適応障害の概要や治療などについて一般向けに書かれた本。
適応障害となる背景や自己診断の方法、症状ごとの治療法や症状を悪化させないための思考の修正方法など具体的かつ分かりやすく記載されており、特に適応障害になりやすいタイプの思考のクセや対処法が参考になる。
適応障害にかかるとどうしてもマイナス思考に陥りがちになるが、本書で書かれているように、「まあ、しょうがない」と思考を断ち切ることを意識するようにしたい。また、職場でのストレス対処法もすぐに取り入れられるものが多いので、早速日頃の生活から取り入れてみたい。
【以下、概要】
日本人は元々勤勉(自己犠牲)、現状容認(問題があっても目を瞑る)、依存(当事者意識に乏しく他人任せ、自立心の欠如)の性質があるためストレスに弱い。
適応障害は、ストレス(外部要因)、考え方や感じ方など心理的要素(内部要因)、ストレス反応(時間要因、警告期、抵抗期、疲弊期)から成り立っている。外部要因と内部要因が、時間要因を軸により比率の高い方に傾く。その傾き方が適応障害の個人差。外部要因だけならすぐ回復するが、クヨクヨ考え込むなどストレス期間が長い人は症状が長引きやすい。外部要因や内部要因は自分自身が主治医となって治す意識が必要。
適応障害の自己診断として、睡眠、過重労働、対人関係、仕事の価値、が挙げられる。
睡眠
睡眠時間が6時間を下回ると発症リスクが高まる。
過重労働
精神的負荷がかかる業務や、残業が月45時間を超えると脳・心臓疾患の発症と相関性が高くなる(80時間以上だとさらに相関が高まる)
対人関係
下記の三つに分類される。
対人葛藤
部下や同僚との対立など衝突によるストレス
対人劣等
コミュニケーションスキル不足、ハラスメントなど劣等感を感じるストレス
対人摩耗
人間関係を円滑に進めようと気疲れするストレス
日本人は対人劣等及び対人摩耗をストレスに感じることが多い
仕事の価値
仕事に対して適性があるかの要素は、能力、性格、意欲に分けられる。
特に意欲について、創造する価値と貢献する価値に分けられる。
職場における価値と評価について、自分自身の価値を感じられる要素は、社内評価、成長、貢献感、達成感、報酬、に分けられる。
適応障害の内部要因(ストレスにどのように反応するか)について、主観型と客観型に分けられ、それぞれに外向型と内向型が存在する。
主観型
感情を主体的に受け止め、解決策を考える前に悩みの堂々巡りに至る。
客観型
感情より理性優先で解決への道筋を考えられる。
客観外交型
視野が広くストレス対処の選択肢を複数持てる。ガス抜きが自然にできる。
実存クライシスの人は、自分のやりたいことがわかっていない。解決策は、人生をプロジェクトと捉え直し、年代に区切ってマネジメントすること。その際、欲求ではなくやるのだという選択で決める。決めたら計画を立てる、その実現に向けて行動すること。これは選択とと決断の作業であり、決断とは何かを捨て去ること。
また、自分にとって仕事とは目的なのか手段なのか、二択で意味付けする。手段の場合は他に生きがいを持つ。
ストレス対処能力の克服について
主観型から客観型に思考を変えていくことが効果的。どうしようと思うのではなく、こうしようと具体的な対応策を考えるようにする。
次に、認知の歪みを矯正する。認知の歪みは、完璧主義、低い自己評価、マイナス思考などが挙げられる。認知の歪みは繰り返し想起されることで強化されるため、自己洗脳されないよう、その都度修正した思考を実生活の中で繰り返し運用することが大切。修正した思考を、繰り返し使っていく。
前向きになるために
①前向きになることを妨げているものを修正する
プチ転地(座席の移動など)、別世界に身を置く(普段行かない場所、環境)、身体的負荷をかける(運動)、もう一人の自分(レフェリーのイメージ)を使って自分を監視する
心を強くする魔法の言葉
クヨクヨ考え込む思考の連鎖を断ち切る
よくあることだ、まあいいか、まあしょうがないと思う。
②前向きになるために足りないものを補う
睡眠リズムを整える、便通を良くする、食事の規則性を守る
自宅安静の過ごし方
思い切って長期間(理想は3ヶ月)休む。
ダラダラ期、活動期、復職期の三期に分けて考える。
ダラダラ期
ひたすら何もしない。ダラダラ過ごす。
活動期
快を得る。好きなことをする。嘘でも良いから大袈裟に感動してみると、感受性が磨かれて本当に感動するようになる。
運動する。ジョギングや水泳など。
いかに再発させないかを考える。外部環境(降りかかってきたストレスそのもの)そのものが問題だったのか、自分自身のストレス対処に問題があったのかを見極める。特に活動期は自身のストレス対処に焦点を当てる。多くの場合は性格に付随した行動パターンの修正となる。
復職期
働きたいという欲求があるかが重要。
仕事の時間に起きて出勤訓練をしてみる。
外部環境を調整する。時短勤務は必ず取り入れてもらう。産業医が復職後の勤務スケジュールなどの作成に携わる。
復職直前の不安が最大となる。復職前はこんなものだと認識して、こうしよう思考に切り替える。仕事のハードルも自分であげない。
復職者としていかに振る舞うか
適応障害は再発率が高い。その理由は、復職者の心理的な要因が大きい。心理的な壁と対処法は以下のとおり。
・長欠感情の壁(劣等感、孤立感、罪悪感)→周囲のようにできなくて当然と割り切る
・職場滞在の壁(時間を持て余し貢献できてない、存在価値がないと思う)→周囲と比較せずじっくり耐える、自分のペースでやるよう客観的に自分を見る
・パフォーマンス回復の壁(復職者自身が本来の力が出せていないと負い目を感じる、周囲の評価とのずれを感じる)→カウンセラーや医師との面談などを通じて相談し対処する
組織より自分が上に立つ、自分が存在価値を感じられるようになるツールとして組織を利用する。何より自分を大切にする。