あらすじ
奇妙な生き物やアリスという少女が暮らす不思議の国の夢ばかりみる大学院生の井森は、ある晩の夢の中で、不思議の国ではない緑豊かな山の中に辿り着く。そこには“お爺さん”なる男と、クララと名乗る車椅子の美少女がいた。翌朝井森は、大学校門の前で、夢で出会ったクララ──現実では「露天くらら」と名乗った彼女から、まるで夢の続きのように話しかけられる。彼女は何者かから脅迫を受けており、命の危機を感じていた。現実では頭が切れるが、夢の中ではビルという間抜けな蜥蜴になってしまう井森。二つの世界をまたぐ邪悪な犯罪計画から、クララとくららを守れるのか? 大人気『アリス殺し』の恐怖×驚愕ふたたび!/解説=千街晶之
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Posted by ブクログ
“クララ”と言われて、ついハイジに出てくる少女を思い浮かべていたが…違った。ホフマン物語が今回関係するらしく、1回ひるむ…。でも、読むのを諦めなくてよかった。一苦労するがストーリーが巧みなので、グイグイ引き込まれ、アドレナリンが大放出。このシリーズの醍醐味である、「彼(彼女)は誰のアーヴァタールなのか?」の謎解きの面白さは健在。残虐なのにコミカル。グロイのに読んでしまう吸引力。「中毒性がある」という言葉が、一番しっくりくる本だなと痛感した。
Posted by ブクログ
アリス殺しと同様、本体とアーヴァタールのリンクを勘違いさせるトリックで鋭い人なら気づけそう
ホフマン物語を知っていればもっと世界に入り込めたのに…!
Posted by ブクログ
前作のアリス殺し同様、どんでん返しが凄かったです。
現実と夢の中で誰が同一人物なのか、常に疑いながら読みましたが、見事にミスリードに引っかかりました笑。
最後にキーパーソンの正体が明かされ、予想外の展開に感心し、もう一度読み返したくなりました。
前作と繋がっている部分もありましたが、前作よりも複雑で、前作を読んでからでもこんがらがる内容でした。ですが、その分謎が解けた時の反動が大きいです。
「井森/ビル」と「?/スキュデリ」のタッグが最高でした。
Posted by ブクログ
メルヘン殺し第2弾
「不思議の国」の住人である蜥蜴のビルは「ホフマン宇宙」と呼ばれる世界に迷い込む。そこに住む「クララ」は脅迫文を受け取っていた。判事「ドロッセルマイヤー」によってビルは捜査官に任命される。
そのころ地球でも「露天 くらら」にも同じ脅迫文が届いていた。ビルのアーヴァタールである井森 建は大学教授「ドロッセルマイヤー」に捜査を依頼される。
難解な設定とナンセンスな会話の応酬。読み進めては登場人物一覧に戻り、読み進めては理解が追いつくのを待つ。
ちょっと心折れそうになるけど、先が気になる。不思議な登場人物達に引き込まれてゆく。
井森君が死にすぎて心配になる。
マドモアゼル・ド・スキュデリのビルに対する優しい物言いにほっこりし、その鋭い推理に驚く。
クララの最期がなんだか哀れだった。
最後の『E.T.A.ホフマン作品小解題』を読んで、元ネタを知り、やっとストーリーと登場人物に納得でした。
Posted by ブクログ
まさか3人とも偽物のアーヴァタールだったとはな...
『アリス殺し』でアーヴァタールを偽る人がいたにも関わらずまた騙されてしもた。徳さんがスキュデリだってことは分かったのに...悔しい...
登場人物全然覚えられなかったので、くるみ割り人形を履修してからもう一度読みたいですな。
最後のシーンで、『アリス殺し』の前の話なのか?と思ったけど、レッドキングがまた新しい夢を見てたってこと?
