あらすじ
生類憐みの令によって「犬公方」の悪名が今に語り継がれる五代将軍・徳川綱吉。その真の人間像、将軍夫妻の覚悟と煩悶に迫る。民を「政の本」とし、泰平の世を実現せんと改革を断行。抵抗勢力を一掃、生きとし生けるものの命を尊重せよと天下に号令するも、諸藩の紛争に赤穂浪士の討ち入り、大地震と困難が押し寄せ、そして富士山が噴火――。歴史上の人物を鮮烈に描いた、瞠目の歴史長編小説。
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Posted by ブクログ
歴史というものは、人々が見たいものが積み重なり、出来上がるのかもしれない。
ここで描かれているのは、心ならずも将軍になってしまった男の生き様であろう。
戦国の世はすでに遠く、何を持って、この国を治めるのか、彼が出した答えに、家臣も民も理解が及ばない。
正室の信子だけが真意を理解して、その背を押す。
その繋がりが愛おしい。
最悪とは、最善を尽くしても、報われる事のない綱吉の墓碑銘なのかもしれない。
Posted by ブクログ
読む前から読者の読む気を削がすほどの悪評芬々の犬公方綱吉は子のない兄である4代将軍の後を継いで5代将軍となった。
綱吉は優れた政治を行ったにも関わらず、犬公方などと不名誉な名で歴史に残っている。生類憐れみの令というものが、権力者への恐れと忖度故に歪んだものとなったのか、そこのところもよくわからない。後世より「最悪」と「断罪」される将軍綱吉の光と影を見せてくれる。
Posted by ブクログ
学校で習った歴史上の人物で、その後大きく評価が変わったのが田沼意次とこの徳川綱吉だと思う。
人間より犬の方を大事にする法律を作った暗愚な将軍、と習いましたが、それは当時の江戸の庶民レベルの評価だったようです。
戦国時代はすでに過去のものとなり、太平の時代を迎えているはずなのに、武士の意識だけが変わらずにいる。
そんな世の中を変えようと、武よりも文(法律)で世の中を統べようとする綱吉。
しかし、世間はそんな綱吉の思いを一向に理解することはなかった。
学校で習ったのは暗愚な将軍。
その後、将軍になった当初は善政を布いたが、その後民衆を顧みることなく「生類憐みの令」を発して庶民を苦しめた、とした説も聞いたことがある。
けれど、この本に書かれる綱吉は最後まで誠実で、最後まで清廉で、最後まで公正だった。
堀田正俊や柳沢吉保のように、綱吉を理解し支えてくれる家臣がいなかったわけではない。
けれど、前将軍の直系ではなく、将軍就任直後の強権的な治世の方針転換に反発するものも多く、在位が長かったにもかかわらず逝去後にあっという間に綱吉の政策は撤回または停止となった。
つまり全然浸透していなかったということだ。
将軍として無能だったわけではないと思う。
しかし綱吉の時代、地震が頻発し、富士山が噴火するなどの自然災害が多発したというのは、当時、将軍の治世に問題があるからだとみられてしまったのはしょうがない。
にしても、だ。
元禄文化を謳歌できたのは、綱吉が太平の世を創り維持してきたからではないの?
確かに極端な政策は庶民を混乱させただろう。
命は等しく大事であるというのは理想だけど、人間と野良犬が飢えていたら、野良犬を見捨てるのはしょうがない、くらいの余裕がなかったのが敗因なのではないかとも思う。
だけど将軍と身近に接する幕臣たちの多くが、綱吉の政策を支持しなかった理由は、今後の研究をもう少し待ちたいと思う。
「我に邪無し」
最期にそう言ったのは、自身を誇っていたのか無念だったのか。
ほかの作家が綱吉を書いたら、また読んでみたいと思う、興味深い人物。
Posted by ブクログ
タイトルから通説の綱吉像が見られると思いきや
主人公に配慮した「理想の政治を想う将軍綱吉」
つまり民は国の本、を実践している・・・御台所
信子との穏やかな様が良い読後感になっている
Posted by ブクログ
2021/7/3
史実に基づいた話はあんまり好きじゃないのに、まかてさんだからつい手を出した。
切なくて悔しくてつらい。やるせない。
富士山まで噴火しなくてもええやん。意地悪やなぁ。
犬公方とか言ってごめんやで。
本人だけが賢くてもアカンねやな。
教育か。教育なのか。肝は。
でも無理じゃない?全員は無理じゃない?
しんどいです。
嘘でも真実味がなくてもいいからスカッとしたのが読みたいです。
異世界に逃避します。
綱吉様も異世界に生まれ変わって無双すればいい。
そんなことを思うくらいの落ち込み。
どう頑張っても尽くしてもうまくいかないのは現実味がありすぎてしんどいよ。