あらすじ
妊娠と出産にまつわる、女性にとって切実な話題を切り取った七つの物語──「第一話 掌から時はこぼれて」39歳の女性弁護士が、ふとしたきっかけで知った卵子凍結の情報に、心が大きく揺さぶられて……。/「第二話 折り返し地点」妊娠よりもオリンピック出場を優先してきた女性アスリート。レース前、胸に去来したものは?/「第三話 ターコイズ」不妊治療中の女性たちが集うイベントで、子宮の劣化の話を聞いて愕然となり……。/「第四話 水のような、酒のような」バブル時代に独身生活を謳歌した男が、不妊治療のクリニックで思わぬ宣告を受け……。/「第五話 エバーフレッシュ」妊娠をめざすのか、仕事を優先するのか。女性の厳しい現実に対応する、新しい社内制度とは?/「第六話 五つめの季節」三度目の流産で子供をあきらめかけたとき、養子縁組のことを知り……。/「第七話 マタニティ・コントロール」近未来。不妊治療や子育て支援に大きな予算が投じられ、妊娠は政府によって制御されようとしていた。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
出産にまつわる短編集
30代になった今、読む必要があった本だったなと思う。まわりの人を含めていろんな状況の女性がいるから、それぞれの立場の物語を読むことで想像力を持ち配慮できるようになりたい。
Posted by ブクログ
とても勉強になりました。妊娠や出産をテーマにしたお話が7つ入っています。「五つ目の季節」では涙があふれました。ラストの「マタニティ・コントロール」は珍しく近未来のお話です!
Posted by ブクログ
もっと早く出逢いたかった一冊。
結婚しなくても、子供がいなくても
幸せになれる時代だけど、
男女問わず若いうちに読んで知ってほしいことが詰まった一冊でした。
Posted by ブクログ
BundanTVで知って興味が湧いたので買って読んでみましたが、妊娠・出産についての数々のセンシティブな問題を理解することができ、小説としての読み物としても興味深く読めました。女性が35歳を過ぎると妊娠が難しくなってくることは以前からなんとなくは知ってはいましたが、そのことで悩みを抱える女性の気持ちに関してまでは自分の考えが至っていないことに気が付き自分の未熟さを感じてしまいました。物語には男性の無精子症も出てきますが、これに関しては実際に体験してみないと自分がどの様な気持ちになるかは分からないだろうとも思いました。
本書に「無教養というのは知識の無さを指すのではない。想像力を欠いていることだ」という言葉がありますが、自分がこのような無教養な人間になっていないかどうか見つめるきっかけにもなりそうです。
Posted by ブクログ
初読みの作家さんだったが、とても読みやすく、つらい内容の割に読後感は優しい。
社会で活躍する女性たちの出産に関わる葛藤。
【第一話】 39歳女性弁護士の、卵子凍結から顕微授精という選択。
【第二話】 実業団のマラソンランナーは食事制限が厳しくて生理が止まったまま。
【第三話】 アラフォーで人工授精をして妊娠、妊娠高血圧症候群で早産後に他界。
【第四話】 男性不妊、無精子症。
【第五話】 産休育休から職場復帰後、仕事と育児の苦悩。
【第六話】 不育症で流産を繰り返した後、特別養子縁組と言う選択。
【第七話 】「マタニティーコントロール」?? なるほど、未来の話で二度読みして納得。
前作の「産む、産まない、産めない」も読んでみたい。
Posted by ブクログ
妊娠や出産などにまつわる7つの物語の短編集。
女性なら一度は考えたことがあるような想いがつまっていたり、心が揺さぶられるような共感する物語もあったり。
個人的には、「ターコイズ」と「五つめの季節」の物語が好みだった。
最終話の「マタニティ・コントロール」は衝撃的だった。読む人によっては飛躍しすぎだとか、異色すぎると違和感を抱くかもしれない。
だけど、作者が伝えたかった、いろんな選択といろんな正解という意味では読んで良かったと思えるし、そう遠くない未来もあるかもしれないと思えるような内容だった。
「人生は、若くない女にどこまで意地悪なんだろう」
あとがきにもあるように、産む人も、産まない人も、産めなかった人も、それぞれが解放されますように。
Posted by ブクログ
妊娠中の私にとっては、とっても身近な話題。
社会の仕組みや世間の意識が変わっても、産む生き物としての期限は変えられないー残酷だけれど、これが全てだなと。
妊娠してから、嬉しかったことも多くあるはずなのに、我慢や制限、体の変化にモヤモヤ悩んで。
どうして女性ばかりがこんなに負担を強いられないといけないのか、と旦那に当たる日もあった。
でも、産む生き物(=女)としてこの世に誕生した以上、自分の努力ではどうにも出来ないことだよなと少しだけ納得。
短編集になっていて、弁護士、ランナー、会社員等の女性が妊娠出産について悩み、決断する話。
