【感想・ネタバレ】2050年 世界人口大減少のレビュー

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Posted by ブクログ 2022年02月13日

日本やその他先進国、それに中国、アジア。人口減少はこれらの国々で起きていること。でもなぜか将来的には人口増加をなんとかしなくちゃならない。なんだか矛盾した考えを持っていた。

しかし実はアフリカでもそうなるだろうということが実データや各国での聞き取り調査でリアルに実感できた。

キーワードは女性だっ...続きを読むたのだ。女性が教育を受け、自分で自分の運命を決められる権利を持つ社会では同じことが起きる。これは腑に落ちた。

とすると、フランスなどは人口減に踏みとどまっているように私には見えていたが(大多数の人はそう思っているだろう)、それもあくまで延命措置に過ぎないように思える。

移民を増やすぐらいしか策がない。しかしそれも移民がその国に馴染んでくると、女性が権利を持ち、教育を受けていくと早晩その国の女性と同じように子供を産むことを避けるようになるのだから移民政策も焼石に水、ただの延命措置でしかない。
それにそもそもどの国も人口減少し始めると他の国に移民する必要がなくなる。かくして移民政策も取ることができなくなる。

女性を虐げ教育を受けさせず権利も与えない社会が世界から消え去った時、全世界で同じ状態になってしまうのだろう。

とすると、先日中国で人口子宮システムを開発したとニュースで出ていたが、人類としてはいよいよ真面目に取り組むべき事柄だと実感する。もう人類は人口子宮で種を残すしか道はなさそうだ。SFではありふれた世界だが、その世界でなければならない必然性、理由ができてしまった。ロボットに人間を管理される世の中というテーマではなく人類が種を長らえさせるために必要な技術だったのだ。

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Posted by ブクログ 2021年12月29日

原本のempty planetも読みました。国連の予測に反して世界の人口が2050年から不可逆的に減り始めることの要因、つまり統計資料と著者らが世界をめぐって再発見した「都市化と女性の権利や教育水準の向上」が世界の人口を下げる要因になっているという主張には大変説得力がある論拠となっています。

ただ...続きを読むし、本書の問題点として、いわゆる発展途上国の人口が増えすぎて、先進国の人口が減り結局として経済や環境問題につながっているという論理を用いている感が否めません。先進国がこれまで、そして現在もさんざん地球の資源を消費し地球を破壊し続けた結果として、気候変動や生物多様性の喪失などの問題が発生しているわけで、途上国の1人当たりのエネルギー消費量や温室効果ガス排出量などは先進国1人当たりと比べてずっと少ないです。また経済に関しても今世界中で起きている、グローバリゼーションや資本主義を遠ざけ地域を守りつつ、大量消費をしなくても潤沢な社会をつくることを目指す社会運動の萌芽を見逃しているように感じます。
それはこれまでの今の経済規模を保ちたいのなら移民を積極的に受け入れよという本書全体のメッセージにも言えます。

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Posted by ブクログ 2021年09月07日

女性の教育(性教育含む)、都市化、脱宗教化が進むと出生率が下がり、人口置換水準2.1かそれ以下になっていくことを様々な統計や世界中でのヒアリングから論じた本。
・韓国、ケニア、インド、ブラジルなどの中興国〜途上国でも押し並べて出生率が下がっている。
・移民を吸い寄せるアメリカでも、移民二世の出生率は...続きを読む一世より低く、黒人やヒスパニックでと白人の出生率も一般に思われているほどは離れていない。
・田舎では子供は労働の担い手だが、都市では労働力にならず、土地も高く親の求める教育水準も高いため少子化が進む。
・カナダは歴史的に辺境にあり人口が足りないため東欧などから移民を誘致していたことから、元々国のアイデンティティが希薄。加えて、教育レベルが高くカナダですぐに職にありつけるような優良な人材を多く受け入れてきたため、融和的。
・都市化と人口減少は環境負荷を減らす方向に向かう。(ニューヨーク州の一人当たり二酸化炭素排出量は全米で最も低い)

・世界中の女性へのヒアリングが自分の実感と合致する点が多く、納得感のある本だった。
・ムスリムの国ではどうなのだろうか?トルコなどは出生率が下がっていそうだけれど、原理主義的な国は女性への教育を否定しているからまだまだかかるかも。

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Posted by ブクログ 2020年07月17日

「人口は爆発しない」。

日本における人口減少が叫ばれて久しいが、地球全体でもその傾向があることがわかった。地域によって、緩やかであったり、顕著であったり、と、そのスピードは違うが、人口減少傾向であるのは、間違いない。

