あらすじ
●世界でもっとも注目されている国の意外史
ブレグジット(英EU離脱)がどのように進むかで世界中の注目を浴びているイギリス。本書は、イギリスが長期間にわたって世界経済のリーダーであり、自生的に産業革命をなしとげたことによって覇権国家となったという通説に対して、イギリスはもともと弱小国であり、産業革命ではなく、金融業によって覇権国家になり、現在もその金融力のおかげで衰退しないと論じる、従来のイギリス史のイメージを逆転させるユニークな内容。政治から経済まで様々な知られざるエピソードを交えて弱小国が大国に成り上がるまでを解明します。
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Posted by ブクログ
2019年8月現在、Brexitで世界を賑わす英国について、その歴史を今一度把握してみたい、という思いにかられて本書を手に取りました。
島国とはいうものの、やはり大陸欧州との関係は密接です。11世紀にイングランドを征服したノルマン王朝の始祖ギヨーム(征服王)は、フランスでは地方領主たるノルマンディー公でした。こうして、イングランドの貴族階級はフランス語を話し、民衆が英語を話すという社会の重層構造が生まれたとのことですが、以前フランスで勤務していたときに、この事実からフランス語が英語に対してより洗練されている言語、と宣っていたのを思い出しました。
その後、プランタジネット朝では英仏にまたがる領土を有するも、十字軍遠征での出費や、ジョン(失地王)の失政を経て、ほぼ現在の領土と同規模に縮小。14世紀にはフランスとの100年戦争で、島国となります。テューダー朝、スチュアート朝、ハノーバー朝と王朝が変遷していく中で、ピューリタン革命、名誉革命、産業革命を経て、英国は中央集権国家として形成されつつ、貿易で先行していたオランダを凌駕し、蒸気船や海上保険、電信ネットワークを支配することにより、世界に冠たる大英帝国となります。
二つの大戦後はアメリカのヘゲモニー下で、大陸欧州と距離をとりつつ、米国とも緊密な関係を結んでいますが、Brexitにより英国がスコットランド、北アイルランド、ウェールズ、イングランドを統合するその体制を維持できるかが注目されます。