【感想・ネタバレ】七色の行方不明のレビュー

あらすじ

人生百年時代の警察小説。定年退職後、再雇用警察官として長年のキャリアで培った人脈や刑事の勘を存分に活かして事件を解決に導く安治川信繁の活躍! 第一話「黄金の闇」ネット社会の浸透は目を見張るものがあり、いまや出会いや結婚までネットを介してのものが主流になろうという勢いだ。しかし、手軽さの裏には危うさも孕んでいる。そんな状況下で起きた行方不明事件を追う安治川ら消息対応室が直面する現代の深い闇…。第二話「紫の秘密」源氏物語の謎を契機とする失踪事件と大学院卒業でもなかなか正規の大学教員になれぬオーバードクター問題が絡んで、アカデミズムの得体のしれない壁に突き当たり、安治川たちは呆然と立ち尽くす…。第三話「反転の白」殺人罪の刑事上の時効は廃止されたが、既に成立したものは再捜査されない。捜査の途上でそんな被害者遺族の不公平感に直面した安治川は、あるキャリア警察官僚と激しく対立しながら悩みに悩む…。

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Posted by ブクログ

二章、三章、大変な歴史解析力、警察を抑えて、時効後に事件を解決の持ち込んだ、娘と、時効ごの真実隠し縦割りの警視庁を暴く、再雇用警察官、面白い小説であった。
二章

藤原真代からの手紙

〝関西歴史出版社気付  南山進一先生  前略、失礼いたします。  今月の大滝寺教授による京阪大学市民開放土曜講座を楽しく拝聴しました。私は他の大学の卒業生なのですが、国文学科がありませんでした。しかたなく英文学科生となりました。大学時代は有意義でしたが、一つだけ後悔があるとすれば、好きな国文学について充分に学習する機会がなかったことです。  かつて代々庄屋をしていた私の家には小さな蔵がありまして、そこにいくつかの古文書が眠っています。とはいえ、特別に歴史的に価値のある史料はなさそうですし、書画や骨董の類もたいしたものは眠っていません。ただ一つ、私が気になっているのは、〝源氏 二の巻〟と表紙に行書体で書かれた古文書が長持ちの底にあったことです。綴じられているので、古文書というより、古書籍ですね。もちろん手書きです。  読もうとしましたが、紙がくすんでいるうえに古文です。そのうえ、読みにくい崩し字でした。それでも、藤壺という名前が頻繁に出てくることはわかりましたし、帝、内裏、更衣といった言葉も判読できました。さらに御息所という文字もあったのです。これは源氏物語の写本だろうと考えて、現代語訳と照らし合わせてみたのですが、そのような内容に合致する部分はありませんでした。表紙に書かれた〝二の巻〟というのは、元のものをアレンジした二番煎じのパロディという意味なのだろうと考えて、私は長持ちの底に戻しました。  けれども頭の片隅にはずっと残っていました。地下鉄の車内告知で、〝消えてしまった源氏物語〟という土曜講座の演題を目にしたとき、あの古書籍のことが蘇りました。  もしかしたら、何かヒントを得られるかもしれない。そう考えて、土曜講座を拝聴しました。そうしたら、五十四帖のうちの二帖目が現存しない幻のものという興味深い話を聞くことができました。  私の家は京都の洛北にあります。講座を拝聴したあと、長持ちを開けてもう一度〝源氏 二の巻〟を取り出しました。そして古語辞典を片手に、私の力で判読できる範囲で再び読んでみました。私は国文学科ではないですが、高校のときの古文は大好きでした。  藤壺や六条御息所のことだけでなく、皇位継承争いのようなことも書かれていました。これはどうやら、大滝寺教授がおっしゃっていた第一グループの政治小説のようです。表紙には〝源氏 二の巻〟とあるだけで、帖名は書かれていませんでした。原本を写したもののようですが、帖名は写さずに〝二の巻〟としたのかもしれません。この写本のもとになったのもまた写本で、そこに帖名が書かれていなかったというケースも考えられます。何しろ印刷などなかった時代ですから。  いずれにしろ、とても貴重な発見かもしれないという気がします。財宝のような金銭的価値はなくても、日本文学史を変える可能性はあります。  話は変わりますが、南山先生の歴史小説新人賞受賞作である『カスガの極秘』をとても興味深く読みました。私の出身地である京都も歴史に溢れた都市ですが、奈良はさらに古い歴史を擁しているのですね。歴史小説の形を借りながら、独自の見解を展開なさっている手腕には感服いたしました。深い専門知識と洞察力があればこその作品だと思います。南山先生の市民開放土曜講座も、もちろん拝聴しました。小説の内容を嚙み砕いてわかりやすい解説をしていただき、感動いたしました。  南山先生なら、私にはおぼろげにしか理解できない〝源氏 二の巻〟について、真摯にきちんとした研究をしてくださるのではないかと思い、筆を取りました。近いうちに大学のほうに電話をいたしまして、詳細をお話しさせていただきたいと思っております。その節はよろしくお願いします。 藤原真代〟  

