あらすじ
日本語の文章で力点が置かれるのは圧倒的に文末。文末は、文の全体に書き手の意思を伝え、情報の核を据えるところ。そして、もっとも記憶に残りやすい。だから文章におけるパンチの効かせどころだと著者は説く。ところが日本語では最後に動詞がくるので、付け足しがしにくく、その大切な文末が弱い。さらに「です」「だ」などが連続して単調になりがちだという弱点もある。これらをどう解決するか。『日本語のレトリック』『メタファー思考』などのベストセラーがある言語学者が向田邦子、筒井康隆、井上ひさしなどの名文を引いて丁寧に構造を分析し、わかりやすく解説。プロの文章テクニックが身につき、伝わる文章が書けるようになる、まさに「書くための」文章読本。また引用されたバラエティに富む名文で、日本語の美しさや豊かさ、作家の技が堪能できる。実践的でありながら楽しい1冊! ○斎藤美奈子氏(文芸評論家)推薦! 「日本語のお荷物「文末」が、かくもエキサイティングだったとは!」
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Posted by ブクログ
文章を書く時に、日本語の語尾は単一になりがちです。拙い読書の記録、感想を書いている私自身常日頃感じているところです。(ほら、です です している・・)
そんな悩みを、さまざまな文例も紹介しながら解消してくださる素敵な本なのです。読んだだけで文章が良くなるわけではありませんが、私自身もっと自由に言葉を使ったり、規則を飛び越えたりしてもいいんだということを学べましたよ。
語尾の一文字に、いろんな意味があり、日本語の奥深さを感じることができました。
Posted by ブクログ
単調になりがちな日本語の文末にバリエーションを持たせるための具体的な解決策が提示されている。
・動詞五段活用の終止形をアクセントに使う。文尾の「る」を避けたいなら、ラ行以外の動詞、デス・マス調の「す」を重ねたくないなら、サ行以外の動詞を現在形で使う。
・補助動詞を上手に使う。「思う」を「思い出す」や「思い浮かぶ」「思い込む」と変化させる。
・現場中継的あるいは実況放送的に表現の主体性を高める場面で非過去形を用いる。
などなど。
著者の引用する文章は、さまざまなジャンルにわたっており、用例研究はさぞ大変だっただろうなと想像する。「文章を書くのが上手くなりたかったら名文を読みなさい」で終わらずに、名文の名文たるゆえんを文末に着目して解説し、具体的なテクニックとして整理して示してくださっているので、自分でもすぐに真似できそう。もちろん上手く使いこなすためには練習が必要だけれど、何に気をつけて練習すれば良いのかが示されているのが有り難い。文章力を上げるために、きっと役に立つ本だと思う。
Posted by ブクログ
以前、他の本の感想でも書いた記憶がありますが、文章を書く際に迷うのが、「だ・である調」か、「です・ます調」か、という点。
前者では、淡白な表現になりがちで、後者では、「です」で終わることの多いこと多いこと。
文字通り、日本語について回るこの文末の表現は、歴史的観点から見ても、多くのライターを悩ませ、「文豪」と呼ばれるスペシャリストは、エレガントにこれを解決してきました。
この本では、そんな文末に着目し、単調になりがちな結びの部分を、有名作家たちがどう解決しているかを、構造から読み解く作りとなっており、ただ名文を眺めて感慨に浸るのではなく、使いこなせるようにすることを目指しています。
そのため、内容としては新書でありながらも、かなりハードな部類。
読んでみると、学生時代に習ったこともありながらも、いざ自分が使うとなると、なかなか乗りこなせない、暴れ馬のような表現技巧の数々。
まるでみじん切りのように、文章を分解していく流れは、ことごとく脳の栄養分を消費し、思わず、糖分が欲しくなる…。
それほどまでに、今まで意識して文末表現を使っていなかったことを痛感させられました。
どうしても書き出しに意識が向きすぎて、あとは勢いに任せてざっと書き上げる自分。
そんな私にとって、この本はブレーキをかけてくれるきっかけになったように思います。
(このレビューを書く際に、意図的に「です・ます」で終わらないように意識してみましたが、なかなかに難しいですね。)
Posted by ブクログ
日本語の文体について述べられたもので、特に文末表現へのこだわりが強い。文法構造上、日本語の文末は同じような形になりやすいものだ。特に過去の記述になると「た」の連続になる。それを単調だととらえれば、改善すべき課題になるわけだ。
これを避けるための提案が後半でなされる。文章内での主格の移動や、問答体を活用することによる語尾表現の多様化などが挙げられている。文体論はいろいろあるが、語尾にこだわったのがユニークだ。
ただ、逆に言えば意図しなくても文末が揃いやすい日本語は詩的な響きを持ちやすいと言えるのかもしれない。何を意識するかで文章への感じ方は変わる。
Posted by ブクログ
文章を書く際に悩ましいのが『文末問題』。単調になりがちな文末を解消するための技法やテクニックを文学小説を引用しながら紹介している本。ネチネチと文末技法を追っていく熱量がすごい本です。
最初の方は難しくて挫折しそうでしたが、ちょっと読み飛ばしつつ読み進めていくと発見があったりして面白くなってきました。引用程度ですが文豪の文末表現を味わえるのもなんだか楽しい。
自分もnoteで文章を書く時には文末表現を多少コントロールしていましたが、ちょっと意識しているくらいです。改めて文末技法について言語化されたものを目の当たりにすると、日本語ってほんとに奥が深いし、無意識に日本語を駆使している日本人もすごい民族だなと感心しました。
勉強になったのは、文章に律動感や躍動感を与える方法。
「デス・マス調とダ・デアル調をうまく調整する」、「過去・完了の「た」に現在形をうまく配合する」のがポイントですが、これによって文章の【主体性】を高まり、まるで書き手あるいは語り手が 現場に立ってその場の空気感も含めて実況中継をしているようになります。
文章の【主体性】という概念を知ったので、これから小説をよむのが楽しみ!機会があれば自分の文章にも取り入れていきたいです。
Posted by ブクログ
開始:2022/10/26
終了:2022/10/28
感想
この人の本はいつもそうなのだが、読むと日本語が頭の中でバラける。小説、解説、歌詞。あらゆる文章の末に目が行き、書くのも読むのも四苦八苦。
Posted by ブクログ
最近ブログやTwitterを始めたことで直面した問題が「文末」です。どうしても「です・ます・ました」で終わってしまって単調になりがちでした。
本書はそんな文末問題を解決してくれる1冊。
たくさんの名文を引用しながら、文末の変化の付け方や技法を解説してくれます。
これから本を読むときは文末にも着目して、どんな工夫がされているのか見つけたいです。
…本書に習ってこの感想も文末に気をつけて書いているつもりですが、慣れていないからでしょうか、やっぱり難しいですね。
Posted by ブクログ
いろいろな意味で、発見が多かった。
文章の書き方指南――?