卵子凍結、不妊治療、流産、仕事か妊娠出産育児かの二択...女性としてはどれも共感できる内容でした。
最後のマタニティコントロールはちょっと異質。
男性も出産可能な世界なんて来るのでしょうか。
未来の状況を少し考えさせられた。
Posted by ブクログ
妊娠、不妊、出産に関する短編集。
私と同じ職業の人が登場すると知り、興味がわいて読んでみた。
読みながら「この本はきっと、取材をたくさんして書いたものなんだろうな」と思った。
なぜそう思ったかというと、同じテーマ、似たテーマで、ここまで様々な切り口で短編を揃えるのは、個人の想像力だけでは無理なのではないかと思ったことと、登場する人たちの話の内容に、何か裏付けがあるような説得力を感じたからだ。
実際、本編の後には取材先への感謝が記されていたけど、取材先は、医療関係(複数)、法律事務所、会社名団体名からは業務内容までわからないもの、とにかく様々でたくさんだった。
私自身は子どもが一人いるけど、産後体調を大きく崩してしまい、仕事復帰してからは、とても苦しい日々を送った。体調を維持するために、今でも服薬を欠かせない。
そんなこともあって、私自身の心と体のキャパシティの問題で、「私はもうこれ以上の妊娠出産は無理だ、この子は一人っ子だ」と決めた。
そう決めても、心のどこかで「35歳を過ぎてしまったな、今からでは高齢出産だな」「もう一人産もうとしたら、私何歳になるかな」などと、もう一人の子どもがいる可能性が何度も頭をよぎってしまう。
自分でその可能性を消しておいて、未練がましいと思う。
でも、そういう私なので、この本に登場する人たちの「明確にならない気持ち」に、すごく共感した。
妊娠と出産には、タイムリミットがある。
卵子凍結ができれば、タイムリミットがなくなる(先延ばしされる)から良いのか?といわれると、そういうことでもない。
だって、その後の育児の方がはるかに大変なのだから。
だから、正解はない、多くの人が悩むことなのだ。
作者の甘糟さんは、女性たちを産む、産まないのプレッシャーから解放したいと思っているらしい。そんなふうに思ってくれる人がいて、実際にたくさんの取材を経て本を書いてくれている。
正解のない問題に悩んだ私からしたら、その事実だけで、十分に嬉しい。
妊娠出産子育てに孤独はつきものだ。でも、会ったこともない誰かが、気持ちを寄せてくれてる、それだけで少しは孤独が和らいだりする。
この本を読んでいて、この本に登場する女性達は、悩みを共有できる心の中の友達みたいな…そんな風に思えた。ありがとう。
Posted by ブクログ
特別養子縁組、人工子宮による男性の出産など妊娠や出産にまつわる7つの短編が入った小説。
その中の「エバーフレッシュ」という話が一番自分に近いからか、好きでした。
不妊治療はしたけれど、こどもに恵まれず、2人で生きていこうとする女性が主人公でした。
子供に興味がない上司、育休明けの部下、育休明けの部下に代わり仕事を引き受ける未婚の女性、と様々な立場の女性が出てきました。それぞれの立場で考えも抱えているものも違う。それぞれ尊重できる世の中がいいな〜。
昭和の時代なら夫婦2人、子供2人がスタンダードかもしれませんが、令和の時代、どれがスタンダードだとか正しいとかなくなってきてるんだな〜と思いました。
Posted by ブクログ
一話一話ズシっと心にのしかかってくる一冊だった
ちょうど子供を考える年齢になってきて
でも同い年で2人くらい子供いる友達もいて
私遅いのかなとか
ほんとに産みたいのかなとか
日々気持ちが揺れるよねぇ
Posted by ブクログ
出産に関連する7つの短編集。7話目のみ異端だが、それ以外は実に現実的で考えさせられる物語。男性目線で見ると女性の心情など勉強になる部分が多かった。
全体的に登場人物の発言がリアルなのがとても読みやすく心地よかった。例えば、『五つ目の季節』の女性課長の言動。流産を繰り返している部下に対して、変に優しくするわけではなく、ランチに誘いながら相談コミュニティを紹介し、反発する部下に強要せずにサラッと伝える。とても人間らしい温かみをリアルに感じられる。『エバーフレッシュ』の女社長もそう。独身のおしゃれなキャリアウーマンだから子育てをしながら働く女性に対して否定的や嫌悪を抱いているという人物を想像しやすいが、現実社会でそんな冷淡で極端な人物はあまりおらず、自分との違いを認識しながらも部下としてどう働いてもらうかを考えている気持ちのよい女性と受け止められた。
話としては『ターコイズ』と『五つ目の季節』が好きだった。前者は、ともに妊活をしてきた女性が先に妊娠し、なぜ自分は恵まれないのかという悩み、なぜ彼女だけという嫉妬を抱く中、彼女が出産時に亡くなるという衝撃的な結末と、作中に出てくるターコイズが静かに物語を締めるのが非常に良い。後者は、2つの別の物語が進み、最後に特別養子縁組というキーワードでつながる点が単純にそう来たかという点で印象強かった。男性目線では『水のような、酒のような』が印象強く残った。男性も不妊の原因となりうること、知っていたけれど改めて突き付けられた感じ。