死亡率がゆっくりと低下し、出生率は人口置換率を下回る。
都市化が招く人口減少。...続きを読む

先進国はもちろん、発展途上国でさえ、出生率の低下がしている。

そして、世界各地に点在する少数民族でさえ。

東欧諸国の人口現状、


ブラジルにおける人口抑制。
医師が進める帝王切開、さらには避妊手術。
背景には、医師による診療報酬がある。

人口減少国家を支える移民。移民という労働人口の奪い合い。さらには、移民そのものの減少。
移民は、母国が落ち着けば、母国に戻る。



スウェーデンにような都市化が進むと人口減少するパターン、

高齢化した欧州大陸でこれのおど多くの国が経済停滞から抜け出せない。…。一国経済に与える子供の影響ーーむしろ子供不在の影響ーーは甚大である。

アフリカの人口爆発は止まる。

中国の人口減少も今世紀中頃には始まり、インドもそのうちその傾向が現れる。
人口減少に陥っている国家ほど、移民の受け入れに否定的な意見が多くなる。時刻のアイデンティティが失われる恐れから。


移民が仕事を奪うという誤解。アメリカのスタートアップ企業の過半数は、移民によって創業された。
また、移民によって、自国民の生活が成り立っている。

11章 少数民族が滅びる日
オーストラリアのアボリジナルの若者は、都市に出て教育を受ける。 ネイティブ・アメリカンは、アメリカのあらゆる人種の中で出生率が最も低い。 世界から言語や文化は次々と消滅し、多様性が失われつつある。

12章 カナダ、繁栄する“モザイク社会”の秘訣
移民国家のカナダは一つの手本となるか?

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Posted by ブクログ 2020年06月30日

この書の優れた点は、現地で生の声を聞いて肌で感じた社会傾向を語っていることである。多くの先進国民が、また日本人が漫然と持っているかつての発展途上国イメージは、現地に行くと全く違う。先進国だ、G7だ、などと胸張っていると、今世紀中に色々な意味で脚を掬われる。そう感じさせる一冊。

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Posted by ブクログ 2020年06月07日

原題は「Empty Planet」。人類史上初めて人口が減少に転ずると説いている。国連は21世紀の最後までに世界の人口がこのまま増え続け110億人に達すると予測しているが、本書で紹介されているようなデータを一つ一つ積み上げていくと、はなはだ懐疑的に思われる。
「ファクトフルネス」の著者で統計学者のハ...続きを読むンス・ロスリング氏がYouTubeの動画で言っていたのは、幼児の生存率を先進国並みの100%に近づけることで、女性一人あたりの出生率が下がり、世界の人口は爆発せずに持続可能な世界を保てるとのこと。本書では、女性の教育や社会的、経済的地位の向上が出生率の低下に大きく影響を与えていると強調している。
世界でも有数の低い出生率に悩む日本にも言及しており、今後35年間で人口が25%減り、1億2700万人から9500万人になると予想される。他の国々の例から人口や経済規模を維持するには海外からの移民を受け入れるしか選択肢がないことが分かるが、今の日本社会を考えるとカナダのように全国津々浦々でコミュニティーとして移民たちを受け入れるのは実現が難しいと思われる。
意外だったのは、伝統的にカソリック教やイスラム教信者の多い国々でも、近年出生率が大きく減少しているということ。ブラジル1.8、メキシコ2.3、サウジアラビアは2.1と、既に人口維持に必要な人口置換率2.1に近い。サブサハラや一部の中東国はまだ出生率が高いが、ほぼすべての国々で出生率が減少傾向で上がっている国は1つもない。

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Posted by ブクログ 2023年02月12日

世界で出生率の低下が起きていて、2050〜2060年頃から世界人口は減り始める。
要因は女性への教育普及により子供を産む選択の権利が向上したこと。また、都市化が進み、子供を持つことがコストになることで、多く産みたいと思う女性が減ったこと。
この現象は止められることが無いという。
本書では人口減少の解...続きを読む決策が移民を受け入れること以外に提示されていなかった為、残念だった。
出生率をあげるには、都市化ではなく地方に移住させ、子供を育てるコストを下げるのがいいのか?

