あらすじ
「デタッチメント」から「コミットメント」へ──村上春樹の創作姿勢の移行は、はたして何を意味するのだろうか。その物語世界はどのように深化を遂げたのか。デビュー以来の80編におよぶ短編を丹念にたどりながら、長編とのつながりをも探り出すことで、新たな像が浮かび上がる。下巻では、『ノルウェイの森』の大ベストセラー化を契機にもたらされた深刻な孤立と危機にはじまる「中期」の作品群を読み解き、そして、日本の戦後にとって節目となった1995年の二つの出来事を誰よりもしっかり受け止めた小説家の「後期」の転回を掘り下げる。
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Posted by ブクログ
以前読んだ村上春樹の短編『眠り』。あれ、ちょっとがっかりしてたんだよね。途中まですごく面白かったのに、最後のオチが、え?とね。村上春樹はよくわかんないのが面白さとは思うんだけど、わかんねーよ、だった。眠らないことによっていろんなことから解放された主人公といっしょに、世界の広がりを感じ始めたと思ったら、最後にひどく怖い目にあうという・・・。閉そく感の中に叩き落された、イヤな気分になったと思う。
本書を読んで、その印象が一変した。
加藤氏のハリウッド的妄想といってたか、によれば、最後に出てきた男たち。その顔は・・・というところでね。あぁ、そういうことだったのか、と妙に納得したのだ。
そして、そうであるなら、俺が主人公の女性といっしょに感じていた解放感は、必ずしも解放ではなかったことになる。変化ではあったとしても。
もう一度、あの話読み返してみようと思った。
文芸批評って、謎解きなんだなぁ。
面白かった。
小説を読むとは、著者の言う通り、世界を感じ味わう見方を豊かにしてくれるんだね。