あらすじ
数千年前、人類に「自己認識」が芽生え、有用ではなくなっていった神の声。そこで人々が神々の代替物として生み出したのが法律と宗教、そして「物語」だった――。確率論・べき乗の法則・言語論・機械論・コンピュータ論など、さまざまな学問の知見を援用しながら、人類が長年拘束されてきた「因果の物語」の終わりと、新しい物語「共時の物語」を提示する。執筆5年、圧倒の20万字!
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Posted by ブクログ
21世紀の世代にとって音楽はコレクションではなく、
全ての楽曲が目の前に存在している。
第一世代プラットフォーム
インターネット上での水平統合
第二世代プラットフォーム
サービスとしての流体、ストリーミング
過去:失われていくものから、押しつけがましいものへ
「確率」の物語 大数の法則
「べき」の物語 自己組織化臨界 かろうじて維持されている安定
「機械」の物語 パーセプトロン
誤差逆伝搬法:結果から逆算、重みの数値を変えていく
自己符号化器
「物語」が優先される時代、脱真実、脱「因果」の物語
同化型→対面型(スクリーン、マイク)→
ゼロUI 指示しなくても最適な状態を作る フォグをクラウドの下に
判断疲れ
「アーキテクチャ」見えずに行動を物理的に支配
「ナッジ」ささやかな誘導に従う
社会は臨界状態、単純な選択肢では進まない
自由の価値
未来への期待、過去との関係における相対的なもの
ピュアなデータの周りにある空気感と、そこから生じる「摩擦」
三次元触感
カーナビは平面的な案内。
スマホの設定は記述的。直感的でない。
「空間」のすべてがUIへ、空間コンピューティング
機器は見えなくなる
空間認識能力
時系列tでなく、xyz軸での世の中と自分との関わり
小説家ではなく、脚本家
仮想と現実の区別は意味がない、そこにあるもの
同期と非同期 ;メール
「偏在」(ユビキタス);華僑
マインドフルネス
「摩擦」「空間」「偏在」の重なった感覚が深化
「ライバルとの闘い」=因果の物語
孤独なフリースタイルスポーツ=瞬間
多重プロット =多視点 中心がない 映画「バベル」
因果からこの瞬間へ『共時の物語』
Posted by ブクログ
見た目にはしっかり分厚い本で,中身もぎっしり詰まっている。読むのはちょっと骨が折れるところがあるけれど,同時にどんどんページをめくりたくなって,知的興味がそそられる。
人工知能などの科学の話から社会・文化の話まで論じられている領域の広さに驚かされ,しかも各章のなかに散りばめられていて,全体としても美しい。
それでいて何よりも個人的に前々から気になっていたトピックが華麗に論じられていて,そうだったのかと腑に落ちるとともに,感動した。
一言で言えば,過去でも未来でもない,「今を生きる」っていうことに尽きるけれど,特に感じたことは次のとおり。
◆自由と婚活
正直,恋愛感情を抱けていないで生きてきている。友達で話す好きな子の話とかもあまり好きではなかった。まさに恋愛ができない自分にとっては,恋愛は抑圧でしかなかった。なかなか言い出せなかったんだけどそれを書いてくれていて,そのとおりと嬉しく感じた。
そんな僕も婚活を始めた。といっても,数年やっていて正直上手くいってない。相手の方を自分からお断りすることもあるけれど,多くは断れれている。結婚は必須ではない時代だけれども,しようと思ってできないのが続くと,周りで上手くいっているという話を聞けば聞くほど,自分が人間的に欠陥があるのではないかと思ってしまう。だけどそれは,「因果の物語」に縛られている考え方。「確率の物語」「べき乗の物語」という考え方は楽というか救いになる。
自分のことを棚に上げていてば,婚活は何らかの方法で紹介された人と恋愛しないとゴールできないと思い込んでいる(最初ゲームと書こうと思ったけど訂正した)。
そして問題は結婚相談所や婚活アプリといったネットワークが広がり,ガチャのように,新たな人が紹介される(または見つけられる)ので,目の前の人が果たして理想の人なのかの判断が難しくなってしまった。先に,「確率の物語」「べき乗の物語」という考え方は救いと書いたけれど,一方で次にもっといい人と会えるかもしれない,という誘惑も拭えない。実際,結婚相談所のアドバイザーの人にどうすればいいかと聞いたら,もっとたくさんの人に会うことを薦められた。それが結婚相談所のビジネスモデルだから仕方ない部分もあるけれど。それはさておき,そう思っているうちに目の前のそこそこの人を断り,時間ばかりが経っていき,泥沼にはまっていく。
