない街のビジネスホテルが好きとか、そういうの真似したいなって思った。
おもしろかったです。
Posted by ブクログ
ますます又吉が好きになる。
道を歩いていても頭ん中でいろんなこと考えているんだ。
もしここでこんなことが起きたらとか、あんなことあったよなとか。
私なんてボーっ生きてるな、チコちゃんに叱られちゃうね。
せきしろ氏も又吉直樹に負けないくらいナイーブというか、繊細な人なんだなとわかる。
これ読むと自由律俳句、作ってみたくなる。
あとモノクロの写真もいい。
なんてことない街の、あるいは公園の、自転車置場の写真なんだけど光と陰が(陰影)が胸がきゅんとなる。
Posted by ブクログ
あるある! と共感したり笑ったりするだけでなく、なにかひとりじゃないような、あたたかくもないけど寒くも無いような、何かが残る好きなシリーズ。
せきしろさんの句は基本的に自意識が強く、少し冷めていて、なんだか寂しい。物悲しい。観点が絶妙で、共感するのに既視感でうんざりしたりはしないラインをうまくついているし、他の人にありそうで無い行動原理、しかも揺るがないやつを持っているように感じる。
ただ、同じ言い回しが多くて、言葉選びのフィルターをもう1、2枚通して欲しいなという感じはある。文章でも過度な説明や同じ話の繰り返しが多くて、割と飛ばし読みしてしまった。
友人のビデオテープの話、教員の父に大人になってから褒められた話、先生のプライベートを知っている話、変なおじさんの話、後輩の話、これらは味わい深かった。
又吉さんの句は、物悲しくもどこか笑える気配を帯びている。というか、お笑いを愛する人として、物事を笑いに昇華する姿勢が見える。それと基本的にやさしい。
句もいいが、文章のほうが魅力がより発揮されている気がする。時々入るツッコミがとても面白い。事件とは一切関係ないやつがイキり出す妄想の話、「又吉さんの髪型はラーメンみたいだった」の中国ネットニュースの話は声を出して笑った。エッセイ集をもっと出して欲しいな。
又吉さんが綾部さんとコンビを組んでいるのはいつ見ても不思議で面白いが、お互いに無いものを見出し認め合い、深いような浅いような関係で、とても好いなと思っている。「草野球なのにドラフトを真剣に待つような意識は綾部の美点だと思う」という文には特に顕著に表れていた。
〈好きだった句をいくつか選抜〉
せきしろ
- 夏の午前の本屋にいたい
- ベランダから神輿を見下ろす寝起き
- ドッキリでしたと来ない
- 子供が追いかけるから鳩がこっちに来る
- そうだふりかけがある
- 次に泣くのはいつだ
又吉
- この海で自分だけ靴下をはいている
- 美術館を出た後の空が一番青かった
- 親の傘の重たさ
- ゴールした人を旗まで連れていく係
- 携帯に保存した詩だけが光る部屋
- もはや犬ではない