【感想・ネタバレ】空気を読む脳のレビュー

あらすじ

職場で、学校で、なぜ日本人は「空気」を読むのか?
中野信子さんが脳科学をとおし、初めて日本人の心性と強みを読み解く。

「いじめ」「サイコパス」「キレる心」「だまされる心理」など、脳科学から人間を鋭く分析し、対処法をわかりやすく教えてきた中野信子さん。
本書では初めて、日本人の脳に迫ります。
「醜い勝ち方より美しい負け方が好き」「不倫は懲らしめるべき」「雇うなら体育会系男子という企業意識」「なぜ、イケメンのほうが美人より会社で得なのか?」「今が幸せと感じられないし、将来も不安でしかたない」「同調しないと怖い」――日常のさまざまな現象の背景には脳の影響があります。

相手の気持ちを察するのがうまい日本人。それを「空気」を読むといいます。それは、すぐれた協調性、絆の深さ、恩や恥を感じる心にもつながるでしょう。
でも逆に、周りの空気が私たちに、「生きづらさ」や「不安」「忖度する心」「バッシングの快感」といったものを生じさせる原因にもなります。
近年苛烈さを増すバッシングは、「人を引きずりおろす快感」や「ルールを守らない人間を懲らしめたい欲求」という空気です。

日本は世界幸福度調査で常にその順位の低さが話題になりますが、生理的な特質からきているのでなかなか幸福度を上げるのは難しいでしょう。
「褒める」教育が当たり前になっていますが、エリートが行う捏造や改竄の裏に、誤った褒め方がある可能性がわかりました。日本人の才能を伸ばす方法についてヒントが見つかるでしょう。
ほかにも、留学などに「挑戦」する人が減ったのはなぜか? なぜ女性が「婚活」に苦しむのか? なぜ13年連続でイグノーベル賞をとれたのか? なぜ日本は長寿国なのか?
脳の中に私たち自身を読み解くカギがあります。
日本人の特徴を知ることは、日本人以外の人々との違いを知ることにつながります。このことが、現在をより良くし、未来を資する役に立つはずです。

空気を読む脳〈目次〉
はじめに
第1章 犯人は脳の中にいる ~空気が人生に与える影響とは?
第2章 容姿や性へのペナルティ ~呪いに縛られない生き方
第3章「褒める」は危険 ~日本人の才能を伸ばす方法とは?
第4章「幸福度が低い」わけがある~脳の多様すぎる生存戦略
おわりに

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Posted by ブクログ

ネタバレ

協調性、不倫バッシング、ギャンブル、女性の容姿、同性愛、幸福度など、様々な事を脳科学の観点から解説してくれている。分かりやすくて読みやすかった。
人間は理性的と思いたいけど、それは過信で脳って自分が思っている以上に本能の部分がより多くを占めているのかもなあって読んで思いました。


以下個人的メモ

人類は進化の初期課程において、不安うつ傾向が高まる方向に環境圧力を受けながら進化してきたのではないかと言う考え方を支持するものです。つまり、不安の度合いがある程度高い方が、少なくとも人類進化の初期には、生存に有利であったと言うことを意味していると考えられるのです。

日本は、サイコパシーの高い人間の割合がどちらかと言えば少ない国です。裏を返せば、内側前頭前皮質の機能が高い人がより多く、カッコいいや倫理の基準の変化する頻度が比較的高い風土であるといえます。
5年前には、さほど問題にならなかったことが、不適切であると過剰に非難を浴びたり、2年前にカッコよかったものがあっという間にダサくなったりしてしまう。

この人は信用できるのか、この仕事をしていていいのか、この人と取引すべきだろうか、この場所に住み続けるべきか、この人と結婚したほうが良いのだろうか、この人と子供をつくってよいのか、生きるとは、まさに選択の連続です。
選択の連続である生のさなかにあって、確実な事しか選ぶことができない、となると、ほとんど何も決定することができません。そこで、未知の世界に勇んで飛び込んでいけるように(ときには勇み足となることもありますが)、わざわざ脳の快感を覚える部位を刺激するドーパミンを利用して、わからない方が楽しい、興奮する、という仕組みを脳に作り上げてきたのです。

しかし、中にはコストを負担せず、おいしいところどりする者も出てきます。これをフリーライダーと呼びます。フリーライダーはアリやハチなどの社会にも見られますが、一定の割合を超えてしまうと、共同体のリソースは減るばかりです。 
肉体の脆弱性と子育て期間の異様な長さのために、集団で生き延びることが種の保存に必須であるために社会性が大きく発達した生物である人類には、フリーライダーの検出機能と排除の機構が他の生物よりずっと強力に組み込まれているのです。

