あらすじ
たとえば直観的に動いて失敗した。だから今度はじっくり考えて行動したのに、やはり選択を誤ってしまった。または、はっきり記憶している経験が、実はぜんぜん違うものだった……など誰でも体験があるだろう。人間とは、間違える動物である。それは認知的な処理能力に制約や限界があるため。だが、それらを知って上手にいかせば、ミスを減らすことができる。自分のことは当然ながら、仕事や教育、災害現場などで、他人を思い通りに動かせるかもしれない。不思議な錯覚・錯視から危険な認知バイアスの理由まで、心理学が解き明かした、人間の知覚の本質とは。
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Posted by ブクログ
人間は思ったほど認知機能が優れているわけではなく、現実としてそこにある世界をありのまま認識できているわけではないらしい。しかもほかの動物と比べるとかなり限られた世界しか見えていないようです。人間である限り、一生聞けない音、見えない光、感じれない感触、嗅ぐことができない匂いがあるのだと思うと、不思議な気持ちになるなぁ。
そして、人間は思った以上にたくさんの認知バイアスや錯覚に絡め取られながら、無意識的に認知、思考しているとか。錯覚や錯視はさておいて、さまざまなバイアスの存在を知っているだけでも、今後自分が何か意思決定や思考するときの助けになります。知っていたからといってバイアスがなくなるわけではありませんが。
特に印象深かったのは、自己の利益を最大化しようと合理的な判断を重ねると、全体の利益は小さくなってしまう「囚人のジレンマ」のくだりから、機械依存の危険性を指摘した部分。合理的な判断の積み重ねが社会全体にとっての最良とは限らない。
Posted by ブクログ
p92
感情が生起してから、それに対応した身体的反応が生じると考える人が多いことでしょう。たとえば、悲しいから泣く、怖いから震える、楽しいから笑う、などなど。ところが、感情と身体的状況との関係については、逆のパターンもあります。泣くから悲しい、震えるから怖い、笑っているから楽しいといったことです。
実際、感情の生起によって生じると考えられるさまざまな生理的反応、たとえば、心拍が早くなったり、発汗したりすることは、自分の情動の生起を経験するよりも早く生じることが知られています。ただし、身体の生理的反応だけで感情が生起するわけではなく、そうした生理的反応の原因をどのように帰属させるかによって、情動の種類や生起が決定されます(情動二要因理論)。つまり、自分自身の感情の内容は、外界や身体情報にもとづいてラベルづけされることで決定されるのです。
・マガーク効果
視覚が聴覚に影響
・ラバーハンド錯視
・ダブルフラッシュ錯視
視覚が聴覚に影響される
p148
自分の持つ信念に合わないことは認識されにくいという特性があります。仮にその事柄が認識されたとしても、記憶には残りにくいのです。
逆に、自分の持っている信念に合致することが生じた場合は認識されやすく、記憶にも残りやすいのです。そのため、いったん獲得された信念は強化されやすく、破棄されにくいことになります。このような信念の維持されやすさは、「確証バイアス」と呼ばれる認知的錯覚の一つです。
実際の事柄と対応しない信念は「迷信」と呼ばれます。
p152
自尊感情とは、自分自身が意義のある存在であるとする感情的判断のことです。…
私たちは、自尊感情を傷つけないように、自分の失敗はあまり認知しませんし、記憶もしません。うまくいったことだけ覚える傾向があります。
自分の引き起こした出来事に対するこのように都合のよい認知を行う傾向の基礎には、自我防衛機制という自尊感情の保全の仕組みがあると考えられます。おそらくは、自分の本当の能力を正当に評価することは、自我の安定にとっては厳しすぎることなのでしょう。
この自我防衛機制には、さらにやっかいな特性があります。自分の信念と一致しない情報の提供者や、自分が高く評価しているものの価値を低下させる人やものについては、心的価値を落としたり、嫌いになったりしやすいのです。
これは、自分が信じていることがら、自分が信じている高く評価している対象と、その対象を低く評価する情報やその情報の発信源の両方を認めることで生じる認知的な不協和を避けるための自動的調整によるものと考えられています。
・虚記憶
・現状維持バイアス
・正常化バイアス
・楽観主義バイアス
・確証バイアス
・同調バイアス
・コントロール幻想バイアス
・損失回避バイアス
・計画の誤謬
・集団浅慮バイアス