あらすじ
ある日、人類は記憶障害に陥り外部装置なしでは記憶を保てなくなった。バラバラにされた心と身体が引き起こす、悲劇と喜劇。様々な生の記憶を宿す「わたし」とは一体何者なのか。壮大な物語が幕を開ける!
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Posted by ブクログ
最初はプククと笑いながら読んでたんだけど、あれ、これは一体どこへ連れて行かれるの?
予測不能の物語に、さすがとか、まいったとかは言えないわ。
恐れ入りました。
Posted by ブクログ
あることがきっかけで新しく記憶が出来なくなって、外部記憶装置を使うようになった世界の話。
最後の展開はあまり飲み込めなかったけれど、「死」について考えさせられた。
他人の記憶を体験するのは三雲岳斗先生の「忘られのリメメント」を思い出した。
メモリの挿入で時間が飛ぶのにはAppleTVの「セヴェランス」を思い出した。
Posted by ブクログ
突如訪れた「大忘却」によって人類は新たな情報の記憶能力を失った。 覚えてられるのはごく最近の出来事である短期記憶と体に染み付いた手続き記憶だけ・・・。 遠くない未来、人間の記憶は体に埋め込む機械型のメモリーに委ねられた。 ここに一つのメモリーがある。 体は事故で失ってもう無い。 生きた人間にこのメモリーを挿し込めれば。 これは未来の犯罪の物語。
小林泰三氏の「記憶」をテーマにしたSF作品。
第一部にて人類が記憶能力を失った様子をパニック小説のように描いている。あくまで失ったのは「大忘却」以降の記憶能力で機械の操作などの手続き記憶やそれまでの人生での記憶は保持されていた。実際過去の記憶を完全に失っても言葉は話せるんだから本当に不思議である。ほとんどの人類が行動しては忘れてを繰り返す中、少しづつであるがこの驚異に立ち向かうものがいた。やがて人類は外部に取り付けたメモリーに記憶を蓄積することによって従来の生活を取り戻していく。
第二部から物語が始まったと言って良い。メモリーという擬似的記憶装置にて新たな復活を遂げた人類とそれに併発する未来の犯罪の物語だ。今まで肉体に付従してきた記憶という概念が完全に肉体から切り離されたのである。しかしメモリー=命といって良いのになぜそんなに剥き出しで取外し可能なのだろう?普通誰にも見せなくないでしょ。
小林氏らしいブラックなオチの付くSF、気に入ったら記憶破断者もおすすめだ。
Posted by ブクログ
色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。本物と幻を区別する方法がないのなら、本物と幻は同じものだと考えるしかない…そんなめちゃくちゃな!(でも「阿・吽」で般若三蔵も「目に見えるものも記憶も全ては虚妄」って仰ってた…)
人とは記憶なのか、魂とは記憶なのか。ある人の記憶を他者に入れたら、その人を定義するのは肉体に依るのか記憶に依るのか…これはだいたい記憶が勝っていました。記憶が永遠に失われないとしたら、人が死ぬことは無くなるのか。
いやぁもの凄いですね…人類の記憶が10分しか保たなくなるパニックSFかと思いきや、人とは何かをじわじわ考えさせられ始める。数多の人々の記憶を取り込んで輪廻転生に近いものになった、とか。
地球に浄土が爆誕してしまうラスト、そして「間違ったら何度でもやり直したらいい」の創世記。面白かったです。
解説の終盤に深く頷きました。今の風潮では「(今すぐ)役に立つか立たないか」で役に立つ知識が尊ばれるけど、大事なのは今は役に立つかわからんけどいつかは役に立つかもしれない知識でも入れとく事だろうと思います。役に立つか立たないかなんてこの瞬間にも変化してるかもしれないのに。
そう思い、今日も役に立たなそうな知識を蓄えながら生きていく訳です。一劫の長さとか今のところあの世でしか必要ない。
Posted by ブクログ
人類が突然、記憶する能力を失ってしまった世界でのお話。
当初はパニックに陥るものの、それから数十年後、記憶の外部記憶装置が完成し、人類はそれなくしては生きられなくなっていく……。
記憶力を失い、肉体と記憶が切り離された世界で起こる様々な事件。記憶装置なく生きることを決めた人々、そして死者の外部記憶装置を挿入して“口寄せ”するイタコ。
自己というものは何なのか、記憶や現実はどこまで信用できるのか。魂は一体どこにあるのか。
新人類の創世神話ともいえるのかもしれない。
色々なことを考えさせられる一冊です。