【感想・ネタバレ】感動のメカニズム 心を動かすWork&Lifeのつくり方のレビュー

あらすじ

すべての人の心に感動を。感動にあふれた豊かな人生を。日々の暮らしにも、ビジネスにも使える、実践・感動学入門。著者独自の「STAR分析」を用いて、トヨタ/ホンダ、Yahoo!/Google、タリーズ/スターバックス、マクドナルド/モスバーガー…、『アナと雪の女王』/『千と千尋の神隠し』…が私たちにもたらす感動のタイプを解析。感動を創出する先端的な企業やプロジェクトを訪ねながら、「感動をデザインする」方法を明らかに。「感動する○○」はこうして創造せよ! * * *[本書の内容]はじめに第1章 感動の時代がやってきた第2章 これまでの感動研究第3章 感動のSTAR分析とは何か第4章 感動のSATR分析を用いた研究事例 4-1 類似会社の感動のSTAR分析 トヨタ/ホンダ、Yahoo!/Google、マクドナルド/モスバーガー、 タリーズ/スターバックス 4-2 製品・サービス・非営利の感動の比較 4-3 ストーリーのSTAR分析 アナと雪の女王、千と千尋の神隠し 4-4 STAR分析を用いたデザインの研究 ホッピー第5章 感動の実践事例集 5-1 一〇〇〇年後を見据え「美しい経営」をする「都田建設」 5-2 体験から感動が生まれる「ソウ・エクスペリエンス」 5-3 混沌の中から本当の自分を見つける「コモンビート」 5-4 自然の中、五感で感じる「森へ」 5-5 お義父さんのストーリー第6章 感動の見つけ方・高め方おわりに

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書を手に取る前の私は、「感動」とは何かを問う際に、従来の喜怒哀楽といった単純なラベリングに懐疑的な立場を持っていた。感情には7つ、8つといった異なるモデルがあり、その本質は身体反応や脳内物質に結びつく多層的な現象ではないか——そんな視点で日々のコーチングやグラフィック・レコーディング実践に取り組んできた。

この立場から本書に向き合うと、前野隆司氏が提案する「STAR分析」や、シュミットのSEM理論を感動に応用する発想は、「感動」の仕組みを体系化し、設計・分析する枠組みとして非常に示唆的だった。感動はSENSE・THINK・ACT・RELATEの体験がFEEL(感動)へと昇華されるという整理や、そのモジュールの組み合わせの可能性は、単なる情緒的消費や現象論を超え、学びや変容へのトリガーとして捉え直すきっかけになった。

一方で、ラベリングや分節化の危うさへの自問も浮かぶ。文化や社会構造が「名前をつけること」にどんな意味を持たせ、時に本質から目を逸らす――そのことを虹の色や感情語彙の事例を通して強く再認識した。しかし本書は、ただの名付け遊びではなく、感動設計の理論・現場応用の土壌を広げる知的野心を持っている。エンターテインメントや伝統芸能、アニメ産業や教育・コーチングのフィールドで活かせる普遍性と再現性がある、と実感する。

読後の私は、「感動=学びの仕掛けである」「けなげさや挑戦の物語が人の成長とモチベーションを引き出す」という自分なりの理解に確信を持った。そして、分節と設計を、現場で価値ある応用知として使うことの積極的意味も認めたい。

結局のところ本書は、私自身が既に持っていた本質論への問いかけと、産業や現場知とつないでくれる理論の架け橋となった良書である。そして何より「感動のメカニズム」を学ぶことで、日々の問いや実践そのものが少しだけ豊かで深いものになったように感じる。

これからも「感動」を、分節の罠に陥らず、現場のリアルと理論の往復の中で探究し続けたい。
そんな気づきを与えてくれる一冊だった。

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2025年11月22日

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