【感想・ネタバレ】バナナと日本人 フィリピン農園と食卓のあいだのレビュー

あらすじ

スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。

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Posted by ブクログ

著者が他に書いたものから、何となくフィールドワークに基づく社会学的なレポートかと思っていたのだが、戦前の日本の入植も含めた企業の歴史も含めて、土地制度から解き明かすかなり重厚な書物だった。
東南アジアの理解を深めるための一つの参照ケースとして。

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2019年12月28日

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ネタバレ

フィリピンのバナナの生産者と、日本での消費者、さらにそれをつなぐ商社との関係を描いた本。

だいぶ、昔の本なので、変化している部分も多いでしょうが、問題の本質的な部分は不変であると思います。

先進国の資本が、日本の消費者に向けたバナナを、フィリピンで作らせる。
そのために、地権を収奪し、長い間培われた農地を作り替え、文化を破壊し、多くの労働者を貧困に陥れる。さらに、農薬の利用などにより、現地の人々の健康を害している。

それでも、国がもうかれば、いずれは貧困も解消される、というのが当時の開発の理屈でもあったのでしょうが、そんなこと到底望めない仕組みが二重三重に先進国資本によって仕組まれています。

この本では、その当事者の片方でありながら、まったく事情も考えずにバナナを消費し続ける日本人のあり方についても問いかけている。
はたして、バナナ農園の開発がよかったのかどうか、については簡単に答えを出せることではありませんが、知らないことや、考えないことは絶対に違うだろうと思いました。

国際化の中で、日本に住んで生活しているだけでも、確実に世界中の貧困につながっている。そのことをもっと当事者意識を持って、向き合わなければならないのでしょうね。

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2014年04月21日

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mixiコミュニティ「読書会◆アウトプット勉強会」内のトピック「BOOK BATON」にて、紹介されていた本。

日本人にとって、もっとも身近な果物の一つ、バナナを軸にして、日本と産地であるフィリピンの貿易史について書かれている本。

読んでみると、猛威を振るう多国籍企業と、支配、搾取、蹂躙されるフィリピン農業の実態が痛々しく描写されている。

最も、恐ろしいと思ったのは、以下の箇所。

「こうして、フィリピンと日本はつながった。だが、国家と国家ではなく国民と国民の関係として考えてみると、実際にバナナを作っているフィリピンの労働者と、これを食べている日本の消費者は分断されているといえないだろうか。私たち日本人のバナナへの関心が、『価格』や『栄養』や『安全性』にだけとどまっているのは、その端的な例である。」(p.223)

フェアトレードという考えがコーヒー等で近年では流行している。
バナナでも同じく、農家のことも思いやる取り組みが必要なのではないか。

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2013年05月11日

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この本の良さはまず、バナナという日本人にとっては身近な食べ物を題材にしている点であろう。フィリピンにおける生産者と多国籍企業の関係は必ずしもフィリピンに限った事ではない。他の多くの途上国で現地の人々が食することのない商品作物を生産している。だがそのほとんどは市場価格の不安定さのあまりに生産者の生活を苦しめるものとなっている。普段先進国に住む我々が普段気に止めない世界で起こっている現実を見つめ直す機会となる一冊。

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2009年10月04日

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私の研究の方向性を導いてくれた本です。「あいだ」が大事なんです。今はトレーサビリティとかいいますけど、こういうトレーサビリティがアグリビジネスが展開する現代にもっとも重要な視点です。

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2009年10月04日

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鶴見良行の代表的著作。普段の生活に在りながら(在るからこそ)意識しない「モノ」に注目して徹底的に調べる手法。日本での生活がバナナの生産者とどう繋がっているか知り、考えさせられる一冊。

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2009年10月04日

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「バナナのようなありふれた食物についての探究さえも、それを深めてゆけば、日本のフィリピン両国の市民が平等に手をつなぐきっかけが、そこから生まれてくると私は考えている。」
1982年に刊行された名著を大学生以来再読した。

前半は、植民地支配からはじまり、戦争の混乱を経て、外資系大企業がフィリピンの土地を支配し蹂躙するまでの歴史が詳細に語られる。
続く中盤の章では、バナナ産業がどのように維持されているのか、それは主に企業対農家の凄惨な搾取構造が暴露される。地主は大企業に借金をし続ける形で関係が維持されている。農家はわずかに給与で食べていくのが精一杯という生活。農薬が空から散布されるので畑で野菜も育てられず家畜も飼えない。極悪非道である。

そして最後に、その先で安くて美味いバナナを年じゅう食べている我々日本の消費者に話は向かう。「生産者に思いをはせよ」。「バナナについては、それを受け入れ食べている私たち日本人も、そのかぎりにおきては当事者である。」


6章の中に、筆者が村の祭りの晩に栽培農家に泊まらせてもらったと言うエピソードが印象に残った。
家の庭先に皆で集い、大瓶のコカコーラとラム酒で宴を開いたという。「バナナ村の祭りは、深まりゆく貧しさの上に成り立った華やかさだった」と筆者はさらりと語って終わるが、私にはその宴の賑やかさが非常に眩しく感じられた。豊かさとは、何なのだろうかと。


刊行から半世紀近く経って、残念ながら日本人とバナナの関係はそこまで大きく変わっていないように思われる。
SDGsに代わる「ウェルビーイング」が取り沙汰される昨今だけど、フィリピン人も日本人も、全人類が生きたいように生きれる世の中をつくる一助になりたい。

