あらすじ
敗戦の記憶は、日本人の想像力を母子相姦的な構造の中に閉じ込めた。映像の20世紀の臨界点、戦後アニメーションの3人の巨人は、この「母性のディストピア」にどう対峙したのか? 宮崎駿は「母」の胎内で飛ぶことを夢見る少年たちを描いた。富野由悠季はモビルスーツという仮初めの身体と架空年代記を繰り返し破壊しつつ、「ニュータイプ」という想像力を追い求めた――『ゼロ年代の想像力』に続く傑作評論、待望の文庫化
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Posted by ブクログ
宮崎駿、富野由悠季、押井守の3人を中心的に取り上げながら戦後から現代までの日本の思想を射程とした評論。
アメリカの庇護の元経済大国となり、そしてそこから滑り落ちた日本の課題をアニメーションを通して示している。
本書では戦後以降に限定しているが、アメリカ当たるものを変えれば、同じ状況(母性の肥大化と矮小な父性)はずっと古い時代まで遡ることができるのではないか。中華文明の辺境として生きてきた日本列島人が根底に持っているものではないかとすら思う。
巨大なムラと化したSNSを含めて私たちの「成熟」の難しさを感じる。
Posted by ブクログ
大好きな宇野本。
ほとんどのアニメを見ていないこともあるが、相変わらず思考が追いつかない。なので、(賛否はあると思うが)何度も同じことが繰り返し語られている部分は、刷り込みとして僕にはちょうど良かった。
設定した目的に対して、一側面からの題材批評をつなぎ、
複数の題材を一つの主張につなげるところはさすが宇野さん。
物事の網羅性に執着しちゃう僕には、足りない思考。
Posted by ブクログ
アニメーションの巨匠たちを分析し、そこから社会構造を垣間見る試みはこれまで見たことがなく、興味を強く惹かれる。
この上巻では宮崎駿と富野由悠季について取り上げられている。
母性、父性といった観点で作品と対峙し、作家性と時代性を見つめながら本質を紐解いていく過程は面白い。