ちなみに,恋愛が「べき乗の物語」という前提に立ったとき,恋愛と結婚を切り離すと,そこには猛烈な恋愛格差が生まれることになる。つまり,子どもは増えるかもしれないが,父親の数は間違いなく減るだろう。それは結婚を放棄しない恋愛弱者からすると地獄絵図でしかない(経済格差には敏感な人にこの発想が多いことに驚く)。
ちょっと婚活疲れしている自分には,「確率の物語」「べき乗の物語」から脱して,AIが選んだ人と関係を気づきあげていく方が合っているような気がする。と思っていたら,参加したとあるセミナーで,理想という正解を無意識に叩き込めば,どうやって叶うかは考えなくていいというと教えてくれた。まさに「機械の物語」的な発想だった。
◆物語<ストーリー>ゲームの発展と没落
以前,ゲームが与える影響に対しては,登場人物の性格とプレイヤーの性格の差異がヒントになるのではないか,と思っていた(大学の卒論のテーマもこれで書いた)。
本書の表現を借りれば,「持続させるためには、自分ごと化が必要」(p415)ということなんだけど,そのためのツールが物語の中で語られた内容から読み取れる性格という要素であったということだ。
いわゆるJRPGの可能性を考えていたんだけど,ゲームが備えているインタラクティブ性から多重プロット(p367)やナラティブ(p415)の方向性も模索しながら,
ゲームは「因果の物語」を捨てなガチャ的なゲーム(まさに「確率の物語」)が結局主流になっていく。そうなってくると,最後に残るのは海外で主流のMMORPGということになるのか。
まあ,これは人生の話であって,物語そのものが無くなるというわけではないはず。小説や映画は無くならないのだろうけれど,JRPGはMDのように無くなってしまいそうな気も。
最近はゲームをする時間を確保できていないし。ここは過去は色褪せなくなるというところを信じたい。
Posted by ブクログ
『時間とテクノロジー』を読んで
ABEMAプライムで準レギュラーとして出演している佐々木氏に以前から興味があり、番組のテロップでこの本が紹介されていたのをきっかけに手に取りました。
本書では、最新テクノロジー(AIなど)と「時間」という概念の関係について多角的に論じられており、非常に示唆に富んでいました。特に第2章で紹介されていた、「過去・現在・未来」という時間概念を持たない少数民族アモンダワ族 の話は大変興味深く、時間というものが文化的に構築された概念であることを強く実感しました。
また、佐々木氏が幅広い分野を横断して議論を展開する博識ぶりにも感嘆しました。
一方で、終章で提示される「因果の物語」から「共時の物語」への転換というテーマについては、「因果の物語」が今後通用しにくくなるという主張は理解できたものの、「共時の物語」という新たな枠組みの理解には少し難しさが残りました。
それでも、本書を通じて佐々木氏の思考の幅広さと洞察の深さに強く惹かれ、今後も彼の著作を積極的に読んでいきたいと思い
Posted by ブクログ
ここ30年くらいの電子機器の進化とそれがもたらした人間の時間の捉え方の変化、社会の変化についてまとめてある本。映画や音楽、SF、アニメについても交えて書いてあるのでサラッと読めた。
インターネットと自分との関わり方をみつめ直すいい機会になった。あまり考えすぎるのもよくないのでたまにはスマホの電源をオフにして散歩に行こうと思った。
以下、ネタバレを含む詳しい感想。
・デジタルは場所をとらず劣化もしないので便利だが、本当に好きなものはある程度、物理的に持っておいた方がいいと思った。
・記憶が一貫しているというのがその人であるという考え方のことを経験主義というと知った。先日読んだ『クララとお日さま』にも通じるものだと思った。
・高度な思考をするためには抽象化が必要。抽象化のためには忘れることが必要。色あせない記憶は抽象化できないのでむしろやっかいなのだそうだ。忘れることを恐れないようにしよう。
・ポナンザの開発者曰く「知能=画像」かもしれないとのこと。記憶力のチャンピオンも頭のなかに画像を思い浮かべているというのをきいたことがあるし、イメージすることを大切にしよう。
・「人は目的のために生きているのではなく、今生きているから生きるのだ。」
・SNSでは過去は消えないものになりつつあるので、どんな言葉もネット上にあげた時点で他者と繋がっているということを忘れてはいけない。SNSは壁打ちではないし、そこには壁ではなく生身の人間がいる。生身の人間に言えないことはSNS上でも言うべきではない。当たり前だけど忘れてはいけないこと。