【感想・ネタバレ】ハーバード・ビジネス・レビュー 戦略論文ベスト10 戦略の教科書のレビュー

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Posted by ブクログ

HBS 戦略の教科書

HBSの戦略論の名著をまとめたもの。
やはり第1章のマイケル・ポーターの論文が際立って良い。もちろん、第2章~第10章も極めて良いのだが、第1章の「戦略の本質」はまさしく本質であり、他の論文とは抽象度が1段上がっているように感じる。
ポーターは、戦略について、「≠業務改善」と最初に定義する。多くの仕事は、最初はスケールメリットなど、業務改善フェーズから始まる。単純な話で、原価や管理コストを下げれば利益が生まれるから、まずはどのように効率化・省力化し、利益を増大させるかという点が企業の命題となる。しかし、業務改善には限界がある。ある一定レベルまで行くと、大幅な技術革新でもない限り、これ以上効率化できない領域が発生する。そのフェーズでは必ず、トレードオフの関係が生じる。そこで初めて、戦略が登場するのである。
トレードオフの関係性がそこに生じたとき、「何をやらないか」を決めることが戦略そのものである。よく例に挙げられるサウスウェスト航空は、機内サービスを「やらない」ことで、安価なサービスや効率的な運営を行っている。一見、アメリカでも有数の客数が見込める空港でも、一定の効率性が実現できないところでは、参入しない/参入しても撤退するのである。
そして、一度、「何をやらないか」を決めた場合、その後は規律と継続性が重要になる。誰でも長時間労働さえすれば、「全部やる」ことはできるのである。「全部やる」ことは、実は簡単である。単一の評価軸で評価してしまえば、他への説明が簡単だし、外野からの見た目もよい。しかし、それを押し切ってまで、時には外野から批判されてもそれを続ける規律と継続性が重要になってくる。多くの企業は、自社の戦略を策定しても、継続できずに終わる。
しかし、いざ継続すると、独自性の高いポジショニングや、模倣困難性が高いシステムが完成していく。他社は過去の経緯から「〇〇をやらない」という選択肢が取れない場合(そのことで、多くの既存顧客を失うことがわかっていたとしても)、参入できないポジショニングを構築することができる。「やる/やらない」の無数のトレードオフの関係に一つ一つ決断を下すことで、他社が一見すれば真似できないような複雑なシステム(一見、異常)が立ち上がる。そしてシステム総体として、強固な競争優位を獲得したとき、既存顧客のスイッチングコストは最大化し、そもそも狙っていない見込み客をシャットアウトできる。さらに、この構図はデータの蓄積により拡大再生産される。(ダブルハーベストでもこのような記述がある)。現代のビジネスでは、AIによるビッグデータ分析がセオリーとなっているため、先行者利益の最大のものにデータの蓄積というものがある。一度、独自のポジショニングを取り、他社が取ることができないデータが得られた場合、そのデータを活用した新たな施策により、競争優位はより強固になる。こうした無数の「やる/やらない」の集積が企業の個性となり、ブランディングにもなる。自社に有利なブランディングができれば、声がかかる前に面倒な顧客をシャットアウトすることも可能であろう。
さらに、こうした独自のポジショニングの確立は、インナーブランディングにも良い影響がある。何をやらないかという決断は1社員にとっても明確であり、社員にとっての実行しやすさが見込める。社員個人としても、無数の競合企業がある中で、なぜその企業で働いているのかという部分が明確化しやすい。戦略が明確化されている企業では、従業員エンゲージメントも高いだろう。
楠木健氏は、このような「やる/やらない」の数段階の道筋を「骨太のストーリー」と呼び、その戦略によりどのようなゴールにたどり着けるのかを語れるストーリーの重要性を発信しているが、これもまた、ポーターの言う戦略の本質というものであろう。

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2021年05月01日

Posted by ブクログ

第1章:戦略の本質〇
第2章:5つの競争要因〇
第3章:ビジョナリー・カンパニーへの道〇
第4章:ビジネスモデル・イノベーションの原則
第5章:ブルー・オーシャン戦略
第6章:戦略実行力の本質
第7章:ストラテジック・プリンシプル
第8章:戦略と業績を乖離させない7つの法則
第9章:バランス・スコアカードによる戦略的マネジメントの構築
第10章:意思決定のRAPIDモデル

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2021年02月28日

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