【感想・ネタバレ】「差別はいけない」とみんないうけれど。のレビュー

あらすじ

セクハラや差別が後をたたないのは、「差別はいけない」と叫ぶだけでは、解決できない問題がその背景にあるからだろう。反発・反感を手がかりにして、差別が生じる政治的・経済的・社会的な背景に迫る。「週刊読書人」論壇時評で注目の、気鋭のデビュー作。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

最初は理解が追いつかないところがあったけれど、自分も意外と凝り固まった考え方をしていることに気がつかされた。

0
2022年10月15日

Posted by ブクログ

問題を訴えることが盛んな時代だ。問題が問題だけど、問題だ、の問題もあるのだろう。僕はしばらく読書は数だったけど、一つの本を何度も読むことも両立していくことにした。数を読むのは自分の拾えるところを拾う傾向になる。知らないことを埋めるのにはいい。ただ、思い込みを壊すのには一つの本を読むといい。ある種、勘違い、汚れの自覚というかそういう修行みたいなことは必要だ。

前書きである店のデモを思い出した。このひと時代で、時代の空気に乗るのが商売のようなった。乗ってはまずい時代の空気もあるのを誰もが忘れてしまっているのではないかと思う。平成期の歴史も知っておかないと考えられないこともたくさんある。社会の問題はよくよく考えたことがないことに気づく。経緯も知らずに、説明を聞かされただけでわかった気になってしまう

0
2022年02月13日

Posted by ブクログ

最近、Twitterをちらほら見初めて、セクハラ・差別などについての意識が高くて感心したが、徐々に違和感を感じ、うっとおしくなってきた。
本書はポリティカル・コレクトネスを巡る、その違和感を言語化するものだった。タイトルの「けれど。」がその感じを出している。
「差別主義者も反差別主義者もみずからを『足の痛み』を抱えた『弱者』だと相手に提示して、『責任』=『負債』を他者に負わせようとしている、といえる。ポリティカル・コレクトネスが社会を覆う状況にだれもが息苦しさを覚えるのは、『とんでもない責任のインフレ』=『無限の負債』を感じるためである。そのうっとおしさから逃れようと、すべての『負債』を肩代わりしてくれる犠牲の羊を探し出し、『魔女狩り』のように『炎上』され、『自らの行為の責任をやすんじて免除する』ことが繰り返される。」(p251)
この指摘すごい!内田樹によるポリコレ批判も参照されていて、好きな本なので、へーっとなる。
それでもポリコレを手放してはいけないのだ。

0
2020年06月27日

Posted by ブクログ

差別問題(及びPC問題)をこれほど総合的・多角的に論じた本は今までなかったのではないか。引用された本も片っ端から読みたくなる。

0
2020年02月21日

Posted by ブクログ

日経9月7日書評に掲載の本。

ポリコレをめぐる言説の考察。

「ポリティカル・コレクトネス」とは、人種・宗教・性別などの違いによる偏見・差別を含まない、中立的な表現や用語を用いること。しばしば、「うざい」とか「うんざり」とか否定的な意味合いを込められる。

差別はしてはいけないこと。
だけど、無自覚に差別をしてしまう自分は絶対的に存在する。
そんな自分を認めつつも、人の尊厳を傷つけず、人を思いやれる人になりたい、と思う。
だから、ポリコレ的視点で、自分の言動を常に見つめることは必要だな、と思う。

いっぽうで、行動経済学が示しているとおり、人間は常に賢い行動をとるわけではない。また、厄介なのは、差別する側にも一定の合理性があることだ。

本書の立場は、ポリコレへの反発から問題点をあぶり出し、それを乗り越えることを目指す。

民主主義は同質性を求めるので、異質な者を排除しようとすること、多様性を認める自由主義とは経済成長がないと折り合えないこと、など目を見開かせる記述が多い。
ただし、差別問題について、明確な結論まではたどり着けてない、かな。
差別はそれだけ根深い問題、ということ。

文字が大きくて1ページあたりの文字数が少ないので、サラッと読めるかと思ったが、読み進めるほどに難しくなり悪戦苦闘した。でも、さらにしっかり読み込んで、理解を深めたいと思った。

2
2019年12月06日

Posted by ブクログ

民主主義(アイデンティティポリティクス)と自由主義(シティズンシップ)という概念がそもそも「対立する」ことすら知らなかった身としては目から鱗だった。差別(ハラスメントなども含む)は、人が多様であるが故にいかに避け難いか、そしてポリコレを大義と出来るか否か、についての論考。現在の「分断」の深淵を垣間見ることが出来る一冊だと思う。と同時にこの本は自らを「左派」と自認する人々にとって踏み絵のようなものでもある。人間も世界も恐ろしく複雑だ。