その生理的な特質により、日本人の幸福度は、ある一定以上に高める事は難しい、と言うことをあらかじめ知った上でなければ、多くの努力は無駄になってしまうことでしょう。
そもそも幸福度が高くなりにくい性質をわざわざ保持している人たちが、マジョリティーとなるような集団では、幸福度が高いことが生存に不利になる可能性があることを考慮すべきです。
にもかかわらず、あえてそのありようを変更させて幸福度を高めてやろうとするのは、せっかく環境に適応している個体に対して、外部から無茶な操作を加えて、バランスを崩すことにもつながります。

脳の進化の歴史をたどれば、人間は、合理的に考えることのできる知性を発達させることで反映もしてきましたが、その合理性を適度に抑えることで、つまり適度に鈍感であり、忘れっぽく愚かであり続けることによって、集団として強調行動を取ることが可能になりました。それが、今日まで人類が発展を続けることができた大きな要素だったのではないかと考えることができます。

利他性は、バランスと器用さとを備えていなければ、自己を本当に幸せにするための確実な武器とはなりにくいのです。なぜなら利他性とは、それのために自己犠牲を強いる脳内の装置であるからです。

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2025年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「なぜこんなことをしてしまうのか」を脳科学の視点から言及するトリビア集。

・よかった編
「おわりに」
愛・情・絆・感動・・・周りが高揚し酔いしれる法則が理解できなかった著者の、人生生存ゲームについてが語られる。いきなり個人的な話が始まったが、こんな風にゲームとクリア条件について自己定義したことってないかもなぁと思うともに、はっきり表明できちゃう著者がすごいなーと思う。
あと「利他性はバランスと器用さを備えていなければ、自己を本当に幸せにするための確実な武器とはなりにくい」の一文にも唸った。バランスも器用さも圧倒的に足りないタイプなので、ちょびっと罪悪感もちつつも自分優先に行動しがちだからなーと。

・悩ましいと思った編
「幸福度が低いのには訳がある」
セロトニンが低いからこそ長く生き延びてこられる。だけど幸福度は低い。おとぎ話のように「末永く幸せに」とはいかない所が憎い。でも長生きが必ずしもいいことでもなくなってきてるので、ほどよく幸せを感じるタイプじゃないと長期的に環境適応していけないんじゃないかなあと思った。

<総評>
知ってる話も知らない話もあって、書物としての統一感はないけどまぁまぁ面白かった。一個体と種の一員としての自分に、ダブスタというかいくつも脳の生存戦略的衝動が組み込まれてて、どっちも誤りではないからそりゃ息苦しいわーと納得。仕組みが分かるのと気持ちが収まるのとはまた別だけど、”人間”ていう種類の生物の性質なんだなーと距離をとってみると怒っても仕方ないかーという気がした。

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2022年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうしたら子供を「困難への挑戦を喜び、創意工夫を楽しんでいくことができる人」に成長させてあげられるのか?

正解をしたことをそのまま褒めるのではなく、その正解を導くまでの努力や工夫に焦点を当てて褒めることで、努力は良いことだと認識するようになる。

「あとがき」で中野信子さんがどんな方なのかが分かってすごく共感できる部分がありました。
↓↓
愛、親子の恩、仲間同士の連帯意識、感動、自己犠牲、忠誠心、誇り、絆・・・そういった空気を、ふわりと感じさせるだけで、なぜ世の中の大部分の人は押し黙り、納得して、大人しくされるがままになってしまうのだろう?しかも、人々はその行動を美しいと言って称賛さえする。

このルールを覆すことはできないのであれば、羨んだり、焦ったり、無駄な努力をしたりするのは諦めよう。

「利他性はバランスと器用さとを備えてなければ、自己を本当に幸せにするための確実な武器とはなりにくい」

自分を変えようとするのには無理があるから、今ある手持ちのカードで勝負しようと、腹を括る。

さんざん考えた末に、その瞬間をどれだけ楽しむことができたか、に主眼を置く。私にとっての最高の楽しみは、学ぶことですから、最後の瞬間まで学び続けることができれば、この生も案外と悪くなかったな、と思えるのではないかと考えた。


自分も不器用でこの「ふわっとしたもの」に苦しんでますが、この中野信子さんの最期の瞬間まで学び続けるという生き方に共感し、気持ちを楽にさせることができました。

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2021年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本人は比較的熱くなりにくい性質を持った人が多くいる集団。新規探索性が高いと考えられる遺伝的資質を持っている人は少ない。セロトニントランスポーターの少ないタイプが世界でもっとも多い。自分が利益を失ってでも、不正をした相手に制裁を加えたいいう気持ちが世界一強い民族である可能性がある。不安を力にかえる民族。脳から見たやる気にさせる言葉がおもしろかった。多額の報酬を与えることはほとんど意味がない。その仕事自体がやりがいがあり、素晴らしいものだとくり返し伝え続けることと、思いがけない小さなプレゼントである。

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2021年05月23日

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