【感想・ネタバレ】時間とテクノロジーのレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年05月13日

端正な構成。好き。博覧強記、みたいな天才のものする読み物ではなくて、ひとつのメッセージに向かって取材と整理とをしていく、丁寧な論稿という感じ。『レイヤー化する世界』のときからさらに深く、厚く、かつ「実用的」になった。ハラリは最後に瞑想に言及したことを思い出した。

メモ

アメリカでの竹内まりや等の...続きを読むヒット ヴェイパーウェイヴ。ノスタルジー。

デジタルコラージュの寄せ集めによる美化できない過去

ゴンドワナ神話とローラシア神話

ジュリアン・ジェインズ 二分心
神なき時代に編む、根深いノスタルジアとしての物語

「べきの物語」はつねに臨界状態へと自然に進んでいき、わずかな力の変化・摂動により小さく崩れたり全面崩壊したりする。つねに安定と臨海を揺れ動いているのが自然の姿。

日立・矢野和男のチームがAI「H」で店舗内施策で「高感度スポットを見つけ出す。店内のある場所にスタッフが「いる」ようにすると客単価が上がる。理由は分からないが答えは合っている、「機械の物語」。

知性:答えが得られないとわかっていても問い続ける能力

ポスト・トゥルース(脱真実):世論の形成において、客観的事実よりも感情的、個人的な意見のほうが強い影響力をもつ状況

「因果の物語」から一歩外へ踏み出し、「確率の物語」「べきの物語」「機械の物語」を自分ごとの世界観の恥部として、改めて引き受けなければらないのではないか。それを支えるものは情報通信テクノロジー。テクノロジーは過去への思いを破壊し、時系列に沿った因果関係に囚われている私たちを解き放ってしまう可能性を秘めている。

回線・機器・情報・人工知能による分析が一体となった環境こそが情報通信テクノロジーの本質。すべてが一体になっているコンピュータの環境:環境知能。

摩擦感覚、空間感覚、偏在感覚が重なった先にある、今この瞬間の世界につなぎとめられているという感覚。環境知性による世界への「なめらかな没入」へとテクノロジーがアップデートされた世界認識をもつ。

”多重プロットの群像劇は「混沌の俯瞰」という世界との「摩擦」を描き、たくさんの登場人物が重層的に登場する「偏在」の感覚を持ち、そして短いタイムスパンによってその瞬間の世界のありようを「空間」的に描いている”

当事者の目線を持ち、しかし時系列とは無縁なオートポイエーシスの世界は因果の呪縛から解き放たれる突破口になりうるのではないか。上記3つの感覚をオートポイエーシス的な概念で貫いていくことでこの瞬間の世界につなぎとめられ、持続的につながっていく。

ナラティブは書き手だけでなく受けとった側も自分自身の物語として引き受けることができる。今この瞬間という感覚を内包している。過去の物語ではなく、自分自身がつくっている現在進行系の物語。

「共時の物語」が復活。時系列の感覚が薄れ、テクノロジーによって摩擦・空間・偏在の感覚が深化する。この瞬間を共有する様々な人々や、機械・仮想の世界とも相互に作用させていく行動によってのみ、私たちの人生は持続し、駆動し続ける。自由というものの意味の変容。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年02月24日

見た目にはしっかり分厚い本で,中身もぎっしり詰まっている。読むのはちょっと骨が折れるところがあるけれど,同時にどんどんページをめくりたくなって,知的興味がそそられる。
人工知能などの科学の話から社会・文化の話まで論じられている領域の広さに驚かされ,しかも各章のなかに散りばめられていて,全体としても美...続きを読むしい。
それでいて何よりも個人的に前々から気になっていたトピックが華麗に論じられていて,そうだったのかと腑に落ちるとともに,感動した。
一言で言えば,過去でも未来でもない,「今を生きる」っていうことに尽きるけれど,特に感じたことは次のとおり。

◆自由と婚活
正直,恋愛感情を抱けていないで生きてきている。友達で話す好きな子の話とかもあまり好きではなかった。まさに恋愛ができない自分にとっては,恋愛は抑圧でしかなかった。なかなか言い出せなかったんだけどそれを書いてくれていて,そのとおりと嬉しく感じた。

