【感想・ネタバレ】改訂版 社会的ひきこもりのレビュー

あらすじ

仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす「ひきこもり」の数は、年齢を問わず全国で増加している。精神科医として現場で「ひきこもり」の治療に携わってきた著者は、いわゆる正論やお説教では決してこの問題を解決することはできない、という。「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、個人・家族・社会という3つのシステムの関わりの障害による「システムの病理」とする捉え方から、正しい知識と対処の仕方を解説。ベストセラー『社会的ひきこもり』に加筆修正した待望の復刊を電子書籍化!

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Posted by ブクログ

まだ幼い2人の子供を育てていて、急に「子どもがいつかひきこもりになったらどうしよう」という不安が湧いてきて衝動的に読んだ。
ひきこもり事例に多く対処してきた精神科医である著者が、ひきこもりが発生する構造的な問題について「ひきこもりシステム」というモデルを使って説明している本書。現実のひきこもりに対してどのような期間をかけて何をすべきかについても極めて具体的に書いてあり、とても良かった。

面白かったポイント
- ひきこもりの原因は本人だけにあるのではなく本人、家族、社会からなるシステムにある
- いきなり本人と社会を接続しにいくのではなく、家族と社会、本人と家族、本人と社会、の順番で接点を増やすべき
- ひきこもり状態のまま無理やり単身生活をさせても、自立が促されることはあまりない
- 本人と家族の安定した関係性が確立されるまでには、2-3年かかることも多い
- 「両親と本人が冗談をいい合える状態」を目指すのが、関係性についての一つの基準
- 本人の主張のすべてを受容すべきではなく、受容の枠組みを示して毅然とした態度で向き合わないといけない。受容するための器の底が抜けていては、本当の受容はできない
- 親が「この子は私無しでは生きていけない」という関係性に依存している共依存のケースも多く、その場合は親のふるまいが変化しないと状況の改善はみられない
- 思春期の子どものお小遣いは、本人と決めた金額を定期的に与えるのが良い。消費活動は社会参加の形の一つであり、本人に「お金を使えば無くなり使わなければ貯まる」という感覚を身につけさせることも重要
- 本人を対等な家族の一員とみなして、家庭の経済状況や治療方針についてなるべく具体的に話すべき
- 男性の方が女性よりもひきこもりに占める割合が高いのは、一般に男性に対する方が日本社会における就学や就業への期待度が高いから

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2025年07月27日

Posted by ブクログ

「ひきこもり」問題は、確実に深刻化しつつあります。しかし最前線で対処すべき立場である我々精神科医が、この未曾有の事態を前にしてなすすべもなく立ちすくんでいるのが現状です。
自分の臨床体験を整理しました。

愛とはそもそも自己愛。人は自分を愛する以上に他人を愛することはできない。

スチューデントアパシーの特徴は多くの社会的ひきこもりの特徴とかなり一致する。

男性に多い
無関心無気力無感動、生きがい目標進路の喪失の自覚、アイデンティティの不確かさを訴える。
自ら進んで治療を求めない。
自分の置かれている状態に対する深刻な葛藤がなく、その状態から抜け出そうという努力を全くしない。
自分が異常であるという自覚がないわけではなく、対人関係に敏感で叱られたり壊されたりするとひどく傷つく。
そのため自分が確実に受け入れられる場面以外は避ける傾向がある。
苦痛な体験は無気力退却などの行動として表す。暴力や自殺企図などの激しい行動化は少ない。
優劣や勝ち負けの過敏さがあり、敗北や屈辱が予想される場面を避ける傾向がある。


ひこもりたちの葛藤は現状への不満や劣等感から引き起こされることが多い。
大学生活は様々な点でプレッシャーの少ない安全な生活圏である。

回避性人格障害
批判非難否定に対する恐怖のために、重要な対人接触の多い職業的活動を避ける。
人と関係を持ちたいと思わない。
恥をかかされること馬鹿にされることを恐れるために親密な関係の中でも遠慮を示す。
社会的な状況では批判されること、拒絶することに心がとらわれている。
不適切感のために新しい対人関係状況で制止が起こる。
自分は社会的に不適切である人間として長所がない他の人より劣ってると思っている。
恥ずかしいことになるかもしれないという理由で、個人的な危険を冒すこと、何か新しい活動に取り掛かることに異常なほど引っ込み思案である。

「学習された無気力」心理的な原因から生じた無気力状態。
「やっても無駄だから動かない」のではなく、むしろ「動いた方がよいに決まっている」からこそ身動きが取れないのです。
強い葛藤を抱えていて、様々な精神症状につながり、一層社会参加への壁が厚くなる。
しかも、社会参加ないし治療によってでなければ改善しない。
次第に悪化しながら、いっそう深く引きこもらざるを得ないこともある。

