あらすじ
スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。
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Posted by ブクログ
フィリピンのバナナの生産者と、日本での消費者、さらにそれをつなぐ商社との関係を描いた本。
だいぶ、昔の本なので、変化している部分も多いでしょうが、問題の本質的な部分は不変であると思います。
先進国の資本が、日本の消費者に向けたバナナを、フィリピンで作らせる。
そのために、地権を収奪し、長い間培われた農地を作り替え、文化を破壊し、多くの労働者を貧困に陥れる。さらに、農薬の利用などにより、現地の人々の健康を害している。
それでも、国がもうかれば、いずれは貧困も解消される、というのが当時の開発の理屈でもあったのでしょうが、そんなこと到底望めない仕組みが二重三重に先進国資本によって仕組まれています。
この本では、その当事者の片方でありながら、まったく事情も考えずにバナナを消費し続ける日本人のあり方についても問いかけている。
はたして、バナナ農園の開発がよかったのかどうか、については簡単に答えを出せることではありませんが、知らないことや、考えないことは絶対に違うだろうと思いました。
国際化の中で、日本に住んで生活しているだけでも、確実に世界中の貧困につながっている。そのことをもっと当事者意識を持って、向き合わなければならないのでしょうね。
Posted by ブクログ
今や世界だけでなく日本の中だけでも云えることであるが、「安さには裏がある。」のだ。
昔は割と高級なバナナであったが、それは台湾バナナであった。台湾は輸出量にムラがあり、70年代頃から安いフィリピン産のバナナに変わっていった。輸出量にムラもないし、大土地所有制による安定した輸出が可能であったこと、これをまず踏まえる必要があろう。
ただ、安定したということは定常的に働かされている人がいる。開発経済といえば、「輸出志向」であり、あたかもそれが生活をゆたかにしたかのように錯覚する。しかしフィリピンでは、不安定な身分で働いている人がおおくいる。フィリピンはながいこと戒厳令が布告されており、労働運動ができないのだ。
そのためにも「フェアトレード」や「共同購入」は重要なのかもしれないが、まだまだ世界は多国籍企業による支配が進んでいる。発展途上国も時間の問題なので、じきに「飽食の時代」は終演を迎えるのかもしれないが。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。
かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。
安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。
[ 目次 ]
1 バナナはどこから?―知られざる日・米・比の構図
2 植民地ミンダナオで―土地を奪った者、奪われた者
3 ダバオ麻農園の姿―経営・労働・技術
4 バナナ農園の出発―多国籍企業進出の陰に
5 多国籍企業の戦略は?―フィリピン資本との結びつき方
6 契約農家の「見えざる鎖」―ふくらみ続ける借金
7 農園で働く人びと―フェンスの内側を見る
8 日本へ、そして食卓へ―流通ルートに何が起ったか
9 つくる人びとを思いながら―平等なつながりのために
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