そんな僕も婚活を始めた。といっても,数年やっていて正直上手くいってない。相手の方を自分からお断りすることもあるけれど,多くは断れれている。結婚は必須ではない時代だけれども,しようと思ってできないのが続くと,周りで上手くいっているという話を聞けば聞くほど,自分が人間的に欠陥があるのではないかと思ってしまう。だけどそれは,「因果の物語」に縛られている考え方。「確率の物語」「べき乗の物語」という考え方は楽というか救いになる。

自分のことを棚に上げていてば,婚活は何らかの方法で紹介された人と恋愛しないとゴールできないと思い込んでいる(最初ゲームと書こうと思ったけど訂正した)。
そして問題は結婚相談所や婚活アプリといったネットワークが広がり,ガチャのように,新たな人が紹介される(または見つけられる)ので,目の前の人が果たして理想の人なのかの判断が難しくなってしまった。先に,「確率の物語」「べき乗の物語」という考え方は救いと書いたけれど,一方で次にもっといい人と会えるかもしれない,という誘惑も拭えない。実際,結婚相談所のアドバイザーの人にどうすればいいかと聞いたら,もっとたくさんの人に会うことを薦められた。それが結婚相談所のビジネスモデルだから仕方ない部分もあるけれど。それはさておき,そう思っているうちに目の前のそこそこの人を断り,時間ばかりが経っていき,泥沼にはまっていく。

ちなみに,恋愛が「べき乗の物語」という前提に立ったとき,恋愛と結婚を切り離すと,そこには猛烈な恋愛格差が生まれることになる。つまり,子どもは増えるかもしれないが,父親の数は間違いなく減るだろう。それは結婚を放棄しない恋愛弱者からすると地獄絵図でしかない(経済格差には敏感な人にこの発想が多いことに驚く)。

ちょっと婚活疲れしている自分には,「確率の物語」「べき乗の物語」から脱して,AIが選んだ人と関係を気づきあげていく方が合っているような気がする。と思っていたら,参加したとあるセミナーで,理想という正解を無意識に叩き込めば,どうやって叶うかは考えなくていいというと教えてくれた。まさに「機械の物語」的な発想だった。


◆物語<ストーリー>ゲームの発展と没落
以前,ゲームが与える影響に対しては,登場人物の性格とプレイヤーの性格の差異がヒントになるのではないか,と思っていた(大学の卒論のテーマもこれで書いた)。
本書の表現を借りれば,「持続させるためには、自分ごと化が必要」(p415)ということなんだけど,そのためのツールが物語の中で語られた内容から読み取れる性格という要素であったということだ。
いわゆるJRPGの可能性を考えていたんだけど,ゲームが備えているインタラクティブ性から多重プロット(p367)やナラティブ(p415)の方向性も模索しながら,
ゲームは「因果の物語」を捨てなガチャ的なゲーム(まさに「確率の物語」)が結局主流になっていく。そうなってくると,最後に残るのは海外で主流のMMORPGということになるのか。
まあ,これは人生の話であって,物語そのものが無くなるというわけではないはず。小説や映画は無くならないのだろうけれど,JRPGはMDのように無くなってしまいそうな気も。
最近はゲームをする時間を確保できていないし。ここは過去は色褪せなくなるというところを信じたい。

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Posted by ブクログ 2020年05月03日

私たちを取り巻くテクノロジーの変化によって、私たちの「時間」の捉え方は明らかに変容している、という話。

印象的なエピソードとして挙げられているのは、スピーカーから流れてきた70年台のプログレッシブロックについて父が「当時はこういった音楽も、受け入れられるのに時間がかかったんだ」というと、小さな娘が...続きを読む「ということは、この曲は古いの?」と問いかける一幕。

あるいは、永遠に残り続けるネット空間に残されたデジタルフットプリント。データは古びることなく、その人の思考の変遷や社会的立場、あるいは犯罪歴に至るまで忘却が許されない。

「古い」「過去」という価値観や体験は、すでにある種のあざとさを持ったUI/UXとして提示されないと、気づかれないし体験されない価値になってきた。私たちはノイズ(時代性)の取り除かれたデジタルコンテンツを、まるで池から水をすくいとって飲むように消費するようになったので。

はたして一方向に進んでいく、線形の時間軸のモデルをこれからも持ち続けていくことができるのか?あるいは持ち続けていく必要があるのか?という問いと、時代の連続性が希薄になっていく中で、私たちは自己同一性を、あるいは生きている意味をどうやって担保するのか。あるいはそれを担保する必要があるのか?という問い。

