あらすじ
「言文一致体」という日本語文体誕生の秘密と日本で独自の展開を遂げた「自然主義」。橋本治がはじめて近代日本文学の作品群と向き合いながら、新しい言葉を獲得していく書き手たちのドラマを、小説家の視線と身体性から鮮やかに描き、「近代」の組み立て直しを試みる本格評論。
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Posted by ブクログ
第一部 言文一致体の誕生
導入は古典。
兼好法師の徒然草は和漢混淆文の完成とする。しかし、「センテンスが短く、論理展開がが判りやすい」文章は、時代から距離を置かざるを得なくなった法師の無駄なことを言うまいとする孤高によるもので、時代に影響は無い。
和漢混淆文で書かれた大僧正の慈円の愚管抄。判りづらい慈円の日本語論を橋本さんが分析解明していく。つまり、愚管抄は後の時代の歴史小説とする。しかし、橋本さんは慈円とは無関係に歴史小説なるものが存在してしまって、そのあり方から逆算すると愚管抄は歴史小説に近い、ということになるだけであると、あえてくぎを刺すことを忘れない。
明治時代の言文一致についての論考。二葉亭四迷、田山花袋についてかなり子細に分析されていく。四迷の浮雲は読んだし、関川夏央さんの文章も読んでいるが、浮雲に欠けていたものが判ったように思う。平凡を読んでみようかと思う。四迷が長生きしたら、新しい小説を書いたんだろうか。
花袋についても布団以外の作品も多数引用し分析していく。橋本さんの論考は面白いけど、こちらはやめとこうかな。ひたすら思い続けた女性と20年ぶりに再会し、相手も同じ思だったことを知る。そして泣きながら去っていく。橋本さんは、つまり中年になった女に関心が無いとする。いや~、酷いなあ。
文語体からの脱却に、自然主義の理論があり、しかしながら言文一致体を探求した作家達は自然主義を目指した訳ではないという。「言えない」が作家の主題であったとして下巻に続く。
Posted by ブクログ
2010年~発行した同タイトルの全三巻の構成を二分冊に編集したもの。
まず本書は「評論」であって、日本の近代文学史を体系立てて理解するような近代文学史の本ではないし、近代に活躍した文豪の生い立ちなどがわかる評伝本でもない。
我々が近代文学史を学ぶと必ずぶつかるいくつかのテーマ、キーワードについて、橋本治がそれって本当のところはどうなの?その評価、理解は正しいの? …と橋本治なりの切り口で考察を加えていく評論本です。
論文風の格式張ったものではなく、まるで橋本治が目の前でおしゃべりをしながら考えを纏めているような書きぶりなので、同じ話が繰り返し出てきたりテーマが行きつ戻りつするので、読者は若干煙に巻かれた印象を受けるところもありますが、(学術的な根拠は置いといて)橋本治なりのオリジナルな考え方が見えて面白い。
上巻で取り扱ってるテーマは
・言文一致体成立までの流れ、そしてそもそも言文一致体とはなんぞや?
・「自然主義」ってなんなの?
この2点です。
本書を読む前に、論じてる内容をより楽しむために読んでおくと良いと思われる文豪の作品は
二葉亭四迷「平凡」「あいびき」(「浮雲」は、余裕があれば…)
田山花袋「少女病」「蒲団」
森鴎外「ヰタ・セクスアリス」
以上となります。
特に、二葉亭四迷の「平凡」に対する熱量高めの高評価は、そこまで深読みするか…?と思うところもありましたが、頷けるところも多々あって面白かった~。