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Posted by ブクログ 2022年06月04日

【感想】
国連の「世界人口予測2019」によれば、世界人口は2030年に85億人、2050年には97億人、2100年には109億人に達するとされている。しかし、筆者のダリル・ブリッカーはこの予測に懐疑的だ。筆者は2050年に90億人で人口がピークに達し、その後は減少が続き二度と上昇しなくなると予想し...続きを読むている。

この「人口はどんどん減っていく」という前提条件のもと話が展開していくのだが、筆者の主張の数々はあまりに暗く悲劇的だ。人口減少は避けられない運命であり、しかもそれを覆す手段は「ない」。高福祉国が出産奨励施策を実行しても、中東地域からの移民を受け入れても、はたまた若い国であるインドやアフリカ諸国が頑張っても「人類の縮小は止められない」と述べている。大変ショッキングな内容だ。

ひとつ、先進国による重点的な子育て支援をピックアップしてみよう。
現在先進国の中で出生率がかなり上位なのがスウェーデンだ。
スウェーデンは1990年代の不況が終わると、出生率向上のために新しい施策を導入した。育児休暇は480日間に延長され、ほぼ全期間で収入の80%が補償される。夫婦はそれぞれが少なくとも2カ月間の育児休暇を取るよう求められ(取得努力ではなく必須だ)、それが消化できないと権利の一部を失うことになる。ベースとなる手厚い家族手当に加え、子供がひとり増えるごとに手当が加算される。子供の数が多いほど、ひとり当たりの手当の額も増額される仕組みだ。ストックホルムでは、ベビーカーを押している親は無料で公共交通機関を利用できる。ほとんどの職場では、従業員の子供が病気になって親が家に残る必要がある場合、有給休暇が与えられる。

そうしたたゆまぬ努力の結果、スウェーデンの出生率は見事に「1.9」である。悲しいことにこれだけやっても人口を長期間維持するには足りない水準なのだ。お隣のフィンランド――こちらも世界最高レベルの子育て政策を採用している――はなんと1.35(2019年)。日本よりも低いのだ。

ここまで頑張っても自国民が子どもを産まないのであれば、もはや移民に頼るしかない。事実、スウェーデンは人口を底支えするために次第に移民に頼るようになってきており、生粋のスウェーデン人の間に新たな移民流入に対する反発も広がりつつある。ただし、移民は人口こそ増やすが出生率の改善にはつながらない。すぐに移住先の出生率に合わせて子供を産まなくなるからだ。そうすると、移民を受け入れてもその場しのぎにしかならないばかりか、将来的には移民すら高齢者となって経済を圧迫していく。

現在人口増加地域であるインド、アフリカ諸国においても減少トレンドは変わらない。
多くの発展途上国における家族計画とは、経済的必要性であり、宗教と家父長制という伝統に則った儀式だった。今でも家と家との結びつきを重視した婚姻制度は強く残っているが、それも徐々に変革を迎えている。経済状況の好転と女性の権利の拡大によって、「子供は多くて二人」と考える女性が増えているのだ。伝統的な男性優位社会においては子供を産むことによる女性の負担は尋常じゃないため、結婚相手を自力で選べるようになった女性の間では、理想とする「家族サイズ」の縮小が進んでいる。もはや世界の価値観は少子化に傾いており、これを覆すことはできないというわけだ。
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「世界人口は減少し続ける」「どの国も出生率は2.1を割り込むようになる」「移民は人口を増やすが、出生率の向上にはつながらない」など、筆者の主張は単純明快だが、それを補強するためのエピソードが抜群に面白い。各国の女性(とくに社会的に高い位置にいる人)へのインタビューにより割り出した家族意識の変遷や、ケニア人を例に取った、先進国と発展途上国の個人のアイデンティティの違い(先進国はアイデンティティを国に根ざし、発展途上国は部族と親族と家族に根ざす)、また経済発展による家族形態の変化が出生率をどう下げていくかなど、読んでいて新たな発見が生まれるものばかりだった。内容はシンプルでわかりやすいが読み応えは抜群。とてもおすすめの一冊だ。
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【まとめ】
1 世界人口が減少に転じるとき
世界の人口は2050年に90億人で頂点に達し、減り始める。そして一度減少に転じれば、二度と増加することなくずっと減り続ける。

出生率が下がる最も大きな要因は都市化だ。
中世ヨーロッパの社会では人口の90%が農業で暮らしていた。だが産業革命とともに登場した工場により、労働者は都市に集まってきた。農場では子供を作るのが「投資」になる。だが都市では子供は「負債」になる。2008年に行われたガーナの都市化と出生率に関する研究では、次のように結論している。「都市生活では子育ての費用がかさむ見込みが高いため、都市化は出生率を下げる。都市では住宅費が余計にかかるし、おそらく家庭内生産の面でも子供は都市ではあまり役に立たない」。

