あらすじ
「鴨川食堂」著者が贈るシリーズ!
京都にまつわる不思議な体験、してみませんか。
英国人ミステリー作家のカール・エビスは、京都にある名門・京洛大学に招かれ、教鞭を執っている。次回作執筆の参考にと、講義がない日には助手の九条葵と京都の街を練り歩き、日々創作の種を捜している。
まだ京都へ来てから日が浅いカールを驚かすのは、京都ならではの不可思議な出来事だ。時間や空間の概念などないかのように、安土桃山時代の逸話〈宗旦狐〉の母狐が化けた女性の姿を見かけたり、〈六道の辻〉の案内人である年齢不詳の老婆と出会ったり。京都人らしい、気遣いができるも小言を言わねば気が済まない性格の葵に振り回されながら、行く先々で、カールは科学で解明できない出来事に遭遇する。
感情タグBEST3
和菓子が、美味しそう….….
鴨川食堂を彷彿とさせる、お料理の描写も、素晴らしいし美味しそうだけれど、一番は、朝、葵さんが点ててくれるお抹茶と出てくる和菓子。出てくるお料理以上に、美味しそう。食べてみたい….….というより、見てみたい。
Posted by ブクログ
カール・エビスせんせは、英国人のミステリー作家。
太めの野口英世(笑)といった風貌で、1959年生まれ。
東京に6年住んだが、京洛大学の文学部に招聘され、日本文学の講座を持つことになった。
それを機に京都に移り住み、憧れの庭付き一戸建京町家に暮らすようになって半年。
教室で助手を務める、九条葵(くじょう あおい)が身辺の世話などもしてくれる。
お話の「型」としては…
葵がお茶を点てて、季節にふさわしい和菓子とともに教授に差し出す。
小説の取材も兼ねて、葵のアドバイスで神社仏閣を巡り、おいしい店でランチを頂く。
葵とはそこで別れ、小平菊乃の店、『喫茶菊乃』へ足を運んだり、または川嶌葉子(かわしま ようこ)営む古書店『竹林洞(ちくりんどう)書房』を訪れたり。
夜は食事と酒のために、先斗町の『小料理フミ』に通う。
女将は、増田フミ。70は超えているけれど、声も顔もつやつや。甥のヨシトの料理も絶品である。
この、女たちの人生もいろいろで、教授が京都で出会うあやかしや、神社仏閣の縁起、伝説などに絡んでくる。
小説に出てくるご飯や和菓子の店は、上記女たちの店以外は基本的に実在しており、興味があれば訪れることができる。
神社仏閣のいわれや伝説を、女たちのストーリーに絡め、現代的に置き換えることによって理解しやすいようになっており、名前だけは知っていた、という事柄でも新たな興味をそそられる。
著者は京都に在住し、その真髄まで知り尽くしている人の一人だと思うが、京都初心者の教授に寄り添う形で、ていねいに京都の案内役を務めてくれる。
五摂家のひとつ九条家の流れをくむ家のお嬢さん、という設定の葵。
京都には実際に、驚くほど古い家系や伝統が伝えられており、それを守っていくことは大変な仕事だろうと常々思っているが、その葵の気持ちや悩み、決意などが控えめに、それでいてしっかりと描かれているのも好ましい。
京女だなあ、と実感。
第一話 宗旦狐(そうたんぎつね)
出町桝形商店街で、いつもお揚げさんを十枚買うという美人。
第二話 鐵輪(かなわ)の井
能「鉄輪(かなわ)」を観る。
自分を捨てて後妻をめとった男を呪うという物語。
ロンドンに残してきたワイフを思い出し、冷んやり。
その帰り、菊乃の店の階段で、気流しの男性とすれ違う。
第三話 六道の辻
「せんせにはあっちのひとがようけ付いて来てはります」と葵。
“洗い地蔵”を洗うとすっきりした。
幽霊も生きた人の中に紛れ込んで普通に暮らしている…京都に限ってはすんなり信じてしまえる気がする。
急に有名になって商売を広げた“幽霊飴”に、京都っ子としてチクリ。
第四話 嵯峨野の竹林
嵯峨野に思うのは女の悲しみ。
「祇王寺」「滝口寺」
京都人ではない女の前に、“どこの馬の骨ともわからない”という言葉とともに立てられる戸あり。
第五話 おかめ伝説
内助の功?
ええ話だと思う。
第六話 百夜通い
古い伝説も、現代の多くの女の心情に重なるところがあると感じながら読んできたが…
深草の少将は、現代ならストーカー?!
Posted by ブクログ
あやかし見聞録、だもんな。そりゃあやかしにまつわるエトセトラが出て当然、か。京都で有名なあやかしに出会う。優秀な助手もいる。
柏井先生の京都舞台のお話は好き。
Posted by ブクログ
日本文化を研究している外国人の目線で、平安時代から連綿と語り継がれている怪奇現象を交えながら京都の食と文化を紹介するという趣向は面白い。
出してくる小ネタも一般的過ぎず、マニアック過ぎず、市民に適度に浸透しているレベル感も良い。
変に思わせぶりな美女ばかり登場させなかったらもっと良かったのに、一般ウケを狙い過ぎたのかな?
Posted by ブクログ
タイトルの「あやかし」がひらがな表示であることが物語っているような、あくまでライトに、はんなりと、京都のテイストを取り上げて仕立てましたーという雰囲気の小説。「京女=いけず」の一言に作者が言いたいことが集約されている感(笑
表紙絵、杉田比呂美さんの絵は様々なミステリ系文庫等等で見覚えのあるタッチなのだけど、本文中にカール・エビス教授のビジュアルについて「太った野口英世」とあるのを見た後だと、なんか違くないか…という感じ…
Posted by ブクログ
英国人ミステリー作家のカール・エビスは大学で
教鞭を執りつつ、次作の取材と称して助手の
九条葵と京都の街を練り歩く。そこで遭遇するのは…。
京都の不思議に触れる全6編の怪異譚。