あらすじ
俳句甲子園世代の旗手、待望の初エッセイ集
恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦にからめとられた。
幼い息子の声、母乳の色、コンビニのおでん、蜜柑、家族、故郷……日常の会話や風景が、かけがえのない顔をして光り出す。
人は変わらないけど、季節は変わる。言われてみればそうかもしれない、と頷く。
定点としての私たちが、移ろいゆく季節に触れて、その接点に小さな感動が生まれる。過ぎ去る刻をなつかしみ、眼前の光景に驚き、訪れる未来を心待ちにする。
その心の揺れが、たとえば俳句のかたちをとって言葉になるとき、世界は素晴らしいと抱きしめたくなる。生きて、新しい何かが見たいと思う。(「あとがき」より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
春夏秋冬、その季節にそって書かれたエッセイは、ともに生活を繰り返していると気づかせてくれた。
俳人としての、季節の受け止めかたと、母になって感じる、暮らしの移りかわりが、心地よく伝わる文章だった。
著者の俳句が、すうーっと身体にしみて浄化された。
檸檬切る記憶の輪郭はひかり 神野紗希
Posted by ブクログ
日経新聞に連載されたエッセイなどをまとめたもの。当時読むのが楽しみで、電車の中でじんじん感動していたことを思い出した。
俳句には、詠み手が切り取った世界の切り口やアングルを味わう楽しさがあると思う。著者が詠んだ句、先人が読んだ句にまつわるエッセイはそのガイドとなってくれる。
Posted by ブクログ
俳人であり一児の母である著者が書く素朴なエッセイ。学生~結婚~出産まで、長いスパンの間に書かれているものを時系列ではなく季節ごとに並べてあるのが俳人っぽい。
さらさらと読めるのだが、これ!という強いとっかかりがあんまりなかったかも。俳句は季語があるので、俳人はいつも季節の歳時記を持ち歩いているとか、感覚を研ぎ澄ませて季節を探している、というのがなんだか宝探しのようでいいなと思った。