次に関係している要因は女性の教育水準の向上である。社会が都市化して女性の力が増すと、親族の結びつき(子供を作れとプレッシャーをかけてくる存在)、組織的宗教の影響力(避妊と堕胎を悪とみなす存在)、そして男性の支配力が、出生率とともに低下する。


2 老いゆくヨーロッパ
EUの現在の出生率の平均は1.6である。
1930年代の大恐慌の時代になると、欧州の多くの国では、かろうじて人口を維持できる程度の赤ちゃんしか生まれなくなった。その危機が去ったあとには、大恐慌と第二次世界大戦により出産が抑圧された反動で、先進国にベビーブームが起きる。
スカンジナビア諸国の出生率は1世紀以上も着実な低下を続けたのち、1930年代中頃に底打ちして増加に転じた。1935年、イングランドおよびウェールズの出生率は1.7、ベルギーは1.9で底を打ち、その後は上昇傾向に転じている。戦後に西ドイツとなる地域の出生率は、1933年には1.6と人口置換水準を大きく下回っていた。ところがその後ドイツ人はふたたび赤ちゃんを産み始め、フランスでも同様に出生率は上昇に転じた。フランスとベルギーの出生率は第二次世界大戦の最中にも増加していたようだ。

しかし、1960年代まで続いたヨーロッパのベビーブームは1970年代になるとふたたび人口置換水準まで落ち、その後もさらに下がり続けた。現在、フィンランドの出生率は1.8、スロベニアは1.6。欧州で出生率が最高レベルのフランスは2.0、デンマークは1.7だ。

このトレンドはなんら新しいものではない。前述したように、それまで出生率は1世紀半にわたり下落してきた。都市化、公衆衛生の改善、豊かさの広がり、そしてなによりも女性の自立性が高まったことの結果として、世代を経るごとに女性はますます子供を産まなくなっていた。ピルの登場や産児制限が利用しやすくなったこと、適切な性教育なども一定の役割を果たした。要するに、ベビーブームは一時的な例外現象だったのだ。

人口減少に対する欧州の解決策は「移民」だった。だが、移民はメリットに匹敵するだけの問題も引き起こす。孤立、拒絶、民族間の衝突、高まる緊張感などだ。さらに、移民を「輸入」すれば確かに下がりつつある出生率の底上げにはなるが、その移民は(イスラム系移民も含め)すぐに移住先の出生率に合わせて子供を産まなくなる。わずか一世代、移民本人の子供の世代になれば、もう20世紀の都市生活に馴染み、「子供というのは少数を大事に育てるものだ」と考えるようになる。

子供を持とうと思わせるための多彩な支援政策は確かに一定の効果を持つ。目盛りを動かすことができるのだ。ただし目盛りを大きく動かすことはできない。しかもそうした支援政策には巨額の費用がかかり、不況時にも同じ政策を続けるのは難しい。
工業化と都市化、そして経済成長によって初めて、産む子供を少なくしようという選択を女性ができる条件が整えられる。しかし、一度そうなったあとでは、不況になると出生率が低下し、景気が回復して生活が豊かになっても出生率を下げるのだ。


3 人口減少トップランナー、日本
日本の出生率は1.4であり、長期に渡り低迷が続いている。このトレンドはほか先進国と比べて珍しいものではないが、日本の特徴は強力な移民制限政策を採っていることにある。
日本は血統主義、すなわち国籍が血筋に応じて与えられる。より正確に言えば、生まれた子の親の片方がすでに日本国籍を持っていることが条件になる。2015年に日本が国籍を与えた外国人の数は9469人であり、2010年より3500人近く減っている計算だ。

アジアの女性が結婚と出産を先延ばしにする理由のひとつに、男性優位の文化がある。
ミレニアル世代の男たちは、自分が親の世代より進歩的で家事や子育ても喜んで分担していると主張するが、統計データからは別の姿が見えてくる。日本人男性が家事に割く時間は1996年(1日27分)から2011年(90分)で確かに3倍になっている。だが、日本人女性の平均である3時間と比べればまだはるかに少ないし、大半の先進国の男性と比べてもやはり少ない。OECDの調査によれば、日本人男性はOECD諸国のなかで子供の世話をする時間が一番少なく、家事をする時間は韓国人男性の次に少ない。
この理由はアジア人男性が怠惰だからではない。その正反対である。日本人男性は一週間の労働時間が80時間になるケースも珍しくないのだ。あまりに疲れ切って性交渉さえ持たなくなることが日本の少子化危機の一因かもしれない。ある調査では、18歳から4歳までの日本人男性の4%が、過去1ヵ月間にセックスをしていないと回答しており、2年前の調査より10%ほど上昇している。

