あらすじ
オリンピック前夜の熱を孕んだ昭和38年、東京。連続爆弾魔を追う週刊誌記者・村野は、女子高生殺しの容疑者にされてしまい、やがてとある疑惑へと辿り着く――。
地下鉄爆破に遭遇した村野は連続爆弾魔・草加次郎事件を取材していた。村野は女子高生・タキとの出会いを通じ、殺人事件に巻き込まれていく。高度成長の歪みを抱えたまま変貌する東京を舞台に、炙り出されたおぞましい真実とは。孤独なトップ屋の魂の遍歴を描いた傑作ミステリー。
解説・武田砂鉄
※この電子書籍は1995年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を新装版として刊行したものを底本としています。
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Posted by ブクログ
30年前の作品ではあるけど、無駄な読書をしたくなくて、桐野夏生を選んだ。
作品の舞台はオリンピックの前年。切ないほどの昭和の描写に、何度も本を置き、アイビールックや古いフランス映画、バイタリスの匂いを脳裡に蘇らせる作業は甘やかな悦びがあった。
最後になって、ああ、これは村野ミロの義父の話なんだ、とわかった。いろんなレビューに書かれているようだったけど、そこはチェックしてなかったので、わかった時は嬉しかった。
「顔に降りかかる雨」と「天使に見捨てられた夜」の再読をしようと思うと少し嬉しい。また、未読の「ダーク」も楽しみになった。
Posted by ブクログ
スピンオフ作品なのを知ったのは読み終えてから。
ただし、知らなくても読める作品です。
トップ屋の男が巻き込まれることとなった
女子高生殺人事件と、
その時代に日本を混乱に陥れた爆弾魔、草加次郎。
そこの一部には「触れてはならない」領域も出てきます。
なぜならば犯罪関与者にいわゆる権力を
持ったものが出てくるから。
そして殺人事件にはあるとんでもない秘密が
絡んでくるから。
ある種の良くない出来事はその一部で
本筋に関しては最悪な代物。
重い内容だけれども
読みやすかったのはひとえに、著者の文章力なんだろうな。
Posted by ブクログ
村善の若い頃のお話。ミロシリーズでもわずかながらミロに重要な鍵をさりげなく残して去る彼がすごく気になっていた。この本で見事に村善に陥落した。昭和のいい男だ!
Posted by ブクログ
東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年の東京が舞台。
今までのイメージでは、高度経済成長の波に乗って、イケイケの時代。
古いしがらみを切り捨てて、明るい未来に向けて社会が一丸となっていたのだと思っていた。
高校生が昼間っから薬でラリッているという日常。
もちろん世間の全てがそうではないにしても、これは多分特殊な事例というわけでもないのだろう。
戦後出回っていた覚せい剤は、このころには表ルートでは入手できなくなっていたと思うけど、今よりはるかに睡眠薬は手に入りやすかった時代。
ストーリーとは関係なく、当時薬に溺れていた若者たちがその後どういう人生を生きていったのかが気になってしょうがなかった。
さて、作品の方に戻ると、連続爆弾魔、女子高生殺し、薬物中毒、少女売春など、事件を追うトップ屋の村野善三が主人公。
ネタを掴んだら情報屋から情報を仕入れ、自分の足でコツコツ証拠を固めてく村野は、自身が殺人事件の容疑者として拘束されながらも、事件の真相に近づいていく。
はずなのだが、読んでいても一向に事件の核心に近づいた気がしない。
確実に前に進んでいるはずなのに、これはどうしたことだろう。
まったくカタルシスがなかった。
それよりも、こういう時代だったのか…という衝撃の方が大きかったな。
でもってこれ、村野ミロシリーズである意味はあるのだろうか。
ミロは乳幼児として登場するけどさ、具体的に村野善三との係わりは書かれず。
『読書メーター』の方で、特にシリーズ読破にこだわる必要なしと言われたのも納得。
しかし「ダーク」が気になるから、やっぱり読破するわ。