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2025年09月27日

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米政府が大企業と一体となって発展途上国に大規模投資し、現地民を搾取し借金漬けにしつつ大きな利益を上げてきたことは、「エコノミックヒットマン」で読んだが、この「バナナと日本人」を読んで、別の視点からそのからくりがよく理解できた。米企業には、自然とともに生きるとか、現地人を豊かにするといった考え方は全くなく、自分たちがいっそう豊かになることだけを追求してきた。こういった人種が、世界の秩序を乱してきたと言え、今のような金融不安で彼らが危機的状況となっても、同情する人は少ないであろう。

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2018年12月08日

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ネタバレ

今や世界だけでなく日本の中だけでも云えることであるが、「安さには裏がある。」のだ。
昔は割と高級なバナナであったが、それは台湾バナナであった。台湾は輸出量にムラがあり、70年代頃から安いフィリピン産のバナナに変わっていった。輸出量にムラもないし、大土地所有制による安定した輸出が可能であったこと、これをまず踏まえる必要があろう。
ただ、安定したということは定常的に働かされている人がいる。開発経済といえば、「輸出志向」であり、あたかもそれが生活をゆたかにしたかのように錯覚する。しかしフィリピンでは、不安定な身分で働いている人がおおくいる。フィリピンはながいこと戒厳令が布告されており、労働運動ができないのだ。
そのためにも「フェアトレード」や「共同購入」は重要なのかもしれないが、まだまだ世界は多国籍企業による支配が進んでいる。発展途上国も時間の問題なので、じきに「飽食の時代」は終演を迎えるのかもしれないが。

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2012年10月10日

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ネタバレ

[ 内容 ]
スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。
かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。
安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。

[ 目次 ]
1 バナナはどこから?―知られざる日・米・比の構図
2 植民地ミンダナオで―土地を奪った者、奪われた者
3 ダバオ麻農園の姿―経営・労働・技術
4 バナナ農園の出発―多国籍企業進出の陰に
5 多国籍企業の戦略は?―フィリピン資本との結びつき方
6 契約農家の「見えざる鎖」―ふくらみ続ける借金
7 農園で働く人びと―フェンスの内側を見る
8 日本へ、そして食卓へ―流通ルートに何が起ったか
9 つくる人びとを思いながら―平等なつながりのために

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月24日

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言わずもがな名著。経済や社会問題に
興味がある人もない人も一度は読んでみるべき。
世界観が、かわる。

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2009年10月04日

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これを読んでフェアトレードに興味が沸きました。今までフェアトレードなんか毛嫌いしてたのに、身銭切って買う価値ありますよ。良い本です。

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2009年10月04日

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これは新書ですが、古本屋で100円でであった本です。タイトルが、わかりやすいのに謎々なこの本。読んで何になるのかと(古いし)思いきや、意外と貿易や歴史関係に深い関わりがかかれており、ためになったなーと思った。 独立国でありながら、植民地という国は本当に先進国に振り回されている。 近年、フェアトレードいう言葉が流通しつつある中で、こういう源流を知ることが大切かと思う。 人間の行いは、新書という新しい情報で構成されていている結果論では意味がないことが多い。そう気づかせてくれた一冊だ。

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2009年10月04日

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学校に以前、フィリピンの調査をしていた方が講演に来てくださって、それで気になったので買ってみました。両親によると、一時期流行ってた本らしい?分からないけど( ¯ᵕ¯ )
フィリピンのバナナ農園の労働環境ってすっごく劣悪なんだよーって話は伺ったんだけど、本当にひどいなと思いました。1日20円ぐらいしか貰えないのに文句言ったら片腕切り落とされたり怖すぎて泣く߹ ߹ なんで解決しないのかなって思ったら政府が動かなかったからでさいあくすぎる( ߹꒳​߹ )
これを見ると日本って平和だなーとしみじみ感じます、ひどい環境に置かれている方にも平和が訪れるといいなののもがんばる

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2025年03月08日

Posted by ブクログ

昔むかし、高校の地理の授業で取り上げられていて。バナナには安くて子供に大人気でお世話になっているのだけどあれだけ安く大量に売ってるからにはどこかに儲かる秘密があるのだと思ってた。
結論としては、土地の所有者と労働者が搾取されている印象。出来高制とは言っても肥料や苗は企業から買わなければならず、その土地はバナナしか作ってないので自分たちの食糧はお金で確保する必要があって。規格化された農業作物を日本人の好みに合わせて作らされている。
バナナのお金の流れを説明する都合上、商社だのアメリカ企業の結びつきだの地代や法律のからくりだの説明が長々としていてちょっと退屈な部分は読み流してしまった。

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2024年08月27日

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外国の大資本に地域経済の動きを支配されていると、交易量が増えれば増えるほど、末端で働く人々がどんどん貧しくなる。
植民地って、なんというか酷いとこだな。植民地だった過去はその地域の人達のせいではないけど。

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2021年12月23日

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サプライチェーンが問題視される現在、考えさせられる一冊である。

どこで誰がどのように作ったかを消費者は考えないといけない。SDGsの12番responsible consumption and production 。

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2021年09月06日

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筆者は国連によるバナナ経済の調査研究に参加したとの由。フィリピン(ミンダナオ島)の話が主で、『怒りの葡萄』のような感じ。

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2021年05月19日

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フィリピンのバナナ農園の実態を通して、先進国の繁栄を支える虐げられた国という南北問題を浮き彫りにする。
1982年の作。最近はフィリピンも新興国の仲間入りをして、経済成長が続いている。かつての南の国々が成長する一方で先進国が停滞する。バナナ農園で苦労した農民たちも、これからは成長の恩恵に与れるのだろうか?

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2013年10月07日

Posted by ブクログ

日本でバナナが安く売られている背景には商社が安く買い叩いていることが分かり、私達もまたその一端にいることを感じさせられた。

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2009年10月04日

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