あらすじ
母の遺品整理のため実家に戻った邦彦は農道で般若の面をつけた女とすれ違う――(「面」)。“この世のものではないもの”はいつも隣り合わせでそこにいる。甘美な恐怖が心奥をくすぐる6篇の幻想怪奇小説。
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Posted by ブクログ
じっとりとした怖さと寂しさ、なんとも言えない後味の悪さ、非日常なはずなのに、すぐそばにあるような物語
自分が死んでることに気づかず、山の奥の家に住み続ける話と、あるはずのない歯医者で治療後、その歯医者の後味の悪い話を聞かされる話がお気に入り
Posted by ブクログ
この本との出会いは、友達と立ち寄った本屋でのジャケ買いでした。出版が角川ホラー文庫で、いかにも短編ホラー集です、と言わんばかりのタイトルから、即決で購入しました。結果、買って大正解でした。
1つ目の短編である「面」は、冒頭の情景描写が少し長くて、「この短編集は、私の苦手な回りくどい作風なかもしれない」と、不安を感じさせられましたが、あっという間に昼ドラのようなドロドロとした空気感に飲み込まれ、いつの間にか優しく美しい文章の虜になっていました。
2つ目の「森の奥の家」は、"静寂"という不気味な空間の中で、かつての楽しかった思い出を巡らせる女性の話しです。悲壮感を漂わせながらも、どこか温かみを感じる素晴らしい作品でした。
3つ目は、個人的にこの短編集でいちばん怖かった「日影歯科医院」です。暗い雰囲気で始まり、明るくなったと見せかけて、一気に恐怖をたたみかけてくるようなストーリー構成に背筋が凍りました。
この他に、「ゾフィーの手袋」、「赤間山荘」「桃色の窓」と続きますが、どれも妙にリアリティーのある描写と、優しく美しい文章で、サラッと読める短編集でした。
小池真理子さんは、どうやら、ホラー小説よりも恋愛小説に定評のある作家さんのようですね。私は存じ上げませんでしたが、一気に好きになってしまいました。「異形のものたち」の他にも、いくつかホラー小説を書かれているようなので、小池真理子さんの作品はホラーから攻めたいと思います。
Posted by ブクログ
ひたひたと怪異が迫ってくる感じがじわじわ怖い短編集でした。どのお話も面白かった。
怖かったのは「山荘奇譚」。この不条理な恐怖がここで終わってるのもいい。
「日影歯科医院」「緋色の窓」の、情念のような想いが残っている怪異が特に好きでした。この人たちは現れるだけだし、歯科医院は治療までしてくれるから…全く痛くないのも凄腕。
解説も面白かったです。お母さまが視える体質だったみたいだけれど、小池先生にもちょっと引き継がれたのかなぁ。