あらすじ
幼年童話からYA、一般文芸まで幅広く活躍する藤野恵美氏による、大人もこどもも楽しめる、少しビターで心温まる新作絵童話。(毎日新聞の「読んであげて」での連載を改稿)ともだちがいないけれど ひとりでもへいきなハリネズミは、考えることが大好き。うさぎがバラの花をつけて自慢しても、きみにそんなものは似合わない、といつでも思ったとおりのことを言います。背中のはりだけでなく、言葉もちくちくしているのです。そんなハリネズミがある日、「たべられないし、やくにもたたない」どろだんごをつくっているもぐらと出会います。小沢さかえ氏による油彩カラーとペン画の挿絵も豊富に掲載。もくじ:さんぽ/であい/しごと/はちみつ/よあけ ハリネズミには、ともだちがいませんでした。 森をあるくときも、ひとりです。 けれど、まったく、きにしていません。 ひとりしずかにあるいていると、小鳥のさえずりが、よくきこえます。ひとりしずかにあるいていると、はっぱのざわめきが、よくきこえます。だれにもじゃまされず、ひとりしずかにあるくことが、ハリネズミはすきでした。 森には、おそろしいどうぶつもいます。 でも、だいじょうぶ。 ハリネズミのせなかには、するどいハリがあります。 じぶんの身は、じぶんでまもれます。だから、ハリネズミはひとりでもへいきなのです。─本文より。
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Posted by ブクログ
最初、さんぽの章で、ウサギさんとの会話を読み、これは難しいテーマだなと思った。最後の方で、モグラさんが、会えるかもしれないし、会えないかもしれない。それはいつだつて同じこと。というシーンが印象的だった。刹那的かもしれない出会いの中で、今を大切にするメッセージがあるのかな?とかんじた。
Posted by ブクログ
主人公のハリネズミがアスペルガー症候群みたいなのでびっくりする。思った通りのこと、本当のことを言い、それが人を傷つけることがわからない。一人でいることを好み、こだわりが強い。
そういう主人公がもぐらと出会い、初めて友達ができて変わっていく。
この物語が面白いのは、もぐら以外の登場人物が友達ではない、というところ。これから友達になるかもしれないが、この物語の中では、カワウソは厭な奴で、リスはメッセンジャーを兼ねる商人、クマは製造販売業者、うさぎは着飾るのが好きで、人はいいが友達ではない。
もぐらはハリネズミの個性を尊重して、長所を伸ばしてくれる。社会と結びつけてくれる。しかし、そういう友達は希であり、大抵はカワウソのように、もっと賢く振る舞わないと損するよ、としか言わない。いかにも相手を思いやっている風な言い方だが、損得勘定だけで生きている浅さが透けて見える。
友情と成長の物語になっているし、終わり方もあたたかいので子どもにももちろんいいと思う。
小沢さかえの絵も、とてもいい。
でもハリネズミのアスペルガー的なところから物語がスタートしているので、アスペルガーの子どもの特性を最後まで残しても良かったんじゃないかという気もする。
普通の子どもに共感してもらうならこれくらいにしておかないといけないのかなあ。