あらすじ
小国の未来は、私たちの命よりも軽いのか――
服従か抵抗か。暴力か非暴力か。選ぶ未来の形は―ゲリラの頭目と1人の女性の物語。
南の小国・イシャナイでは、近代化と植民地化に抗う人々が闘いを繰り広げていた。文化も誇りも、力の前には消えるほかないのか!?
学術調査に訪れた瞳子は、ゲリラの頭目・ヤンと出会い、悲しき国の未来をいくつも味わっていく。小さな国の大きな未来を賭け、彼女は駆ける。
「瞳子。世界はぼくたちを憎んでいるのだろうか」。力弱き抵抗者、ヤンたちが掴んだものは?
日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
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Posted by ブクログ
久しぶりにとてものめり込んだ小説。一度読み終えたあと、どうにも本の世界から戻れずに、もう一度最初のページを開いた。
二度目もわくわくした。やっぱりファンタジーが好きだ!
ただ、好き嫌いはけっこうはっきり分かれそうな内容です。
舞台は、太平洋上に浮かぶ島イシャナイ。
近代の国際社会よって「発見」されたその島では、欧州からの移民によって築かれた国家と、それに対抗するゲリラの抗争が続いていた。
島の生態調査のためやって来た主人公の瞳子は、そこで、ゲリラのリーダーにして、原住民族の象徴とも言うべき「ヤン」と出会う。
先進国が押し付けた国際社会のルールによって、蝕まれ壊されていく後進国。
「発見」される前は独立して自給自足できていた小さな島を、外からの「支援」なくしては成り立たないようにしてしまう残酷さ。
本来なら優劣のないはずの個々の文化を無理やり一個の枠におさめて、弱者を作り上げている。
枠へおさめるためなら暴力も非道徳も厭わず、一度枠へ入ってしまえば二度ともとには戻れない。
これが国際社会の一面なのだと思うと、やるせなくなる。
なによりも、ただそこに存在していただけのヤンが人格を与えられ、重い決断を背負い、そしてすべての結末へ向かっていくことが、悲しくてならなかった。
瞳子が、熱帯林を「生態系」ではなく「美しいもの」として見るようになったのと同じく、頭に詰め込まれた固定観念というフィルターを外して、思うままに、感じるままにものごとを受け止め、それらを信じられるようになりたいです。
昔は、それが確かにできていたはずだから。
Posted by ブクログ
1998年に書かれた作品。その頃に出会っていたなら何を思っていたのだろう?いまここにいる自分とは違う世界が一番いい世界なのか?別世界の存在を認めなければ、決して浮かび上がらない思考の間。己が選択することができるのなら、いったいどの世界に生きようとするのだろう?でも、答えは決まっているんだろうな…
いや、決めていると言わねばならない…