1
2020年02月10日

Posted by ブクログ

基本的にはロールズの正議論に則り、「正体が無知のヴェールに包まれた状態」におけるものに立脚していたいものの、生得的な違いなどにより、平等ではない事実(女性のほうが感情的だったりすることを裏付けるデータだったり、人種によってIQ平均値の統計的な差異が認められていることなど)により、それが上っ面な正義でしかないことが明らかになってきた。また、女性の平等を求めたとしても、それに見合う効能とコストがあるのかと指摘し、棄却するような功利主義(それぞれの正義や道徳の対立を効能とコストの観点から回避する)も台頭している。また、過剰に平等を求めた先に、自分の内在する暴力性(Aを言うなら、BはどうやとかA’のことはいいのか)を過剰に取り上げることが多くなり、発言するのも気が引けるようなそんな堅苦しい世界になっているようにも感じる。
でもそれでも、中国のようなアーキテクトによって人間をコントロールしようみたいなものや差別に対抗するには、道徳や正義を発揮する必要がある。非常に脆弱で曖昧な主観的なそれに立脚することのみが人間としての矜持とすら今この本を読んだ後に感じる。この本を読む前まではこの昨今の生きづらさや発言のしにくさがめんどくさく、鬱陶しいものだと感じていた。もっと自由に生きたほうがいいに決まっているとすら思っていた。どちらかといえば、功利主義的な人間(だからIT企業で働いている)だし、性質の違いがあるのだから完全な平等は成立しないと思っていたが、そんな事実や主義も勘案したうえで、平等を求めること、そのポーズの意義を最後の天皇の章で感じたように思う。
データ分析やIoT、DXなど数字で語ろうとする機会は非常に多いし、それが有用である側面もわかりつつ、道徳心や正義にこだわることは大事なんじゃないかと思わされた。

0
2023年12月13日

Posted by ブクログ

まず筆者の年齢が自分とほぼ同世代(綿野が一つ上)というのに驚いた。同世代が評論家として本を出版するような歳になったということか、、、
それはさておき本書はタイトルの通り、なかなか表立っては言いにくい、それこそポリコレに反するような事柄について、懇切丁寧に説明を加えようとするものである。アイデンティティとシティズンシップの対比、それはすなわち民主主義と自由主義の関係につながっている。本書はそれらの対立やねじれについて、極めてクリアカットに解説してみせる。そしてそれらの言説は非常に説得的である。かといってそれらの一見説得的な言説・分類が、実社会における差別問題に対して、実際に有効に機能しうるかは、また別の問題である。日本における、反ポリコレの嚆矢となるのが「ためらいの倫理学」だとする見方はなかなか興味深い。皮肉なものである。

0
2021年01月03日

Posted by ブクログ

差別はなくならない。
そのことを認識することから始まるってこと。

「不快」な感情が他者への無意味な自己責任論になる前に、その「不快」さをまず言語化してみよ。

という本かな。難しかったけど面白かった。再読して良かった。

0
2020年10月10日

Posted by ブクログ

めちゃ面白かったーーーー。取り扱ってる幅が広い
人種、フェミニズムは成る程という感じ、慰安婦、天皇は知らなかったな〜という感じ
ここから、読みたい本を調べていこうと思う
ポリコレはブルジョワのものかー。

0
2020年06月19日

Posted by ブクログ

差別を批判するロジックを「アイデンティティ」「シティズンシップ」に整理し、その変遷と現状を説明している。文章は分かりやすく、代表的思想と人物を紹介するにも読者が辿りやすく工夫した説明なので、ここをもっと知りたかったらこれを読めばいいわけね、というのが一目でわかる。差別だポリコレだ、というその時その時の風潮になんとなく流されるんじゃなくて、ちゃんと考えてその行きつく先の話をしていきませんかという意図が伝わる。おもしろい。
思想や立ち位置というものをきっちり整理して示してくれるので、自分の考え方がどのあたりにあるのか、ということも分かって良かった。近年のいろいろなポリコレ騒動にも触れられていて、この話は疑問に思っていたけど、どうも私は土俵の違うことをごっちゃにして分けて認識できていなかったんだな、などと思ったりして。
ただ著者の主張である「ポリコレの汚名をあえて着る」というのが、いまいちくみ取れなくて申し訳ない。他の本も読めばわかるかも?