人口減少を埋め合わせる別の方法は移民だが、日本やアジア諸国は移民にまったく対応していない。カナダは国民人口1000人当り4人の難民を受け入れているが、中国は0.22人、日本は0.02人、韓国は0.03人だ。こうした移民受け入れ反対の国や地域の人々は、自分たちが人種的に同一だと考え、その同一性には価値があり、守るべきものだと思っている。

日本経済の停滞基調がそろそろ30年にも及ぼうという理由の一端は、人口の高齢化にある。人口の減少はイノベーションを起こせる若者の減少を生み、イノベーションの減少は銀行の融資の減少を生む。そして人々は年齢とともに消費を減らしていく。
日本人全体が今、ひとつの選択を迫られている。日本社会に移民を受け入れるか、それとも小国として生きるすべを学ぶか、そのどちらかしかない。おそらく日本人は後者を選ぶのではないだろうか。感情を表さずに優雅な冷静さを保ちながら、消えゆく村落や国富の減少を淡々と受け入れるのだ。


4 移民は減少している
貧しい国から豊かな国への移住は今でもある。だが、最貧国でも1世代前と比べてずっと豊かになっている。1990年には極貧状態(1日2米ドル未満)で暮らす人が18億人以上いたのに、2015年には8億人未満まで減った。今世紀中に極貧状態を皆無にできる可能性は、たんに「ある」のではなく「高い」。そして、貧困状態にない人はあまり移動しない。要するに、近年の中東からの難民は、我々の祖先とまったく変わらぬ危険と困難に耐えているとはいえ、より大きな真実を見えにくくしている。実は、難民をめぐる状況は見かけよりも落ち着いているのだ。

2015年、世界の難民の半数以上(54%)はわずか3カ国から発生した。シリア(490万人)、アフガニスタン(270万人)、ソマリア(110万人)だ。また、一部のヨーロッパ人は欧州大陸が難民であふれていると主張するが、世界の難民の90%は先進国でなく発展途上国の難民キャンプで暮らしている。中東と北アフリカが40%、サハラ以南のアフリカが30%だ。難民受け入れ国のトップ3はトルコ(250万人)、パキスタン(160万人)、レバノン(110万人)である。そして、西側諸国の支援を受けたイラク軍やクルド軍が次々とISISを撃退し、シリア内戦の暴力も沈静化しつつあるため、難民たちは少しずつ帰国を始めている。2017年前半だけで30万人が帰国した。
難民を除く国際移民を見ると、全体の4分の3は「押し出される」のではなく「引き寄せられる」動きをしている。中所得の国からより豊かな国へと引き寄せられているのだ。

全体として、局地紛争を除くと、ここ数十年の移民をめぐる状況はかなり落ち着いていたと言える。もはや移民危機など存在していない。

そもそも、移民は人口減少や高齢化の根本的解決にはならない。移民はそれほど若くなく、中央年齢は39歳だ。その年齢だと多くの人は、もう新たに子供をつくらないだろう。したがって、移民人口が出生率を上げてくれる可能性は実はとても低い。また、別の理由として、移民は移住先の国の出生パターンにすぐ適応するという点もある。
もはや、移民が国境を超えることはほとんどなくなるかもしれない。どこでも出生率は下がっており、最貧国ですら下がっている。しかも、かつては極めて貧しかった国でも賃金は上昇傾向にあり、移民になる動機は減っている。

それでも、人口減少が目前に迫った国にとって、減少を食い止める当面の最適な方法は移民の受け入れを増やすことである。移民がその国を必要とするのと同じだけ、その国も移民を必要としているのだから。


5 カナダの成功
カナダの総人口は3520万人。5年間で人口は5%増えており、現状のままでも2060年までに5000万人まで増える計算だ。

この増加の鍵を握っているのが移民だ。年間30万人の移民を受け入れており、さらにその数を年間45万人に増やそうという動きもある。それでいてカナダに来る移民はカナダで生まれ育ったカナダ人より良い教育を受けており、治安の悪化もない。トロントは住民の半数が外国生まれだが、殺人事件の発生数は世界で8番目に少ない。

その秘密は移民の選定条件にある。カナダでは、カナダ経済に貢献できる人を条件に移住を許している。欧州の国のように、人道的な理由をメインとしていない。難民受け入れを自国の利益のために利用する、と完全に割り切っているのがカナダの特徴であり強みだ。

