あらすじ
信長との合戦を繰り広げ、将軍の権威を利用して西国諸大名との連携を試みた毛利氏。一方、毛利氏の勢力拡大に反発する大名・領主層を抱き込む包囲網を目論んだ信長。西国経略において競合していた軍事指揮官の秀吉と光秀は、最大の敵・毛利氏との決戦と、天下一統とが近づくにつれ、立場に齟齬を生じさせる――。本能寺の変の背景を、合戦を軸に西国大名の関係に着目し検証。天下一統への希求を生んだ状況に最新研究で迫る。
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Posted by ブクログ
本能寺の変に至る背景を、織田権力と西国の諸勢力の関係から推定していこうとする内容。信長上洛以後を対象とし、毛利氏の動向が叙述の中心。各勢力内外の関係性がどう変化していくのかが分かりやすい。
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タイトル見ると本能寺がメインに聞こえるが、そっちはあくまで巻末のおまけみたいなもので、言ってみれば「毛利帝国興亡史」って感じ。厳島の戦い以後、急速に領土拡張を進めた毛利家であったが、国人連合体という従来の体制から脱却できず、逆に兵農分離を推し進めて軍制の近代化を進めた織田家にじわじわと侵食されるってのが大きな流れ。
本能寺の変がなくて、信長の出陣が実現していたら、講和条件ももっと屈辱的なものになっていたはずで、毛利にとっては渡りに船だったんだろうと思う。
終盤に、信長が、家臣団のライバル関係(特に秀吉vs光秀)を盛んに煽っていたという話が出てくる。そういう状況もあって、中国・四国戦略の両方で主流派から外されて焦ったことが光秀による本能寺の変の動機っていうのが作者の説。なかなか説得力あるが、個人的には光秀には九州なんかでの挽回の余地もあったし(作者は無いって書いているけど、実際秀吉も対島津で苦労しているしね)、絶好のチャンスが目の前に転がっていたっていうことに尽きると思うね。
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本能寺に至るまでの西国、おもに毛利の動向を追ったもの。本能寺前夜の光秀の心情、とかでは全然ないので、タイトルだけで手に取ると肩透かしを食うかと。光秀はほとんど出てきません。
元春や隆景、恵瓊らの書状がカジュアル訳で多く掲載されていて、毛利のこずるさやがつがつしない感じが好きなので個人的には興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
サブタイトルがすべてで、本能寺の変についてではなく、1580年ころの中国・四国地方の動向を検証するものだ。
勢力を拡大する織田権力に、毛利氏がどう対応したかが基本になっている(なんせ資料を毛利家の書状に求めているからね)。
資料が残っているのは毛利家が生き残りに成功したからだけど(確かに勝組なんだろうけど)、生き残っただけで、てんで覇気はないよね。なので毛利に頼って織田権力と対峙しようとしたものは、たいてい敗れ去ることになる。
結局、無理に天下を狙わない方が賢いってことなんだろうか。「足るを知る」といえば聞こえはいいけど、自分さえ助かれば「他の地域のことは知ったこっちゃない」ってことで、上に立つ人間の資質には欠けるよね。
Posted by ブクログ
書名に「本能寺」とあるが、本能寺の変自体が中心主題ではなく、室町後期以降の西日本の政治情勢を毛利氏を軸に明らかにしている。畿内・中国・四国・九州の領主間紛争は常に連動しており、一見局地的な紛争であっても、背後により大きなフレームが存在することがわかる。「国人領主連合」色を脱却できず、常に恩賞で釣らなければ境目領主の動向に不安がある毛利氏の限界を重視している。本書は徹底して一次史料に依拠し、「信長公記」すらほとんど用いていない。「物語」的な叙述を否定することによって、前後関係や相関関係がわかりにくいが、俗説・巷説の多い中世近世移行期の場合、こうした措置はむしろ今後も望まれよう。なお本能寺の変については「四国説」及び「秀吉との競合説」で、毛利氏や長宗我部氏への講和交渉を担っていた光秀は失脚寸前だったとみなしている。