Posted by ブクログ
メルヘン殺しシリーズ第二弾目。
前回アリス殺しを読んで面白かったのですぐに探して読んでみたが、これまた面白い。
最後の《アレ》は、《アリス殺しの前》な訳ではなく 《またレッドキングが眠りについた》と解釈しておく。いいね、こういうの大好き。
前に《人外サーカス》を読んだので、【徳さん】の事は知っていたけれど、元々は別の物語の登場人物なのかな?また読んでみようと思う。
その前にドロシイ殺しを読まねば。次も楽しみだ。
Posted by ブクログ
昔読んだ「アリス殺し」の続編。
タイトルを聞いてモチーフはあの作品かと思ったらまさかの知らない作品ですっかり騙された。ホフマン4作品がモチーフとのことだが、その1作品があの有名な「くるみ割り人形」であるのは知らなかった。
前作より複雑で、キャラクターを理解するのにちょっと大変だった。
地球の世界で登場する人物は他作品に登場しているらしいので、他作品も読んでみたくなった。
次作は「ドロシィ殺し」で恐らくオズがモチーフだろうからどんな話になるか楽しみにしたい。
Posted by ブクログ
● メモ
不思議の国に住む蜥蜴のビルは,道に迷い,溺れかけたのちに,ホフマン宇宙という世界に迷い込む。ビルは,クララという少女とドロッセルマイヤーという老人に出会う。
前作,アリス殺し同様,地球と異世界との間で,アーヴァタールという存在がある。今作では,地球とホフマン宇宙との間で,アーヴァタールという記憶を共有する存在を有する者が登場する。
ホフマン宇宙とは,19世紀初頭に活躍したドイツの作家,エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマンの小説の世界であり,黄金の壺,くるみ割り人形と鼠の王様,砂男,マドモワゼル・ド・スキュデリといった作品の登場人物が,今作には出てくる。
クララ殺しは,アリス殺しを踏まえたものであり,アーヴァタールの存在を踏まえ,アリス殺し以上に複雑な犯罪計画が実行される。
この作品のポイント,肝となるのは,地球とホフマン宇宙でのアーヴァタールのつながりの誤認である。これは,ビルに積極的に誤認させることで,アリバイを作ろうとする作中人物に対するトリックと,読者を誤認させる叙述トリックが合わさっている。そのため,適当に読むと,「なんか複雑だけどすごい」程度の感想になってしまう。
この作品は異世界モノであり,ドロッセルマイヤーは,人形を人間にしたり,人間を人形にしたり,記憶を改ざんすることができる。このような人物がいれば,なんでもありであり,もはやミステリとしては成り立たなくなる。そのため,この作品にも,やや無理が生じている点は否めない。
ドロッセルマイヤーが,「ゲーム」のために,マリーという人間の娘と,クララという人形を入れ替えてしまう。これが発端となり,マリーはクララの殺害を計画する。そのクララ殺害のアリバイ工作に,「アーヴァタール」を利用する。ビルのアーヴァタールである井森と一緒に地球で死亡するという点をアリバイ工作に利用するというものだ。
この計画のために,地球上に偽ドロッセルマイヤーを用意する。地球で,募集広告を掛けて,探したという設定だ。地球上の「くらら」は,ホフマン宇宙のマリーのアーヴァタールである。これを,くららはクララのアーヴァタールであるとビル=井森に思い込ませるのが目的であった。
しかし,この地球上の偽ドロッセルマイヤーは,ホフマン宇宙のクララのアーヴァタールであった。クララは,偽ドロッセルマイヤーの募集広告を見て,何かあると気付き,偽ドロッセルマイヤーとして計画に関係する。
かくして,偽ドロッセルマイヤー=クララの前で,マリーによるクララの殺害が計画され,実行に移される。これでは,クララ殺害が成功するわけがない。
