あらすじ
適応障害(職場のうつ)の原因は、外部環境のストレスです。
つらい時期を乗り越えるために、 知っておきたいこと。
過重労働、転勤、異動、パワハラ──。
背景にあるストレスはさまざまですが、いま適応障害は急増しています。
その数は、なんと100万人以上。
本書では、著者の30年にわたる臨床経験に基づき、読者の方々が薬に頼りすぎることなく、適応障害をセルフチェック・セルフコントロールするための考え方、方法をお伝えします。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
適応障害の概要や治療などについて一般向けに書かれた本。
適応障害となる背景や自己診断の方法、症状ごとの治療法や症状を悪化させないための思考の修正方法など具体的かつ分かりやすく記載されており、特に適応障害になりやすいタイプの思考のクセや対処法が参考になる。
適応障害にかかるとどうしてもマイナス思考に陥りがちになるが、本書で書かれているように、「まあ、しょうがない」と思考を断ち切ることを意識するようにしたい。また、職場でのストレス対処法もすぐに取り入れられるものが多いので、早速日頃の生活から取り入れてみたい。
【以下、概要】
日本人は元々勤勉(自己犠牲)、現状容認(問題があっても目を瞑る)、依存(当事者意識に乏しく他人任せ、自立心の欠如)の性質があるためストレスに弱い。
適応障害は、ストレス(外部要因)、考え方や感じ方など心理的要素(内部要因)、ストレス反応(時間要因、警告期、抵抗期、疲弊期)から成り立っている。外部要因と内部要因が、時間要因を軸により比率の高い方に傾く。その傾き方が適応障害の個人差。外部要因だけならすぐ回復するが、クヨクヨ考え込むなどストレス期間が長い人は症状が長引きやすい。外部要因や内部要因は自分自身が主治医となって治す意識が必要。
適応障害の自己診断として、睡眠、過重労働、対人関係、仕事の価値、が挙げられる。
睡眠
睡眠時間が6時間を下回ると発症リスクが高まる。
過重労働
精神的負荷がかかる業務や、残業が月45時間を超えると脳・心臓疾患の発症と相関性が高くなる(80時間以上だとさらに相関が高まる)
対人関係
下記の三つに分類される。
対人葛藤
部下や同僚との対立など衝突によるストレス
対人劣等
コミュニケーションスキル不足、ハラスメントなど劣等感を感じるストレス
対人摩耗
人間関係を円滑に進めようと気疲れするストレス
日本人は対人劣等及び対人摩耗をストレスに感じることが多い
仕事の価値
仕事に対して適性があるかの要素は、能力、性格、意欲に分けられる。
特に意欲について、創造する価値と貢献する価値に分けられる。
職場における価値と評価について、自分自身の価値を感じられる要素は、社内評価、成長、貢献感、達成感、報酬、に分けられる。
適応障害の内部要因(ストレスにどのように反応するか)について、主観型と客観型に分けられ、それぞれに外向型と内向型が存在する。
主観型
感情を主体的に受け止め、解決策を考える前に悩みの堂々巡りに至る。
客観型
感情より理性優先で解決への道筋を考えられる。
客観外交型
視野が広くストレス対処の選択肢を複数持てる。ガス抜きが自然にできる。
実存クライシスの人は、自分のやりたいことがわかっていない。解決策は、人生をプロジェクトと捉え直し、年代に区切ってマネジメントすること。その際、欲求ではなくやるのだという選択で決める。決めたら計画を立てる、その実現に向けて行動すること。これは選択とと決断の作業であり、決断とは何かを捨て去ること。
また、自分にとって仕事とは目的なのか手段なのか、二択で意味付けする。手段の場合は他に生きがいを持つ。
ストレス対処能力の克服について
主観型から客観型に思考を変えていくことが効果的。どうしようと思うのではなく、こうしようと具体的な対応策を考えるようにする。
次に、認知の歪みを矯正する。認知の歪みは、完璧主義、低い自己評価、マイナス思考などが挙げられる。認知の歪みは繰り返し想起されることで強化されるため、自己洗脳されないよう、その都度修正した思考を実生活の中で繰り返し運用することが大切。修正した思考を、繰り返し使っていく。
前向きになるために
①前向きになることを妨げているものを修正する
プチ転地(座席の移動など)、別世界に身を置く(普段行かない場所、環境)、身体的負荷をかける(運動)、もう一人の自分(レフェリーのイメージ)を使って自分を監視する
心を強くする魔法の言葉
クヨクヨ考え込む思考の連鎖を断ち切る
よくあることだ、まあいいか、まあしょうがないと思う。
②前向きになるために足りないものを補う
睡眠リズムを整える、便通を良くする、食事の規則性を守る
