あらすじ
ひとりひとりの子どもの内面に広大な宇宙が存在することを、大人はつい忘れがちである。臨床心理学者として長年心の問題に携わってきた著者が、登校拒否・家出など具体的な症例や児童文学を手がかりに、豊かな可能性にみちた子どもの心の世界を探究し、家出願望や秘密、老人や動物とのかかわりが心の成長に果す役割を明らかにする。
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Posted by ブクログ
忘れていた子供のころの感覚をふと思い出して、いいなぁ、なつかしいなぁと思うことがある。多くの大人が、子ども時代に忘れてきてしまったものは、大人になって忘れてしまったものは何か。子供は「何となく感じて」いる。
Posted by ブクログ
トリックスターという存在は河合隼雄先生の著書でよく語られているので、他の著書を読んでいると頭に入ってきやすい。
あくまで主体は子どもで、問題解決のための場がやってくるのを大人は待つのみという部分、頭で分かっていても実行するのは難しそうである。
また、少し考えればおかしなことも教育者が口にすればまかり通るという恐ろしさについて言及されているが、納得できる。教師は勉強を教える能力だけでない知恵を備えている必要があると感じた。そして、教師の人手不足が問題視される今日において、そのような先生はとても少ないのだろうと思った。
子どもの尊さについて学べる本。
Posted by ブクログ
河合先生の本を少々深堀りしてみようと思い読んだ。
冒頭いきなり、著者は「この宇宙の中に子どもがいるということは誰でも知っていることだが、一人ひとりの子どもの中に宇宙があるということを知っているか?」と読者に呼びかける。
また著者は、大人がそのことに無知であると、子どもの中の宇宙を歪曲してしまったり、破壊してしまうことさえあると警告する。それも教育とか、指導とか、善意とかの名のもとに!
自身は失敗者の大人の一人であり反省とフォローアップを目的にいま読んでいるところだが、できれば多くの方には予防の位置づけで読んで頂きたい本であると思う。
子どもの中の宇宙の存在について、実際の子どもの事例を通じ、あるいは児童書の中での登場人物を通じて、著者は示してくださる。
従って、本書に紹介されている数々の児童文学は、読者が大人になって忘れかけている宇宙をも一度思い出すのに有効な書ばかりだと思われる。
個人的には、カニグズバーグの「ジョコンダ夫人の肖像」という児童書に非常に興味がわいた(ダビンチのモナ・リザに関する話らしい)。その本質は、子どもが大人の導者となるという話であり、ダビンチの導者となった子どもの話のようである。児童書でなく一般書にしても面白そうである。
章立ては次のようになっている。
Ⅰ 子どもと家族
Ⅱ 子どもと秘密
Ⅲ 子どもと動物
Ⅳ 子どもと時空
Ⅴ 子どもと老人
Ⅵ 子どもと死
Ⅶ 子どもと異性
子どもと老人、、、それぞれの共通点が述べられていたがその視点が面白い。子どもは死の世界から来たばかり、老人はもうすぐ死の世界へ向かう。従って、どちらも死の世界と隣接していると。これは、宇宙から生まれ、宇宙に帰っていくというイメージだろうか。
そんなこともあって子どもと老人の関係性は強いというのが第Ⅴ章であり、その一例が上記のダビンチの話だ。
機会をみつけて、カニグズバーグの「ジョコンダ夫人の肖像」他、紹介されているいつくかの書にも触れてみたいと思った。