いずれも答えることはとても難しいのだが、変容していく人間の意識と社会を俯瞰して捉えておくことは、単純におもしろい。決して全ては同じ場所にあり続けるわけではない。

禅問答のような本。でも僕はこういう「答えがなくてもいいという答え」にふれることで、結構安心できる。

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「私たちは自分の自己意識をとても大切なものと考えていて、自己意識こそが自分をコントロールし、身体の行動や脳の思考に命令を下しているのだと考えています。しかしオートポイエーシス的な視座で人間の心を捉えると、心のシステムは作動することによって初めて自己意識が生み出されているのです。つまり主体は自己意識ではなく、意識や思考、行動などを生みだしている脳の神経細胞のシステムそのものであるということ。

つまり、私たちの自己意識が主体なのではありません。思考が思考を、思考が行動を、行動が思考を、あるいは思考が自己意識を、行動が自己意識を、とさまざまな要素を生み出し続けるその「過程」のシステムこそが、私たちの主体であり、人間の本質だと言い換えることができるでしょう」p.410

「アニメ『GOHST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編『イノセンス』。この映画の終わり近くで、主人公草薙素子はブッダの言葉を口にします。

「孤独に歩め。悪をなさず、求めるところは少なく、林の中を象のように」

もしよい同伴者が作ることができなかったら、一人で歩いた方がいい。愚かな人を道連れにするくらいなら、森林に歩みを進めているゾウのように孤独に歩く方がいい。しかし彼女はそうやって孤独への決意を口にしながらも、懐かしい同僚バトーにこう伝えるのです。

「バトー、忘れないで。あなたがネットにアクセスするとき、私は必ずあなたのそばにいる」

森林の中を孤独に歩くゾウであっても、そのゾウは一人ではない。そこには孤独な道を歩くものたちの親密さがあり、ひっそりとともに歩いて行こうという共感があるのです」p.430

時間とテクノロジー

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Posted by ブクログ 2020年03月10日

哲学と科学の間という感じだろうか。

「未来は前方にあり、過去は後方にある」は絶対的な真理ではない。
過去は既に終わったことだから目に見えるが、未来はまだ起きてないから見えない。
だから過去は顔を向けている前方にあり、未来は背中にある。
すなわち、Back to the Future。
上手いし、な...続きを読むるほどなだし。

序盤の掴みから、テクノロジーと文化を行き来しながら、因果と共時を論じる。

ちょっと個人的に咀嚼できないというか、難解な部分もあるので、何回か読んで理解していきたい一冊。

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Posted by ブクログ 2020年01月19日

テクノロジーが直線的な時間によって因果を司る物語を無効化し、新たな人間哲学として共時の物語に突入しつつある今を描いた一冊。分量が20万字と厚めですが、文学から映画まで幅広く渉猟されており、サラりと読める。

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Posted by ブクログ 2020年01月03日

時間の概念は無くなる、物語は機械によって作られる、今までの法則が使えなくなる。。テクノロジーの発達によって・・今からの時代に、人間は如何あるべきかを考えされられる一冊でした✋

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年03月21日

 世界の理解を根本から覆す本である。
 マインドフルネスにも通じる「私たちは生きているからこそ生きているのであって、そこには過去も未来も現在もなく、「生きよう」と思った瞬間に「生」はただ立ち上がるのだという直感的な認識なのではないだろうか。」がこの本のハイライト。
 ユークリッド幾何学やニュートン力...続きを読む学において時間の存在は疑いようがなく因果としてそれを理解している。一方、量子物理学は確率で示され因果が成り立たない。(例えば「シュレーディンガーの猫」)

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Posted by ブクログ 2020年01月28日

自分には哲学的でちょっと難しかった。
佐々木さんの集大成ともいえる本なんだろうけれど、
気合も入っている分、難解で中々、全体感が入ってこない。

でも、部分部分では理解できるところもあり、
中にはとても興味深い記述もあった。

中でも、基本的なテクノロジーのロジックの説明(機械の物語)と
自由につい...続きを読むても著者の考えについては、
とても興味深かった。

もう少し、テクノロジーに対する感度を上げていけば、
佐々木さんの主張も理解できるのかもしれないなぁ。。

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