どのような材料を、どのような切り口で、どんな構成で書くのかを教える。
こんなイメージ。
新書としても薄めのボリュームで扱いきれるのかと、人様のことながら心配になった。
たしかに、本書はたった二章で構成されている。
が、何と文末のバリエーションを増やすという、そこに一点集中する。
この微視的な視点から、しかし、文章全体とは言えないが、複数の文をつなげる技へと導かれる。
足元を見て歩いていたら、思いがけないところへ出ていた自分を発見したかのような気持ちだ。
第一章は日本語文の文末表現が単色的になる理由が述べられる。
書き手が語り手の視点と主体性を操作することで、時制や常体敬体の使い分けを行う。
主旨はそんな話だったかと思う。
私自身、文末問題には全く無感覚だった。
「が」の濫用を避けるべし、とは私も習ってきたことだったが、出所は清水幾多郎『論文の書き方』のか。
それから、筒井康隆の『創作の極意と掟』は気になる。
機会を見つけて読んでみよう。
第二章はレトリック研究者である瀬戸さんの面目躍如たる内容。
バリエーションを豊かにする方法が、多角的に紹介される。
終助詞(開高健が使い手とのこと)、複合動詞を使用すること、体言止めに留まらない様々な品詞での止め。
問答法でも4タイプを挙げる。
感嘆文に祈願文、読み手の名ざしに、引用法。
自由直接引用のところで、第一章の主体性の話がストン、とはまっていく。
おお、こんな風に収束するのか、と感動を覚えてしまった。
Posted by ブクログ
「文末変えなきゃ(使命感)」
をこじらせた結果が、今の自分の文体なわけで。
デス・マス調とダ・デアル調の混合や体言止め、三点リーダーや、「~て。」「~で。」で文を切ったりと、まあ野放図にやってるわけですが、この『書くための文章読本』の文末の分析と具体的な表現技法の紹介は、文章を書くことが好きな人にとっては、読んで損の無い本だと思います。
内容については結構ハード。第1章の助詞と文末の関係性。あるいは文章の意味合いと文末の関係性をカメラや主体性に例えて、解説するあたりは割とすんなりついて行けましたが、2章後半の引用文に関しての分析はなかなかに頭がこんがらがりました。
でも一方で、専門的なところの理解度はともかくとして、実践例であったり、本の中で引用されている具体例は、何となく分かる気もします。たぶんこのあたりは文章読み慣れている人、書き慣れている人ならば、感覚的には理解できるのではないかな。
エッセイ的な書き方はもちろんですが、小説の書き方にも共通する考え方が述べられていて、あらゆる書き手の人にとって、参考になる部分がある一冊だと思います。
文法的な解説や、様々な表現技法の紹介も面白いのだけど、引用で使われる各作品の文章のチョイスも良かったと思います。そうした名文たちと、詳しい解説に触れることで改めて日本語と、文章表現の面白さを感じた一冊でした。
Posted by ブクログ
知り合いの編集の方からおすすめしていただいた。
単調になりがちな、日本語文末のバリエーションをテーマに掘り下げていて面白かった。ビジネスライティングですぐに役立つ、というより、文章表現の引き出しが増える良書でした。近代文学の引用が多く、原作が読みたくなる。
Posted by ブクログ
日本語で書かれる文章にあって、文末が単調になるという著者の問題提起には同感できる。そして、単調な文章は、読者の眠気を誘発するという指摘に首肯せざるをえない。
この文末単調問題をさまざまなレトリックを駆使し、回避することで、さらには文章に力を与えることにもなると著者は述べている。もちろんレトリックとして提示される手法は、一通りではない。これらを駆使できれば、書かれた文章には力が宿るだろう。日本語が持つ語順に由来して起こる文末単調問題という宿痾には、気づいてはいたけれども、これまで対策を考えたことはなかった。本書を読んで理解した。文章を書くときに、都度、「気をつける」程度の精神論的対応しかできていなかったのだと。
文章はもちろんその内容が重要だが、表現が豊かであるということは、結果として内容にも影響を及ぼすだろう。一流作家になる小説を読めば、そのことはよく分かる。そして、本書はその領域に我々を一歩近づける一助となってくれるにちがいない。