ホフマン宇宙のドロッセルマイヤーにもアーヴァタールが存在し,これは地球上の新藤礼都である。この指導礼都は,登場のタイミングと,ビル=井森の捜査を手伝うという役回りから,マドモワゼル・ド・スキュデリのアーヴァタールだと誤信させられる。これは主に読者に対する叙述トリックとなっている。
もっとも,スキュデリ=新藤礼都にはやや違和感があり,これは別の人物のアーヴァタールではないかと読書に感じさせるような印象ではある。しかし,新藤礼都=ドロッセルマイヤーのアーヴァタールだとはなかなか気付けない。
スキュデリにもアーヴァタールが存在し,それは,今作ではちょっとだけ登場する「徳さん」という人物であった。徳さんは,小林泰三の他の作品にも登場する人物ということであり,気付ける人には気付けるのだろうが,この作品を読んだだけで,徳さん=スキュデリだと気付くのは困難だろう。
マリーの計画を逆手にとり,クララはマリーを殺害する。既にクララは死亡していると思われているので,クララは,スパランツァーニという発明家が作成したオリンピアという自動人形になりすます。クララ=オリンピアは飛び散る。ドロッセルマイヤーやスパランツァーニが新たに組み立てても,それはクララでもオリンピアでもなくなるかもしれない。
ドロッセルマイヤー=新藤礼都の計画により,マリーは殺害され,クララは大破。ビル=井森も井森として4回も殺害される。
● 感想
傑作,アリス殺しの続編。小林泰三のこのシリーズは,メルヘン殺しシリーズとも呼ばれている。アリス殺しのようなシンプルさはなく,非常に凝った仕掛けである。地球とホフマン宇宙のアーヴァタール関係を利用した人物誤認トリックが使われている。
普通に読むと,以下のような関係だと思ってしまう。
【ホフマン宇宙】 【地球】
ドロッセルマイヤー ドロッセルマイヤー
クララ くらら
スキュデリ 新藤礼都
しかし,読んでいると,特にスキュデリ=新藤礼都のところに違和感を感じてしまう。真相は,
【ホフマン宇宙】 【地球】
ドロッセルマイヤー 新藤礼都
クララ ドロッセルマイヤー
スキュデリ 徳さん
マリー くらら
読んでいると,マリー=くららではないかというところは,正直予測できてしまう。しかし,ドロッセルマイヤー=新藤礼都,クララ=ドロッセルマイヤーの関係は,かなりの驚き。そして,スキュデリの地球上のアーヴァタールが徳さんというのは,圧巻。これは,小林泰三のほかの徳さんが出てくるミステリを読んで,その内容をある程度覚えて入れば,よりふ楽しむことができてのだろう。
クララが考えたアリバイトリックを乗っ取ってしまうというマリーの考えた殺人計画は面白い。トータルで見ると★4といったところだろう。
Posted by ブクログ
今回はちょっと頭がこんがらがりそうだった…。
地球とホフマン宇宙とのアーヴァタールが複雑すぎて覚えるのが少し大変だった。
それにしても井森くんはうっかり殺されすぎ…笑。
Posted by ブクログ
メルヘン殺しシリーズ2作目も面白かったです。
前作は不思議の国のアリスの世界だったけれど、今回はアルプスの少女ハイジだと思ってたらくるみ割り人形とネズミの王様か〜あんまり覚えてない。というか、すずの兵隊とごっちゃにしていることに気付きました。なぜ、、、
「コッペリア」はガラスの仮面の知識しかない。
シリーズといっても、ビル/井森が巻き込まれててんやわんやでした。不思議の国では周りも気が違ってる人ばかりだったのでそうでもなかったけど、今度のホフマン宇宙ではビルの間抜けも際立ちます。
ビルは間抜けが過ぎるけど、井森は不注意が過ぎます。地球のほうが夢とはいえ、なぜ3回も殺されるんだ。。
地球のドロッセルマイヤー教授と新藤さんは井森に対して協力するようなしないような……と思っていたけど違和感くらいだったので、正体にはびっくりでした。
優しいスキュデリさんも。
グロシーンそんなになかったけれど、井森が何度も死ぬ感触をビルがきちんと覚えてるのが気の毒でした。
今回もラストシーンが素敵でした。世界はリンクしているけど、今度はきっと新しい夢。