1960年代、カナダで移民・永住希望者へのポイント制度が導入される。これは教育水準や仕事のスキル、英語もしくはフランス語の能力、カナダとの関係の深さなどに応じて加点し、可否を判断する制度だ。これにより、世界中どこの誰でも移民を申請できるようになった。ラテンアメリカから何百万もの移民(多くは違法)を吸収するアメリカや、近隣の北アフリカや中東から移民を引き込むヨーロッパとは違い、カナダは全世界からの移民を歓迎するようになった。ただし、カナダに移住後すばやく仕事が見つけられるだけの職歴と学歴があることが条件として明記されている。移民とはカナダにとってなによりもまず経済政策なのだ。労働力不足をおぎない、人口増加を支えることがその狙いだ。
1990年代になり、低出生率が一時的現象ではなく完全に社会に定着したとわかると、カナダ政府は水門を開け放ち、年間25万人の移民を受け入れることにした。

移民文化の代表例であるアメリカやオーストラリアでさえ、自国民のアイデンティティをしっかりひとつの概念として持っている。ところがカナダは多文化の寄せ集めになった。それぞれのコミュニティは独自の文化的な繋がりを保ち、出身地である市町村や州、国といった共通の単位でまとまっている。

移民を積極的に受け入れている国であっても明確な「国民的気質」と呼べるものがある。移民はその気質を自分にも取り入れるか、さもなくばその国を去るしかない。
ところが、カナダにはそこまで強い国民的気質というものがない。カナダ人はお互いが相手に合わせようとする。この「調整の文化」がカナダという国を、形もなければ目的もなく、結局は意味すら持たない場所にしている。
しかし、まさにこの国をひとつにまとめる機能の欠如こそ、カナダが脱国家的国家(ポストナショナル・ステート)として成功できた秘訣なのである。カナダには世界中のあらゆる地域、あらゆる階層に属する人がやって来て、主に大都市に住み、仕事を始め、友好的な人々に囲まれ新生活を送れる。こうしてカナダは地球上で最も多様性に富みながら平和で和気あいあいとした国になったのだ。

ただし、カナダ人の移民に対する意識は、必ずしも全員肯定的なわけではない。全カナダ人の1/3は多文化主義をまったく支持しておらず、ケベック州(独立のための住民投票があった州だ)は多文化受け入れに対する許容度がはるかに低い。


6 2050年に世界はどうなっているか
環境負荷の面を考えると、地方に住んで車を使うより、都心の高層ビルにぎゅうぎゅうに住んで地下鉄を使ったほうがいい。都市化とイノベーション、そして人口減少こそ地球温暖化を止める最適解かもしれない。

しかし、その時世界は平和なのか?

可能性を挙げればきりがない。いずれにせよ、未来は放っておいてもやってくる。我々は自分の道を進むだけだ。高齢者を大事にし、若者をはげまし、すべての人が平等に扱われる社会にしなければならない。移民を歓迎し、彼らと共に暮らしつつ、人々がその社会で暮らしたいと思えるよう自由と寛大さを維持していかねばならない。人口減少時代が必ずしも社会の衰退期になると決まっているわけではない。とはいえ、現在我々に起きつつあること、近い将来に起きることを理解する必要はある。人類が地球に生まれてからこのかた、このような事態に直面したことは一度もないのだ。

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Posted by ブクログ 2021年10月20日

人口減に繋がる「しわ寄せ」は今後日本のさらなる低迷化が予測できる。その為にも早々に対策を打つ必然性があると感じた。日本経済安定化は日本独自の移民・難民受入策の見直しで経済の底辺を支える人口増を狙うしか無い(カナダの成功対策を見習うべき時期に来た)と言う。 さらに私が思う、IOT(モノとモノの結合)に...続きを読むデジタル化(人と人との結合)を早急に融合させる仕組みに支援、活発化させることを優先すべきである思う。(世界のベンチャー企業を支援、優遇、日本のレガシーシステムを変換、更新、新規導入させること)

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Posted by ブクログ 2021年09月27日

人口は国連の予測よりも早く減るというのを各地域ごとに解説した本
色んな国の話が出てきて興味深いところもあるけど、流れはどこも同じなのでちょっと飽きが出る。

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Posted by ブクログ 2021年01月25日

世界人工は増加すると言われていたが、実際は2050年頃をピークと
して減少を始め、二度と増えることは無い。

そんな予測を各国の出生率や都市化、移民政策などから読み解いている。

昔は人口爆発で大変だ!とか行ってたけど、確かに最近聞かないね、という
感じだったので、読んでいて感覚としては共感できるも...続きを読むのだった。

日本の晩婚化、少子化はいくらでも感じるけど、タイやブラジルなど
イメージでは子供産んでそうな国でも低下してるのは知らなかった。
出生率高いのはアフリカの一部で、そこも低下し始めてるって
それもう絶対減っていくやん。