自宅安静の過ごし方
思い切って長期間(理想は3ヶ月)休む。
ダラダラ期、活動期、復職期の三期に分けて考える。
ダラダラ期
ひたすら何もしない。ダラダラ過ごす。
活動期
快を得る。好きなことをする。嘘でも良いから大袈裟に感動してみると、感受性が磨かれて本当に感動するようになる。
運動する。ジョギングや水泳など。
いかに再発させないかを考える。外部環境(降りかかってきたストレスそのもの)そのものが問題だったのか、自分自身のストレス対処に問題があったのかを見極める。特に活動期は自身のストレス対処に焦点を当てる。多くの場合は性格に付随した行動パターンの修正となる。
復職期
働きたいという欲求があるかが重要。
仕事の時間に起きて出勤訓練をしてみる。
外部環境を調整する。時短勤務は必ず取り入れてもらう。産業医が復職後の勤務スケジュールなどの作成に携わる。
復職直前の不安が最大となる。復職前はこんなものだと認識して、こうしよう思考に切り替える。仕事のハードルも自分であげない。
復職者としていかに振る舞うか
適応障害は再発率が高い。その理由は、復職者の心理的な要因が大きい。心理的な壁と対処法は以下のとおり。
・長欠感情の壁(劣等感、孤立感、罪悪感)→周囲のようにできなくて当然と割り切る
・職場滞在の壁(時間を持て余し貢献できてない、存在価値がないと思う)→周囲と比較せずじっくり耐える、自分のペースでやるよう客観的に自分を見る
・パフォーマンス回復の壁(復職者自身が本来の力が出せていないと負い目を感じる、周囲の評価とのずれを感じる)→カウンセラーや医師との面談などを通じて相談し対処する
組織より自分が上に立つ、自分が存在価値を感じられるようになるツールとして組織を利用する。何より自分を大切にする。
Posted by ブクログ
適応障害の発症要因や、早期発見の兆候、治療方法について、とてもわかりやすく、論理的に書かれた本です。
また、未然に防ぐ方法(セルフケア)や、部下や同僚が発症した際の手引きについても書かれているので、病気とは関係ないと思っている人にも是非手に取って欲しい本です。
Posted by ブクログ
職場のストレスについて細かい分析がいい。
仕事の量、質
対人関係が上位を占める。
心理ゲームに陥らないためには
違う行動パターンをとる。
反撃にあうと防衛本能から攻撃の手を
ゆるめる傾向がある、強い人ではない。
認知の歪みや行動療法など色々あるが
ある程度になると医師の受診が必要。
この本はわかりやすい。
Posted by ブクログ
適応障害が再発しそうな兆候が出てきたので読んだ本。
以前、病院にかかった時は薬によって治療したが、外部要因(環境)と内部要因(性格や考え方)に変化が必要だったことを理解できました。特に性格や、物事の受け止め方に関する話に興味を引かれた。
本の中では、性格をいくつかのカテゴリーに分類しており、その中で私は「主観-内向型」に属することが分かりました。「深刻にストレスを受け止め、ネガティブ思考に陥るタイプ」…まさに、その通りでした。このネガティブ思考に振り回されてきた気がする。
しかし、今までの人生で築いてきた思い込みが、そのように物事を重く受け止めすぎる思考を作ってきたのだ、ということを自覚できたのは嬉しかったです。自分が自分で課してきた考えによって、ネガティブな振る舞いが起きてしまうなら、私の考え次第一つで如何様にでも変われると思いました。今までネガティブすぎる思考と付き合うことが多かったので、今後は楽天家の自分を育てていきたいです。
ヘレン・ケラーやアドラーの「人間は自分の思うような人間になる」という言葉の意味が、飲み込めるきっかけになりました。
Posted by ブクログ
■ストレッサー(ストレスの原因)に直面したとき脳内で最初に行われることは,いつ,どこで,誰が,どうしたといった事実関係の認識で主に前頭葉が担っておりここではさほど個人差は生じない。その認識にあなたなりの意味を付与する次の段階,認知の構築となると前頭葉に加え,感情を司る大脳辺縁系,記憶中枢など,複数の脳の領域が介入してそのアウトプットは人により千差万別となる。その多様な認知の在り方には個人により一定の傾向があり客観型と主観型に分けることができる。
・客観型は事実関係を理路整然と捉え,感情よりも理性優位で解決への道筋を比較的容易に立てられる
・主観型は「つらい」「いやだ」など感情を主体に受け止め,また解決策を模索する以前に「どうしよう」「困った」など悩みの堂々巡りに陥りなかなか解決に至らない
・さらに客観型,主観型のそれぞれに外向型と内向型が存在する
・客観・外向型は視野が広くストレス対処の選択肢を複数持つことができる