読んでいて、自分はシティズンシップ的な「市民」の理念っていまいち共感できないのだな、と思った。人間に価値と優先順位を付けるということについて明確に否定し、納得させられるような説明にあったことがないし思いつかないから、私自身は差別がいけないことだと言い切ることに不安がある。
他の本でも読んだけど(その本ではビンカーは批判されていたが、生得的にせよ、後天的学習にせよ、不都合な男女の「違い」が存在することに異論はないはず)、人間の自由意志も自律的な思考・行動も疑問視されつつあり(全く意味がないわけではないだろうが)、どうしたってバイアスが存在するのは当然のことで、そこから功利主義につながるのは至極当然だ。私も、シティズンシップ的な空虚な平等概念よりは合理的でよほど納得できる。以前哲学系のオープンチャットに入った時に高校生ぐらいの子たちが功利主義の管理社会を肯定していてちょっと驚いたのだが、現在の状況においてもうスタンスとして「あり」になってきているのかもしれない。
でも十二国記の天命システムしかり、合理的な制度がうまく機能するかどうかと言うと全くそんなことはないわけで、この本でも中国がまさにその道をガンガン進んでいって早速歪んでいく様が指摘されている。
シティズンシップの論理にのっとった差別の是正はどうしたって不合理でコストが必要で、人間はその論理が求めるスペックに耐えうるほどの強さもない。合理性を上回って平等を推し進めるための社会を貫く哲学も今はない。それを作り出すためには人間を管理し、「教育」しなくてはならない(いったい誰が?)、そうなればシティズンシップは終わる、というすごい話。

「なにかしら相手の行為を『不快』に感じたとしても、相手の『責任』を追及するまえに一度その『不快』さを言語化してみるべきだろう。そして、相手がなにか『不快』をアピールしているならば、その相手が『不快』をどんな論理で正当化しているか、よく吟味すればよい。そこに論理の飛躍や矛盾はないか」というのがその辺りでの著者の主張なんだけど、私は論理的かどうかが共通の判断基準として機能するという希望は現状としてはついえているような気がして、どうなのかなと思う。
結局のところ人間は論理で物事を判断するようにできていないし、左にしろ右にしろ、この本でも指摘されているような言い落とし技法みたいなものを使った言論が多くて、どうにかして都合の悪いところはごまかしていこうという方向性ばっかりで嫌になってしまう。むしろ都合の悪いところをきりきり締め上げるようにして詰めていけば、あたらしい地平が見えそうなのに。もしかしてそれこそ著者の言う「ポリコレの汚名をあえて着る」というところなのか!そうか。そうであれば、これは解決策ではなく解決策を探るための姿勢としての提言か。それは手放しに賛成できる。
「飛躍にはその人の本質がある」といったのは誰だったか、忘れたけど、そうやって批判ではなくお互いを明らかにしていく、境界線上のホライゾンじゃないけど、分かりあうことのないお互いが手を合わせられる境界線を探すという作業。そういうことができればよいのだろうか。

0
2020年06月01日

Posted by ブクログ

タイトルから興味が湧き、何気なく読んでみたが、非常に骨太な内容で難しくビックリした(笑)人間の多種多様さは大きな強みである。しかし、その多様さが幾つもの異なる集団を生み出し、「ウチ」を贔屓し、「ソト」を蔑ろにすることで、集団間の差別を生み出してしまう。人間は生まれながらに矛盾している生き物であると改めて実感させられた。

0
2020年03月06日

Posted by ブクログ

差別がいけないことなのは大前提として、それがなくならない背景に何があるのかを経済・政治・社会・心理などの様々な分野から紐解いていく。

過剰とも言えるほどのポリティカル・コレクトネスが跋扈する現代だからこそ、自分たち(シティズンシップ)の立場を再認識する必要がある。

ただ、いわゆる「ポリコレ棒」を振り回すネット界の正義の味方たちには、この本の主張は届かないんだろう。。

0
2019年09月08日

Posted by ブクログ

まえがきに頗る感動した。
民主主義と自由主義の対立関係は目から鱗だけどしっくり来た。
ポリティカルコレクトネスト唱えがちだけど何故かうざいのも結構わかる、こんな自分を不思議に思ってたから、考える材料をたくさん貰えてありがたい。

後ろにいくにつれて議論がややこしくなってる気がした… 色んな学問分野から色んな考えを参照・引用してて、面白いが少し雑多な印象。

0
2020年09月21日

購入済み

難解な内容だが、幅が広く面白い

「差別はなぜ起こるのか」について、ポリティカルコレクトネスとシティズンシップ、自由主義と民主主義の概念をそれぞれ対比させながら説明を試みた本。

学校ではみんななんとなく「自由民主主義」と習うけれど、本当は自由主義と民主主義は対立する概念であること、そして自由主義と民主主義との共存は崩壊しつつあること。
この視点が面白かった。

内容が難しめなのですべてに共感することは難しいが、マルクス主義、経済、道徳、心理学、生物学、日韓関係から障害者まで非常に幅広い視点から差別にアプローチしているので、誰でもどこかしらに共感できる部分があるのではないか。

0
2019年11月17日

「社会・政治」ランキング