女性の教育水準の上昇や大学への進学率の上昇が、ライフスタイルを変え、
多くの子供を必要としなくなってる、とか、ジェンダーとか気にする女性が
読んだら火を噴いて怒りそうな内容やね。著者は別に教育を受けるなとは
一言も言ってないが、絶対ここで思考停止してキレる人いるだろう。

個人的には、都市化して親元を離れて都市で若者が暮らすようになり、
結婚しろ、子供産めとうるさくいわれなくなるから産まなくなる
というのはあるかも思った。都市部においては子供は労働力ではなく
ただの負債であるっていうのは流石に冷淡すぎる気はするが。

まぁ理由はどうあれ、この数字がリアルだとして、
個人的に気になるのは人口が減った世界は過ごしやすいかというと
全くそうでは無いという点だ。

コンテンツは金を持ってる老年層向けになり、レストランは
若者向けから車椅子に配慮したスペースの多い、単価の高い
クラシックな店ばかりになり、車や冷蔵庫、ジーンズ、ソファなど
購買層が減ったものはどんどん無くなり経済成長は減速していく、と。
解決するのは温暖化だけ。「老年性平和」って言葉もすごく響く。
人類は、今後別に核戦争や大災害がなくても、なんとなく
少なくなって滅びていくのかもしれない。人が老いて死ぬように。

最近は「あのコンテンツが復活!」とか「プレミアム復刻版!」とか
そういうのをよく見るし、引っかかってる自分もいる。
企業が壮年から老年しかターゲットにしなくなるのだ。
そんな世界はほんと終わってるが、もう取り返しの聞かないところまで
きてるのかもしれない。

スマートシティとかそういう構想あったよな?
この本では人口増やすなら移民しか無いよ、とまとめてるが
日本は絶対それに踏み切れない、やろうとしてもうまくいかない。

ならば人口は減るのはしょうが無い、そこからどうやって
幸せをつかんでいくか、を考えるしか無いと思う。
まぁそれが難しいのだけどね・・・

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年09月01日

人口が減る!!ってことには納得した。
人口減少による暗黒の未来を語っている。ディストピア。著者は逆マルサス。
解決策は継続的な移民受け入れしかないぞ!と主張。

『かつて行われた人口増を過剰に恐れての出産抑制政策+核家族称賛宣伝+核家族の増加+貧困の減少+宗教権威の低下+女性の権利上昇+都市化=人口...続きを読む減少』みたいな。

人口減少
先進国では100年前以上から出生率が低下トレンドへ。ベビーブームは偶然も重なった一過性の減少。人口減少トレンドはずっと続いてきた。顕在化が最近というだけ。発展途上国も出生率が急速に低下している。世界の人口は2050年とかがピークだろう。国連の人口推計は過大すぎる。

人口動態から見る未来
アメリカは移民受け入れにより活力を維持できる。中国は深刻な事態となる。アフリカは巨大都市ができて人口増加は急速に鈍化する。覇権争いに関して人口動態ではアメリカが圧倒的優位。中国は厳しい。アメリカが移民受け入れをやめる場合はインドが浮上する。

移民受け入れの推奨
著者は先鋭的なリベラル的移民国家カナダの人なんで、その立場から人口減少の解決策は移民しかないと主張。自動化では消費する人がいないから移民じゃないとダメと主張。カナダは多文化主義により移民受け入れが大成功。日本や欧米、中国が人口減少で活力を失う中でカナダは移民による人口増加が続くので相対的なパワーがアップするだろうと主張。

移民受入の条件
国家や民族への帰属意識があると移民受け入れは成功しない、と。軋轢を生んでしまう。多文化主義によって移民が社会に溶け込む。カナダのトロントの住民の半分は移民。メリットを得るためにこそ移民を受け入れるべき。人道的な移民受け入れは軋轢を生みデメリットの方が多い。

移民の奪い合い
カナダは教育を受けた高能力移民しか受け入れない。そういう移民は奪い合いになる。移民は近隣国を希望するし、発展途上国の生活底上げで移民の供給は減少していく。多くの発展途上国が人口増加局面を終えつつある。中東とアフリカがまだ人口増加段階。