治療には、家族の指導と自助グループへの参加という組み合わせが最も一般的なコースです。つまり家族や他人との関わりです。

引きこもり生活には他者との出会いもないが、精神的な成長も、受ける外傷も、回復も一切ない。
他者のイメージは、単に外傷をもたらすだけの迫害的なイメージのみ。

立ち直りには短くても半年、平均して2~3年以上の時間が必要となります。

わずかな変化だけではなく、長期的展望を持つこと。

引きこもりは簡単には治らないないので、粘り強く絶え間なく努力し対応を続けて改善していく。

愛情を強要せずに
ヴォネガットの言葉に「愛は負けても親切は勝つ」というのがあります。

青年たちにとって異性関係こそが最大のハードル。異性関係ばかりは治療によっても与えることができません。

「愛」を禁欲してでも、ひたすら「親切」を心がけるべきです。「親切」は共感なくして成立しません。まさにこの「共感」こそは引きこもりの求めるものなのです。
深く共感しつつ親切に接してあげること。それこそが「治療的態度」です。むしろ情緒的な強い愛は、そのぶん反動を呼びやすい。
知的理解と情緒的共感に立った親切な態度こそが、求められる家族の態度です。
厳しく接して本人を追い詰めるのではなく「本人に恥をかかせないこと」

将来の不安を感じ、自分の状態を情けなく思い、しかしどうしていいかわからないのです。決して気楽な気分でのんびり気ままに過ごしているわけではなく、不本意な思いを強く抱きながらも、社会に出ていけないのです。その辛さをまず家族は共感的に理解しておくべきです。

精神分析において「ペニス」は、「万能であること」の象徴とされます。しかし成長と共に他人との関わりを通じて、「自分が万能ではないこと」を受け入れなければなりません。 この
「万能であることを諦めること」を、精神分析家は「去勢」と呼ぶのです。
人間は自分が万能ではないことを知ることによって、初めて他人と関わる必要が生まれてきます。
成長や成熟は断念と喪失の積み重ねにほかなりません。成長の痛みは去勢の痛みですが、難しいのは去勢がまさに他人から強制されなければならないということです。まず自ら望んで去勢されることはできないのです。

私たちに今からでもできることは、「社会的ひきこもり」が多数存在するという現実を事実として受け入れることに他なりません。
まず正確に認識し理解すること。それが新たな事例の増加を予防すると私は信じています。

本書が「ひきこもり」に悩むすべての人たちに少しでも多くの希望と意思をもたらすことを願ってやみません。
一九九八年十月二〇日 斎藤環

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2022年12月06日

Posted by ブクログ


ひきことりについて勉強したくて読んだ一冊。

本人が何故そのような行動をとるのか、どんな葛藤があるのか理解できたし共感できた。

自分の関わり方の間違っていた部分にも気付かされた。

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2023年09月01日

Posted by ブクログ

不登校は学校生活における選択肢の1つと言う流れもある。

不登校を選択した結果、ずっと家にひきこもっている状態になると、ひきこもっていること事態が現状を悪化させる可能性もある事は念頭に入れないといけない。

ひきこもりの背景や、どうすれば良いか?なども描かれている。

タイトルは「社会的ひきこもり」となっているが、Twitterなどのweb上で色々な人とのコミュニケーションが容易に取れる中、社会的にひきこもっているとは全ての場合言えないのでは無いだろうか?「働く事のみが社会的関わり」と考えてるのなら別だが。

別に必要がなければ働く必要も特に無いかな、と思ってます。その思い込みで、現状ひきこもっていて苦しんでいる人もいるかと思います。そんな人たちは「考え方を変えれば良いんじゃないのかなぁ」とは思いました。

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2020年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全国的な問題となっているひきこもり。とかく本人や親の責任とされがちだが、それをシステムの問題として語っている。
ひきこもりへの過度な憐憫や差別を助長することなく、精神科医としての実体験に基づいてに論理的に語っているため、大変読みやすかった。
ひきこもり問題を考える上でベースに置くことのできる本だろう

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2020年03月05日

Posted by ブクログ

2025年77冊目。満足度★★★☆☆

まさに社会的な問題となっている「ひきこもり」(高齢化している)に関して、基本的な知識を得るのに好適

発達障害とひきこもりは、定義の上では明確に異なるが、行動特性等類似点多く、参考になる点が多いだろう

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2025年11月09日

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