【感想・ネタバレ】リア家の人々(新潮文庫)のレビュー

価格 605円 (税込)
3.8
9件

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2013年01月16日

読みながら、小津安二郎の映画がいつも頭にあった。それから谷崎潤一郎の『細雪』も。それらが、シェイクスピアの『リア王』という補助線を与えられるやいなや(なんという驚き!)、頭の中で、まるで万華鏡が一挙にある模様を得たかのようにおさまった。
帯に、この小説の主人公は「昭和」だという高橋源一郎の言葉があっ...続きを読むたが、なるほどその通りだと思う。文三はむろん、静もまた「静かに」抵抗しているのだ。あまりにわかりやすい時代に移りゆこうとする時代の趨勢に。狂っているのは文三や静なのだろうか。

もうひとつ、読みながら、個人的に嫌いな三島由紀夫を思った。きっと橋本治は三島由紀夫を意識しながら書いていると思った。なぜなら、彼の名が一度も登場しないから。意図的に、彼の自殺の手前で本作は終わっている。「本作の感じ」がセンチメンタルに突き詰められれば、三島由紀夫になるのだと思う。しかし本作はいたってドライである。ひたすら分析的でありながらも心理小説である。それって三島への賛辞にも似ているが、橋本治は何より、飾り立てないところがいい。
橋本治に期待しているのは、三島由紀夫が残した痕跡から、ことごとく湿度をぬぐい去ってくれること。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月15日

・半年もたたぬ間に、総理大臣はもう二度代わっている。新しくなろうとしても、国の中枢はそうそう変われない。「これなら大丈夫だろう」と思われる人物を連れて来ても、国の中枢にふさわしいと思われる人物なら、なんらかの形で汚れている。「新しくなる」ということは、そう簡単なことではないのだ。

・人にはそれぞれ...続きを読むの背景がある。同じ時、同じ場所にあっても、それぞれに得るものは違う。違うものを得て、同じ「一つの時代」という秩序を作り上げて行く。一切が解体された「戦後」という時代は、新しい秩序という収まりを得ることに急で、その秩序を成り立たせる一人一人の内にあるばらつきを知らぬままにいた。

・誰に言いつけられたわけでもない。「東大に行きたい」と言い出したのは、自分自身なのだ。「東京の伯父さんは東大を出ている。僕も東大に行きたい。東京に行って東京の子になりたい」と願って、それはかなえられた。東京でも有数の進学校に通い、寄宿先の伯父や従妹には愛された。秀和は「祝福された子供」だった。それがいつか、すき間風が吹き込むように、薄れて行った。誰かが秀和を追い詰めているわけではない。秀和を守っていたものの力が少しずつ後退して、秀和は「孤立」というものを感じるようになっていたのだ。

・それは政治でもない、思想でもない。政治や思想の言葉を使ってパラパラに訴えられたものは、その社会の秩序を形成する人間達の「体質」である。だからこそ、東京大学の教授達は、学生達から罵られ、嗤われ、困惑し怒っても、なにが問われているのかが分らなかった。秩序を形成する者の「体質」、形成された秩序の「体質」が問われるようなことは、かつて一度もなかった。なにが問われているのか分かったとしても、事の性質上、それはたやすく攻められることがなかった。だからこそ、事態は紛争へと至って、その紛争は、そう簡単に解決されることがなかった。仮に紛争が収まって「元の状態」へ戻ったとしても、問題を発生させた「元の状態」がいいものであるのかどうかが、分からないからである。

・「私、自分で探したいの。自分になにが出来るのか、出来ないのか、それが知りたいの。自分のこと、なんにも知らないの。だから、なにが出来るかを、自分で探してみたいの。私、この家の中のことしか知らないみたいな気がするの。いけない?」と言った。

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Posted by ブクログ 2019年03月11日

 橋本治は19世紀も、20世紀も、江戸も、あれこれみんな総括して見せて、たぶん、最近の新書では「平成」も総括していたと思うが、おしまいには借金も総括して逝ってしまった。さびしい。
 1969年で終わるこの小説は、「昭和」というよりも、「戦後」を総括して見せているとぼくは思った。
 しつこく低いアング...続きを読むルで撮り続けながら、延々とナレーションを入れていく。ここで解説を入れているのは誰だと思っていると、細目の笑顔の作家の顔が浮かんでくる。笑うしかないようなものだが、そうは言いながら、という気分で、その世界へ引きずり込まれてしまう。いつもの橋本治だ。
 戦後史をこの角度で書いている人はそうはいない。小熊英二の仕事を面白いと思う人は、橋本治を見逃してはいけないとおもう。
 