移民の限界
とりあえず移民受入で人口は増加するが、移民は移住先の人々と同じような出生率になるのでとくに子供を多く産むということはない。世代を超えた波及効果は限定的。移民の平均年齢は30代後半なので子供はあまり期待できない。=継続的に移民受け入れを続けないと人口減少には対処できないという主張。

日本への提言
「日本人が「自分は日本人だ」と感じなくなるくらいに国家や民族への帰属意識、アイデンティティを捨てること。そうすれば多文化主義により移民受け入れが成功して人口減少に対処できるかも」と。=逆に言えば、そこまでせずに移民受け入れたら大惨事になるってこと。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年09月16日

2050年には世界人口は減り始める。国連統計では21世紀中増え続けて110億人になるとしているが、それは間違い。街の人たちのインタビューからそれを推計した。
国として、移民と多文化主義を受け入れなければ衰退する。

農村では子供は働き手になる。都市では重荷になる。都市化が進めば少子化は進む。
女性の...続きを読む地位向上で、出生率が下がる。

国連の低位推計は2050年にピークを迎える。この形になる可能性が高い。教育の効果を無視している。

黒死病では人口の1/3が死亡した。

都市化と女性の地位向上が発展途上国でも起きて、出生率が下がる。

緑の革命による人口増も、出生率低下の動きが後戻りすることはない。

良い環境でも悪い環境でも出生率は下がる。工業化と都市化で下がる。不況で下がる、景気が回復しても上向くが、上向くだけで回復はしない。

日本では、女性の人口は20歳より30歳、30歳より40歳が多い。低出生率の罠=1世代以上1.5以下が続くと、それが当たり前になる。

カナダは移民を受け入れて人口を維持しているが、アジアは受け入れない。
卵子の冷凍保存は、出産の可能性が低く出生率の回復にはつながらない。

移民を受け入れない、子供をつからない、では衰退と折り合いをつけるしかない。

国際的には移民は世界人口の3.3%に過ぎない。
移民は仕事を奪わない。移民は経済規模を拡大させ、平均的にはわずかに向上する。移民は最大の受益者になる。
本来であれば、政治家は経済を守るために移民を受け入れるべきだ。

インドではほぼすべての人が結婚する。結婚しないとコミュニティの中で認められない。
インドの出生率は2.4人。しかし実態はそれより下である可能性もある。
ブラジルの出生率は1.8人。男性優位社会で高学歴の女性の悩みは大きい。メキシコは現在2.3人で減少中。

アメリカの繁栄の武器は移民である。最近は逆流している可能性もある。

少数民族も例外ではない。滅びる可能性。ネイティブアメリカンは出生率が最も低い。

トロントでは市民の半数が外国生まれ。カナダは人口を増やしている。
アメリカで人口当たり二酸化炭素の排出が少ないのはニューヨーク。
田舎暮らしは環境負荷が高い。
人口減少こそ、温暖化防止の最適解。都市に集中して住む。
老年性平和。高齢化社会の問題化で、軍事的イデオロギーが弱体化する。

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Posted by ブクログ 2021年02月03日

世界の人口の変遷とその理由を知りたい人におすすめ。

【概要】
●マルサスの『人口の原理に関する一論』は誤り、人口爆発は起きない。
●人口減少の根拠は「都市化と女性の地位の向上」である。
●人口減少に伴う国力低下をどう防止するか、移民を受け入れるしかない。

【感想】
●人口減少が本当にダメなことな...続きを読むのかよく理解できなかった。
 イノベーションと創造性の損失を心配するとあるが、それは常に新たな世界を作りだしていかなければならないという意識があるからではないだろうか。
 常に発展し続けようと考えなければ、現状維持ベースで十分である。
●そのためには、人口減少を受け入れて、その中で生き方を変えていく方法がリーズナブルであると考える。現に日本ではそのような思考が多く現れている。
●移民を受け入れることは大切である。経済など国力を維持するために移民を活用することは可能であるものの、移民を利用して日本人の子供を増やし人口減少を抑えることには日本人という国民性から賛否両論であると考える。
●そうであるならば、人口減少の防止策ではなく、国力低下の防止策として移民を活用することが望ましく、具体的には、国籍付与の条件を緩和するよりも就労ビザの取得条件を緩和すること、移民が働きやすい環境を構築することが望ましい。そのために改善しなければならないこともたくさんある。
●以上は思いつきの考えであるため、自分自身今後思考を整理する必要がある。

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