・客観・内向型は物事を捉える視野が狭く,自己の理想や責任感に没入する。生真面目で完璧主義,実直に仕事をこなすが許容範囲を超えると途端に対処の仕方が途端に分からなくなる傾向がある
・主観・外向型はストレッサーを楽天的に受け止めるタイプで,そもそも深く思い悩むことがなくストレスを溜め込まない
・主観・内向型は必要以上に深刻にストレッサーを受け止め,ネガティブ志向に陥るタイプ。適応障害に最も多いタイプ
■適応障害に罹りやすいものとして「執着性格」「タイプA」「循環気質」「回避性性格」などが挙げられる
・執着性格は,堅実で几帳面,完璧主義,頼まれると断れないといった性質を特徴とする。自信の中の秩序がいったん崩壊してしまうと立て直すのが難しいという特徴も持っている
・タイプAは,せっかち,怒りっぽい,競争心が強い,積極的,野心的,早口,多動などを特徴とする。向上心が強く,社会的な成功は得やすい反面,感情的になりやすく人間関係のトラブルを抱えがち。強い向上心と積極性,野心の原動力になっているのは「強さ」ではなくむしろ逆で自尊心が傷付けられることへの極度の危機感,自己防衛であることがほとんど
・循環気質は,体調や精神状態が特に誘因もなく浮き沈みする。日本人に多いとされ全人口の二割を占める。循環気質の意欲の源泉は他者からの評価。決して自信満々なのではなく周囲,特に上司や同僚から認められたい気持ちが強くまたその延長として過大な自己評価をする
・回避性性格はとにかく傷付くことを恐れる。まっとうな注意に対しても自分の存在を否定されたかのようなダメージを味わう上,それがいつまでも尾を引く。失敗や恥をかきたくないため,チャレンジしようとしない
・回避性性格には二通りの心性が存在する。一つは逃げることを容認し,よりストレスの少ない方向へと自ら進んでいくタイプ。二つ目は楽なポジションに逃げていることを認めたがらないタイプ。失敗や恥をかくことを極度に恐れ仕事のスキルの低いことさえ受け入れられない。二つのタイプに共通するのが自己評価の低さ。そのため言葉に容易に傷付き積み重なるとそれが増幅し抑うつ状態に陥る
■(疲弊期について)興味深いのは3という数字が節目になっていること。3分,3時間,3か月,3年と3という数字を軸に疲弊期はやってくる。
■適応障害はストレス(外部要因),感じ方や考え方という心理的要素(内部要因),3段階のストレス反応(時間要因)という3つの要素から成り立っている。
■職場にはストレスが必ずあり消し去ることはできない。また,消し去る必要もない。なぜなら,職場のストレスには,心身の健康を圧迫するというネガティブな側面もあれば,逆に乗り越えることで葛藤対処能力を高めてくれるというポジティブな面もあるから。
■(例えば虹を見て)「感動」する認識の形成は,
視覚情報→感情中枢→認識→感動①
↓
言語中枢→再認識→感動②
という二段階で形成される。
・つまり,虹という視覚情報が感情中枢の「きれい」という概念に直結し「きれい」問認識に至る①と,その認識によって「わぁ,きれいだな」などと言語化が起こり,その言語を再度脳が認識して「きれい」という再認識に至る②がある。②が①を強化する形で感動が大きくなっていく。
■復職に立ちはだかる3つの壁
①長欠感情の壁
・職場から長期間離れていたことによる不安で業務そのものよりも上司や同僚など人に対して抱かれるもの
・長欠感情には周りは頑張っているのに自分だけできないといった「劣等感」,誰も声をかけてくれない,腫れ物に触るように扱われるといった「孤立感」,力になっていなくて申し訳ないといった「罪悪感」の三つがある
②職場滞在の壁
・時間を持て余すことになり周りを見渡しては「自分は貢献できていない」「存在価値がない」「不甲斐ない」などとネガティブな感情に苛まれること
③パフォーマンス回復の壁
・周りからは以前と同じパフォーマンスを回復したように見えていても,復職者の内心では長く休んでいた負い目から無理をしていたり,頑張ってはいるけれど本来の力が出し切れていないと感じている「ずれ」
■人間は自分の存在の意味や価値といったものを考える生き物でありそれが驚かされると心を病んでしまう。
■組織と個人では自らの要求するものが相反しているといえる。適応障害はまさにこのギャップの中に生まれる病である。
■組織の駒としての自分が過ぎると自信の存在の意味や価値が希薄になる。一方,個としての存在価値にあまりに重きを置いてしまうと組織にいることさえできなくなる。組織人として組織の中にい続けるなら両者のバランスをとることが不可欠になる。
・理想は組織の一部として機能しながら,なおかつ,かけがえのない自分の価値を感じられるということ
