【感想・ネタバレ】ゆめこ縮緬のレビュー

あらすじ

愛する男を慕って、女の黒髪が蠢きだす「文月の使者」、挿絵画家と若い人妻の戯れを濃密に映し出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女の記憶を描く表題作他、密やかに紡がれる8編。幻の名作、決定版。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

幻想文学とはどんなかな、と気軽に手に取ったものの、最初の二行
「指は、あげましたよ」
背後に声がたゆたった。
からもうにおい立つ霧、湿気、妖しい気配に呑まれる。
大正~戦前くらいが時代設定らしいけれど、お金持ちのお話が多くてそのゆとりある暮らしと文化が、相応しい格式と美しさを持つ文体で丁寧に綴られている。お妾さんにお手伝い、乳母等が大勢という現代の私たちには馴染みのない暮らしがにおいや光を伴って目の前に易々と立ち上がってくるその力量、畏怖の念を抱くばかり。
しかしそんな確かな生活の描写がむしろ話の妖しさ、危うい官能(直接的な表現はないのに!)、夢とうつつ、死と生がぐるりぐるりと交じり合う恐ろしくも心地よい感じを演出しているのが本当にすごいところなのだろう。
私は「花溶け」がロマンティックで特に好きだけど、どのお話も美しく気がくるっていて素敵。

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2019年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんとも言い表せない複雑な気持ちで読み終えた。理由の分からない妖しい夢を見たみたいな、ひとときの幻想に足を踏み入れたような短編集だった。
聞き慣れない言い回しも出てくるし、生者と死者の境目が曖昧で、すぐあちら側の世界に連れて行かれそうになる。それなのにとても読みやすい点に驚く。
幾人かの登場人物に業の深さを感じて、重さを静かに受け止めていく読書だった。八作品、読み進めるほどにハマっていく深みがあり、どれが良いというのが選べない。それぞれ主人公の見えている景色が違って、それぞれの地獄がある。
いくつか同じ中洲を舞台にした話があるのが良かった。いろんなモノやヒトが集まってくるその土地を覗いてみたい気がした。

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2023年09月26日

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