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Posted by ブクログ 2013年02月22日

 スピーディな語りと、めまぐるしく変わる語り手。ある男を中心とした家族の戦中戦後昭和史を怒涛の勢いで読まされた気持ちです。すごい!
 そういえば私この人の源氏物語すごく好きだった。

 章のはじめに「リア王」からの引用があるのですが、シェイクスピアの方を知っていればもっと思うことがあったかなあ?とは...続きを読むいえ読むには敷居高い。「あらすじでわかるシェイクスピア」とかどっかにありませんかね(怠惰!)

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Posted by ブクログ 2013年01月19日

橋本治は実ははじめて読んだのだけれど、すっごく読みやすくて、おもしろかった。
敗戦後から60年代まで、三人の娘と父親、ごく一般的な家族が、昭和の歴史とともに描かれていて、読みごたえがあった。「公職追放」とかはじめて知った。そういう知らなかった歴史や、あと、大学紛争とかなんとなく知ってる歴史についても...続きを読むすごく興味深く読んだ。
年代的には、娘たちがわたしの親世代くらいなんだろうけど、ここで描かれている昭和の家族の感じがなんだかすごくよくわかって。父親との距離とか、親戚との関係とか。今とは家族ってものが全然違うような気もするのだけれど。今の若い人が読んだらどう思うのかなあ。
戦後の家族とはいっても、三丁目のなんとかみたいな古き良き時代みたいなノスタルジーはなく、冷静な視線で淡々と描かれている感じで、読後感はむしろ寂しく暗いような……。

橋本治氏の著作をもっと読みたいと思った。

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Posted by ブクログ 2013年01月17日

戦後の昭和史を通して家族一人一人のモノの感じ方、思惑を丁寧に描いた作品。
昭和は激動の時代だったと思うけど、
その空気をどう感じるかは人それぞれで、
個々人が色々な事を考えながら生活している家族の在り方は今も昔も同じだと思った。

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Posted by ブクログ 2013年06月02日

題名を見て想像されるようにシェークスピアの「リア王」になぞらえて書かれた小説です。舞台は戦後の日本、主人公は妻を40代で亡くした帝大出の文部省の官僚の砺波文三という設定です。
彼には3人の娘がいますが、リア王に登場する娘たちと同じような配役になっており、末娘の静との二人の生活が中心となりお話は進みま...続きを読むす。4部構成の章の最初に「リア王」から引用された台詞が入り、その話を象徴します。砺波家の人々を追いながら、実は敗戦後の日本の在り方や世の中の動きや、それに伴う人々のものの考え方、行動の変化に焦点があてられた構成になっています。
小説ながら、橋本さんならではの言葉の使い方の説明があるので、舞台を見ながら、解説をしてもらっているような感じがしました。
最後の方の場面で、学生運動の象徴のような東大の安田講堂占拠の事件は何故起こったのか、何故紛争が長引き入学試験の中止にまで至ったのかという、事件の本質が語られていて興味深いものがありました。東大出身の橋本さんは、確かこの頃、この事件に関しての今でいう有名なキャッチコピーを考えた人だったなあと思い至ったのでした。

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Posted by ブクログ 2018年10月14日

平凡な高級官僚であった砺波文三は、戦後の公職追放を経て無為無感動となりはてたが、生きていくための安らぎを家族にだけ求めようとしても、それは初老の男の独りよがりである。娘と言えども一人ひとりの人間として文三の思惑に従うわけもない。昭和の時の流れ、社会の変化にあわせて戦前のノスタルジーは消えゆくのみ。だ...続きを読むがもはや文三は淡々と坂道を下りていくのみだった・・・というところ。

老いた父と娘達という配役で、リア王を本歌取りし、昭和時代の歩みが平凡な個人の歴史に様々な影響を与える様子を表現した小説。だがテレビドラマの脚本のようでもある。

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Posted by ブクログ 2013年01月24日

途中までは文三の駄目っぷりを何故か我が身に引き付けて読んだが、甥っ子が出てきてなにかやらかすかと思ったら説明要員みたいな扱いでやや拍子抜け。あと文三ってネーミングの適当さがすごい。

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