あらすじ
海外にいた佐知の父親・安知が、再婚相手とその子どもと一緒に帰国した。安知が母・佐和だけを愛し続けていると思っていた佐知は、思わず取り乱すが、賢吾は安知の真意を理解しているようで、「親父さんを、許してやってくれ」と諭す。そんな賢吾に佐知はつい八つ当たりをしてしまうが、賢吾は自己嫌悪に陥る佐知を優しく受け止める。賢吾によって語られる母の姿、史の親になったからこそわかる両親の想いに、佐知は賢吾との未来を重ね合わせ…? 賢吾視点の掌編も収録!
【電子特別版】佐倉温先生書き下ろしショートストーリーを電子版だけに特別収録! 本編終了後に賢吾と佐知の間でひっそりと語られる秘密の会話とは…?
感情タグBEST3
表紙すごく好き!
みんなでお揃いのパジャマで、いつもニコニコしてる佐知が悲しそうで2人が慰めてる。珍しい感じで、先生があとがきで仰ってたことも頷ける。
佐知がずっと苦しんで悩んで葛藤してて、その点でも少し他の巻とは違う雰囲気なのかな?と思いました。面白かった!
父、帰国
海外で医療活動をしていた佐知の父親・安知が一時帰国。佐知に会いに来たと思ったら、いきなり再婚することを告げられます。
佐知は思わず取り乱し、安知に怒り爆発。賢吾に諭されますが、安知の味方をする賢吾にも思わず八つ当たり。それでも優しく受け止めてくれる賢吾。
母・佐和と佐知だけの家族だと思っていた佐知でしたが、賢吾から見た佐和の姿。安知の妻に対する強い思い。史の親になって分かった家族への思い。
父として、大人として、息子として、様々な気持ちを飲み込み、幸せを願う佐知。切なくちょっとしんみり。それにしても、母と息子の名前が似すぎで混乱。
舞桜と伊勢崎のスピンオフを読んだ後だったので、何だかニヤリ。話としてはスピン前のようです。
シリーズ全体のバランス
今回のお話は、今までで一番感情的に複雑でした。え、こんなシリーズでしたっけ?バランスを考慮して星を減らします。でも内容は良かったですよ。
シリーズの中でふみちゃんのママは亡くなっているしママの幼少時代が辛かったのは、お兄さんの話から解っています。それでも。
今回のお話は重かったですね。最愛の人に先立たれてどうやって生きてゆくかという話です。愛していればいただけ、立ち上がれないほど辛いのです。見慣れた風景に愛する者の姿だけ見つからない辛さ。住む場所を捨てさせるほどの空虚。新しい暮らしの中で、奇跡的に杖とも頼むほどの人と出会えた。この人と今日を、そして明日を生きよう。最愛の人を喪った傷を持ったまま立ち上がって、歩くのです。そもそも愛情の質が違うのです。比べようが無いのです。どちらもかけがえのない存在なのです。
佐知先生の気持ちを思うと気の毒で、最後にスッキリ良かったねとは言えませんでした。こういうのは、少し時間がかかるものです。