あらすじ
2026年、京都で大暴動が起きる。「京都暴動=キョート・ライオット」だ。人々は自分の目の前にいる人間を殺し合い、未曽有の大惨劇が繰り広げられた。事件の発端になったのは、「鏡=アンク」という名のたった1頭のチンパンジーだった。霊長類研究施設に勤める研究者・鈴木望は、世界に広がらんとする災厄にたった1人で立ち向かった……。
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Posted by ブクログ
『QJKJQ』『Ank』『テスカトリポカ』
佐藤究さんの「鏡三部作」を読み終えた。
世界中に、鏡と神秘や権力が結びついた文化が数多く存在する。「人類は鏡からうまれた」という発想を軸に、人間と鏡の切っても切れない関係に最も深く切り込んでいるように感じたのが、本作『Ank』だった。
「われわれはどこから来たのか、われわれは何ものか、われわれはどこへ行くのか」
「チンパンジーやゴリラには『StSat反復』というDNA配列があるが、ヒトにはない」という土台の部分は、実在する研究に基づいているようだ。そこから言語や意識、人類の進化へと壮大な因果関係を展開していく。どこまでが本当なのかわからなくなるほどの説得力があり、科学とSFの境界が曖昧になるようなロマンがあった。
類人猿に人間の言葉を教えるのは、我々ができることを教えるということ。そうではなく、順番を逆にして考える。類人猿との違いからそもそも何が我々に意識を獲得させたのかを探る。
人類の進化の過程での意識の芽生えを、AIの自我の芽生えへと接続していく視点が面白かったのと同時に、人間が生み出したものに自我が芽生える可能性には、何ともいえない不気味さを感じた。
そして「京都暴動」というとんでもない響き。
ゾンビ映画やパニック映画のようなエンタメに振り切ったワクワク感がありながら、「われわれは何ものなのか」という深淵を覗く、本気の佐藤究ワールドを堪能できた。
Posted by ブクログ
今まで読んだ佐藤究作品の中で一番好きです。
実際の進化学とは違うにしろ、とにかく説明の説得力が凄い。やや残虐なシーンが多いですが、淡々と開示される悲惨な記録と暴動収束へ奔走する主人公たちとの対比、ラストへの駆け抜け方が最高でした。読み終わった後、何故か切ない気持ちになる不思議な作品です。
Posted by ブクログ
人間だけがなぜここまで高度な言語を習得できたのか?本書では「自己鏡像認識」という人間と類人猿(チンパンジー・ボノボ・ゴリラ)にしか持ち得ない能力が鍵であると主張します。そして、なぜ古人類は死に絶えているのか?という謎にも、大胆で斬新な発想を披露します。
数多のミステリーのように、人工的に神秘性のある謎を構築しなくても、人間という神秘を探究するだけでここまで面白くできるのだと示してくれました。未曾有の読後感というのは言い過ぎか。「平成のドグラ・マグラ」と称されるべきだったのはデビュー作『QJKJQ』ではなく、この作品だったのではないでしょうか。『ドグラ・マグラ』よりも論説は幾分かわかりやすくエンタメ性も高いです。テーマとストーリーの連動具合では同著者『幽玄F』の方が良かったが、発想力や斬新性で遥かに上回る
凄い!
凄い小説です。とてつもないロマンを感じます。
眼を覆いたくなるような残虐なシーンの一つ一つにも、意味がありました。
途中の暗号のようなやりとりや、実験の本当の目的。ロスト・エイプが絶滅してしまった理由。等々、最後まで読めば分かります。いや、ちゃんとは理解できていないのかもしれませんが、分かった気分になって興奮します。それくらい、丁寧に説明してくれるので、置いてきぼりにならずについていくことができました。
壮絶な展開、悲しい最後ですが、エピローグまで丁寧に書かれているので読後感がとても良いです。そして、類人猿に前よりずっと興味が沸きました。
Posted by ブクログ
まずstsat配列の話が現実のものであるという事実に驚いた。現実とフィクションとの境界線を曖昧にすることで作品の深さが大いに異なってくると思う。そういった意味で著者の作品はそれが抜きん出て得意であるように感じる。これはフィクション作品での定石かもしれないが、境界線が分かりきってしまうとどうしても影がつきまとい話への没入感が薄れてしまう。それが全く感じられずスムーズに最後までページを捲ることができた。フィクション作品における評価点を軽々と突破している点で(上からで申し訳ないが他に形容しうる言葉を知らない)感動を覚えた本であった。ただひとつあるなら、中盤の、起承転結の転にあたる物語の展開の大きな転換点がくるまでが長く感じられ、少しだれてしまった