・組織と自分のどちらがより大切かという比較に置き換えると多くの人が自分と答えるが,それでよい
・組織に属しながら個としての存在価値を見失わない秘訣は何より自分を大切に考えること
・自分を大切にするとは,家族を,友人を,恋人を大切にすることでもある。大切な人たちを組織は大切にはしてくれない。大切な人たちを守れるのはあなただけ
・組織に利用される駒よりも,組織を利用する個になるべき。組織は利己的な生き物であなたの幸せを第一義的には考えてくれない。組織が考えることは利益
・あなたは組織を利用してください。あなた自身があなたの存在価値を感じられる活動をした結果が組織にとってのベネフィットになる関係が理想
・あくまであなた自身が上位にあり,組織は下位である関係が維持できている限り,あなたが適応障害に罹ることはない
・何よりも自分を大切にすること
適応障害について
現在私は病気で会社を休んでおります。
病気はうつ病です。ただ、この本を読んでいますと私は適応障害なのかとも思いました。
この本をもっと早く見つけて読むことが出来れば、私は病気にならなかったかもしれないし、あるいはもっと軽症で済んだかもしれませんでした。本当に為になる、非常に良い本でした。
ぜひ色んな方に読んでほしいです。
Posted by ブクログ
【内容紹介】
過重労働、転勤、異動、パワハラ──。背景にあるストレスはさまざまですが、いま適応障害は急増しています。その数は、なんと100万人以上。本書では、著者の30年にわたる臨床経験に基づき、読者の方々が薬に頼りすぎることなく、適応障害をセルフチェック・セルフコントロールするための考え方、方法をお伝えします。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
事前予防に始まり、罹患してしまった場合の職場での対応方法、病院との関わり、復帰に向けた休養、復帰後の振る舞いまで、総合的に書いてある本です。淡々と事実と知見が書かれているため、時折「ちょっと言い方キツいな」と感じることもありましたが、逆に言うと、まいっているときはそれだけ客観的に状況が見れていないのかも、と気づかせてくれる一面もあります。ただ「思い詰めないで」と言うだけの本より、イメージが湧かない脱出のことまでキッチリ書いてある本書から学べることは多かったと思います。
Posted by ブクログ
適応障害になりやすい状況、適応障害になった場合(自分にしても、他の職員にしても)の対処方法がわかりやすく書かれていて理解が得られた。特に適応障害になりやすい気質と感情のコントロール不良、休職が必要な状態や休職した時の過ごし方、復職の際の注意点については、勉強になった。
Posted by ブクログ
すごくピンときた言葉は、過剰なストレスに立ち向かうために戦闘モードになっているが、戦闘モードは長続きせず、抵抗できなくなったタイミングで適応障害になるということ。現状と、自分が思っている状況の差を埋めるために、現状を変えるべく、焦りまくっている状態は、たしかに「戦闘モード」になっている。職場で孤立すると、ますます自分を追い込んでしまうことになるので、リモートワークならなおさら、「話せる誰か」を早く見つけるのが良さそう。自宅安静の過ごし方として、最低1ヶ月、理想的には3ヶ月休む必要がある、そして最初の1ヶ月のダラダラ期には、復職や転職について考えないようにと書かれているけれど、現実問題そういうわけにもいかない場合ってあるよね。復職する場合、周りが気をつけるべきこと(頻繁な声かけ、体調への気遣いと理解・業務負荷への考慮・よく話を聞く・再発の兆候の監視・ストレスの配慮)が書かれているけれど、これができる職場だったら、そもそも適応障害にならないんじゃないかとも思う。
Posted by ブクログ
日本人の特徴として依存心が高く、当事者意識が低い。自立心を育てるために先見性、実行力、勇気などを育てる必要がある。顔に不調は出るので自分で確認するようにする。ストレスと対峙し、成長機会とする。逃避もいいが、うまくいかないのが当然と思いながら次に活かすようなアクションも大事。
Posted by ブクログ
適応障害に苦しむ人は、その人しかわからない苦しみがあるでしょう。
仕事をしているのだから、会社からケアがあっても当然だと考えることが大切です。
もっと個人を大切にしてもらわないと。
Posted by ブクログ
薬飲んでても治らない セルフケア、セルフコントロールをこの本でも伝えてる。
薬を飲んでまで合わない環境に行き続けるのは、即座に辞めるべきってことだよね
適応障害というより、2次障害でてるケース紹介してる気もする。