Posted by ブクログ
どの話も胸が苦しくなった。妊娠、出産に関しては、良くも悪くも感情の乱れが凄まじい。タイムリミットがちらついて意識しはじめても焦るばっかりで、思い通りにならないから他人と比較して傷ついて、とにかくしんどい。でも次第に心が決まれば見えてくるものがあるんだなぁって、、、避けたくなる内容の本だったけど、手にした事で心が決まるまでの一歩を踏み出せた気がします。
Posted by ブクログ
小説だけど、世の中には"産みたい人"だけではなく、少数派だけど"産みたくない人"もいると認めてくれている本だと思った。みんな同じじゃない事を確り捉えてる本でした。
Posted by ブクログ
産む、産まない、産めないシリーズの第二作目。
今回も様々な家庭があって、その中で赤ちゃんが出来ることの難しさや、その事で夫婦の中で、2人の思いが違っているのだと感じました。
Posted by ブクログ
それぞれ視点やテーマの異なる、妊娠と出産に関する7つの物語のある短編集。35になる年齢で結婚も出産の予定もない人間として読んだが、非常にメンタルがざわついた。考えさせられるとか自分ならとかそういう手前のもやもやというか。これだけ多くの選択肢がある現代においてもなお「結婚して子どもをもうける」選択が絶対的正解、手放しで誰もが喜ぶべきもののように捉えられる社会の中で、そうしたくてもできない・そうしようとしているのになかなか叶わない人たちや、他の選択をする人・その選択を取りうる年齢を過ぎゆく人に世間は厳しい。どんなに苦しんでたとしても。この本を読んで特別救われることはないけれど、そういうこともあるんだな、自分だけが苦しい訳じゃないんだな、どういう選択をしても苦しい面もあるんだなとは思える。明るくない未来に投げやりに乾杯したい気分。
Posted by ブクログ
女性は何かを手に入れると、何かを手放さなくなるかも。仕事をしていても時間が来れば帰る。皆残業していても心苦しい思い、子供が生まれたら生まれて早く帰る。仕事を続けることが難しい。そんな中「産まなくても産めなくても」読んで産まない人は、独身 行き遅れ とか言われ、産めなくてもは 相手の人にも協力していただくことになる。本当に難しいと思う。
Posted by ブクログ
妊娠、出産にまつわる短編集。卵子凍結や養子縁組などいろんな角度から描かれていた。最後だけ近未来の話で、将来こんな風にいろんな人が当事者になる場面があったら面白い。
Posted by ブクログ
妊娠、出産をめぐる七つの物語。医療の進歩で出産可能年齢は高くなっているとはいえやはり制限がある。女性の生き方が多様化してるから出産する、しないは自由だ。それでも母性本能というものがあり出産に囚われる時期もあるのではないか。子どもを欲しいと思う気持ちでなかなか授からないカップルの悩みは経験者にしか解らないのかもしれない。この話も共感できる人とそうでない人に分かれそう。
Posted by ブクログ
医療が進歩して「卵子の凍結保存」を選択出来る様になった事に驚愕。
特別養子縁組制度にも触れてあり今回の作品は前作に比べて問題定義的な要素もあり、やや重めな印象を受けました。
1点気になったのは第六話「五つめの季節」の内容。
柿本さんは妹、美由子の事を「二度流産した後、双子を授かった」と葵に話しているけれど(P168)その後P179で葵との会話で美由子が「私はそろそろ子供がいない人生を受け入れようと思っている」と話している点。
文章の脈絡から非常に解りづらい点が気になりました。
Posted by ブクログ
なるほどなあと思う。女性、出産をとりまくいろんなケースをつまみ読みすることができて、いろんな選択肢があるんだな、という感想を覚えた。
どうしても自分の子どもが欲しいという人もいるし、子どもよりも自分の人生を優先させたいという人もいる。また、医学の進歩によって選択肢が増えることで、悩みも複雑になっていくという面もある。
子どもは育てたいと思っていたので、妊娠できる年齢のことについて、また、特別養子縁組についてのことが知れてよかった。作者も、悩んでいる女性たちに選択肢を提示するということをしたかったんだろうと思う。
肉体的な女性と男性、精神的な男性と女性。それらが複雑に組み合わさって人間はできているから、ややこしい。最後の男性の妊娠劇も、どこか他人事めいた感じの描き方が印象に残った。
個人的には、妊娠も出産も子育ても、女性がしなければいけないから女性は損だ、ということはまったくないと思う。それだけ神秘的な体験を出来る女性というのは、ほんとうにすばらしい性別だと思う。その体験をしたことが、仕事にも生かされるような社会になっていないとしたら、それは私たちの社会が未熟であるためだと思う。ほんとうに、女性というのはうつくしい。それを守るためには、どんな科学技術よりも、ひとりひとりの心がけしかないのだと思う。