あらすじ
ヨーロッパの思想や制度を熱心に受け入れることにより、驚異的ともいえる近代化を達成してきた日本。それでいて、ヨーロッパとは何かについて、真に学問的な深さで洞察し、議論した書物は意外に少ない。本書は、ヨーロッパの社会とその精神の成り立ちを明らかにし、その本質的性格に迫ろうとする「ヨーロッパ学入門」。
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Posted by ブクログ
海という自然の国境に囲まれた島国に生き、日本語という絶対的な標準語があり、民族も単一(本当は違うが)である我々日本人には理解できない大陸国家の人たちのもつ国家観念について、示唆に富む話がわかりやすく書かれている。
-----以下要約-----
地中海というギリシア文化の影響をもろに受ける土地で着実に文明化したローマ人。そのローマ人の打ち立てたローマ帝国の実情は契約関係で結ばれた複数国家の集合体であった。それが東洋の領土国家観に影響を受け次第に皇帝が全てを統治する制度国家へと変貌するが、ローマ帝国の衰微に伴ってゲルマン民族が擡頭しはじめるとローマ帝国は東に移ってビザンツ帝国となり西にはゲルマン民族の一種フランク人によるフランク帝国が誕生する。しかし著者曰く「西ヨーロッパはすでにローマの滅亡以来、今日に至るまで、いまだかつて一つの国に統合されたためしはなかった」(p.134)。フランク帝国は現在の西ヨーロッパに広大な領土をもったが、それは結局のところ初期ローマ帝国内部の契約関係と似たものであり、つまりヨーロッパははなから統一体ではなかった。
言語的にみても錯綜はなはだしく、その言語に即して政治的分離独立することもできれば、またそれを超えて一つになることもできる。つまりヨーロッパとはそれだけ流動的な集合体である。EEC(発刊当時)が目指すのも画一化されたヨーロッパという一つの(日本人的発想による)国家的存在ではなく、各々の個性を打ち出しながらも緩くヨーロッパという枠組みの中でヨーロッパを守っていくことにある。