あらすじ
民政党議員だった斎藤隆夫の「粛軍演説」は、軍部批判・戦争批判の演説として有名である。つまり、輸出依存の資本家を支持層に持つ民政党は、一貫して平和を重視していたが、本来は平和勢力であるべき労働者の社会改良の要求には冷淡だった。その結果、「戦争か平和か」という争点は「市場原理派か福祉重視か」という対立と交錯しながら、昭和11・12年の分岐点になだれ込んでいく。従来の通説である「一五年戦争史観」を越えて、「戦前」を新たな視点から見直す。
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Posted by ブクログ
自分が持っている戦前政治史の常識が意外なほどに間違っていることに驚きを覚えた。戦前民主主義は北支事変(日中戦争)の勃発ですべてが吹っ飛んだと結論付けながらその理由が説明されていないため著者の考えは次著を待たねばならないが、ヒントは保阪康正「昭和史7つの謎」や半藤利一「昭和史」、「戦争の日本近現代史」と合わせ読めば自ずと見えてくるだろうか、また一方で戦争という熱狂の時代に突入していく人々の心理など同時代性を持ってしても意識できないだろうか。