紫式部日記の中に〝内裏の上の源氏の物語、人に読ませたまひつつ聞こしめしけるに〟という記述があることや、〝あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ〟と声をかけられたことが書かれていることくらいしかありません。

人生百年時代の警察小説。定年退職後、再雇用警察官として長年のキャリアで培った人脈や刑事の勘を存分に活かして事件を解決に導く安治川信繁の活躍! 第一話「黄金の闇」ネット社会の浸透は目を見張るものがあり、いまや出会いや結婚までネットを介してのものが主流になろうという勢いだ。しかし、手軽さの裏には危うさも孕んでいる。そんな状況下で起きた行方不明事件を追う安治川ら消息対応室が直面する現代の深い闇…。第二話「紫の秘密」源氏物語の謎を契機とする失踪事件と大学院卒業でもなかなか正規の大学教員になれぬオーバードクター問題が絡んで、アカデミズムの得体のしれない壁に突き当たり、安治川たちは呆然と立ち尽くす…。第三話「反転の白」殺人罪の刑事上の時効は廃止されたが、既に成立したものは再捜査されない。捜査の途上でそんな被害者遺族の不公平感に直面した安治川は、あるキャリア警察官僚と激しく対立しながら悩みに悩む…。

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

熱血刑事として鳴らした安治川信繁はキャリアの晩年、親の介護や事故死した弟夫婦の遺児を育てるために時間的に余裕のある内勤に転じて、その実力を惜しまれていた。60歳で定年退職を迎えた彼は大阪府警に新設された特異行方不明者か否かを認定する消息対応室に再雇用警察官として雇われた。給料半減、昇進ナシ、手柄も現役組のものとなるという条件ながら、退職金の心配無用、面倒な組織のしがらみも無関係で、かえって伸び伸び捜査ができると定年前よりも生き生きと第二の人生を過ごしている。現役時代に培った幅広い人脈は安治川ネットワークとも呼ばれ、思わぬところから助っ人が次々と飛び出して、同僚の新月良美巡査部長や芝室長をたびたび驚かせている。単に行方不明者を捜索する部署かと思いきや、安治川の鋭い勘と筋読みは、その背後に潜む思わぬ犯罪を浮き彫りにし、しばしば難事件を解決に導いている。

第一話「黄金の闇」ネット社会の浸透は目を見張るものがあり、いまや出会いや結婚までネットを介してのものが主流になろうという勢いだ。かつてのリアルなやり取りに比べればお手軽で守備範囲も広いのだが、それゆえの危うさも孕んでいることは否めない。そんな状況下で起きた行方不明事件を追う安治川ら消息対応室が直面する現代の深い闇…。
第二話「紫の秘密」紫式部は二人いた? 一帖目の桐壺の後に消えた二帖目があった! 源氏物語の謎を契機とする失踪事件と大学院卒業でもなかなか正規の大学教員になれぬオーバードクター問題が絡んで、アカデミズムの得体のしれない壁に突き当たり、安治川たちは呆然と立ち尽くす…。
第三話「反転の白」殺人罪の刑事上の時効は廃止されたが、既に成立したものは再捜査されない。被害者遺族にとっては不公平極まりない。その問題に直面した安治川は捜査の途上であるキャリア警察官僚と対立する。兎と亀以上に対照的な彼らの生き様や人生観のぶつかり合いで捜査は行き詰まる…。

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2024年09月14日

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