あらすじ
「わたしは、六ねんせいになったので、べんきょうをがんばります。」ひらがなだらけの作文を、クラスメートに「あなた、ほんとに六年生?」ってばかにされた。私は、「勉強をしよう」って、本当にそう思った。まず、どうすればいい。そうだ、漢字を書けるようにしよう。日記だ。日記を書こう。これはちかいだ――。勉強ができないことを恥ずかしいと感じ始めた少女・珊瑚のクラスに転校してきたのは、まるで『ベルサイユのばら』のオスカルのような、男の子か女の子かわからない月(るな)という子でした。珊瑚の日記に描かれるのは、エイサーを舞う姿がかっこよかったり、ひいおばあちゃんが辺野古に座りこみに行ったり、耳をつんざくような戦闘機の轟音で機体の種類を当ててしまったり、その逆に轟音が聞こえると耳をふさいで動けなくなってしまったりする同級生たちの姿です。珊瑚の「月と仲良くなりたいな」と思う日常を描いた、たどたどしい日記からは、沖縄の子どもたちが、いま、目にし、感じていることのすべてが浮かび上がってきます。子どもの貧困、学力の差、沖縄文化の継承、そして米軍基地問題……。沖縄に移住した作者があたためてきたテーマが、いま花開きます。新たな児童文学の可能性がここにあります。【対象:小学上級以上】
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Posted by ブクログ
沖縄に住む6年生の珊瑚は勉強は苦手。
一緒に住んでいるルリバーは沖縄民謡歌手で、珊瑚も小さい頃から民謡を教えてもらっている。
お母さんは九州で働いて、お父さんはいなくて、
ときどき恥ずかしい気持ちで子ども食堂でご飯を食べさせてもらっていて、珊瑚の家は正直貧しい。
同級生の詩音にひらがなばかりの作文をバカにされ、珊瑚は漢字の勉強を始める。
そんな頃に、本土から転校してきた月(るな)のミステリアスな雰囲気に、珊瑚の心は釘付けとなる。
月のボーイッシュな姿とさりげない優しさ。
詩音のちょっぴり偉そうだけど相手を思う気持ち。
くるみの貧困に関係なく付き合ってくれる友情。
日常の上空を飛ぶ戦闘機の音、辺野古に米軍基地建設の話、
悲惨な沖縄で起きた戦争、貧しくてジュリとなった珊瑚のひいおばあの話
6月23日の沖縄で慰霊の日に向けて、沖縄で暮らす子どもたちのそれぞれの思い。
沖縄が抱えている問題がぎゅっと詰まっていながらも
重くない感じで優しさに包まれている一冊。
色んな人がいて良い。戦争や平和について。
2020年高学年むけ課題図書。
Posted by ブクログ
沖縄に住む小学6年生の女の子、「珊瑚」主観で書いた日記形式の物語には、勉強ができないことを気にしていた本人が、漢字を覚えるために日記を始めたという設定に微笑ましさを感じながら、時折、田中海帆さんの凜とした絵が加わることによって、シリアスな雰囲気も醸し出しており(表紙の楽しそうな絵も裏表紙を見てみると・・・)、そんな本の作り方には地元の人達の視点だからこそ見えてくる、沖縄の様々な素顔や切実な思いがたくさん込められていたのであった。
ジェンダーレスや貧困問題、多様性など、現代ならではの様々な要素が自然と取り込まれた学校生活に於いて、昔から変わらないと思われる沖縄ならではの部分を感じることで、それは過去だけではなく今や未来にも影響を及ぼすのだということを、東京から転校してきた「詩音」や「月(るな)」の率直な反応によって、自然と読み手にもそれが伝わってきて痛感させられる展開には、きっと本書で初めて沖縄の事情を知る子ども達にとっても入りやすいのだと思う、物語を通して自分事のように感じることの大切さである。
「珊瑚」という名前には、『沖縄は戦後、血と涙と珊瑚礁の上にできた島といってもいいくらい、悲惨な戦争を経験した』という認識を持つ、珊瑚の祖母で民謡歌手の「ルリバー」自身の人生が込められていて、そうした思いを、時に珊瑚は重く感じるものの、次第とルリバーの過去を知ることによって、当時の彼女の気持ちを慮るようになることが未来の沖縄へと思いを馳せることに繋がり、やがてはそこで珊瑚が何をしたいのかといった未来像を、気の合う友達同士で一緒に描くまでに至る展開に見られる爽やかさには、胸に焼き付けられた沖縄の実情の中にも明るい希望を灯してくれたようで、そんな読後感にしたことには、作者の上條さなえさん自身の思いも見え隠れするように感じられた。
それは珊瑚たちの話だけではなく、ルリバーの世代の話も一緒に入れることによって、沖縄の歴史を知ることが日本人にとって如何に大切であるのかを教えてくれたようで、それは辺野古の座り込みにも見られる沖縄の基地問題や、糸満市の摩文仁にある平和祈念公園には、敵味方関係なく沖縄戦で亡くなった人の名前が24万人以上刻まれていること、「ジュリ馬まつり」が今と昔で意味合いが異なることなど様々だ。
中でも私が言葉を失ったのは、「島唄」を歌いながら歩く女の人のエピソードで、そこには本書に書かれた沖縄の島言葉について、『先祖が愛したことばをなくしたら心までなくしてしまう気がする』を、必死に表しているようにも思われて、かつては琉球王国として存在していた、先祖から受け継がれた文化や人としての誇りまで戦争は奪ってしまうものなのかと、憤らずにはいられないものがある。
そして沖縄にとっての戦争の終わった日は、米軍が沖縄に上陸して日本軍が全滅させられたのが6月23日で、その日から米軍の下での生活が始まったことから、私が認識していた終戦記念日とは違うということ、この事実はこれからも決して忘れない。
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小5の娘に薦められて読んだ。
子供向けの友情ものかと思いきや、沖縄のリアルな話を子供目線で書かれた物語だった。まぁ子供向けの本であることに変わりはなかったけど。
頑張り屋で、貧乏な境遇に少し劣等感を持つ珊瑚が、華やかな転校生、月に憧れを抱きつつ仲良くなっていく。
また一緒に二人で住んでいるおばあちゃんの、過去も段々とわかってくる。それを受け止められるように成長する珊瑚。
物語の途中にそれとなく沖縄の現実や、過去の苦しみも描かれる。なかなか重い。
うまく文がまとまらなかったが、ちょっとジーンときたり、そうなんだよなー、と真剣になったり、を繰り返した。
良い話だった。
Posted by ブクログ
那覇の小学六年生の女の子、珊瑚が主人公。家は貧しい。子ども食堂で食べるカレーがひそかな楽しみ。勉強が苦手。祖母は酒場で歌う民謡歌手。珊瑚も民謡を習っている。
祖母や曾祖母の過去、地域の人たちの暮らし、育まれる友情、初潮を迎えたときのこと、東京からの転校生をベルばらのオスカルに重ねて憧れる気持ち、等々がつまった物語。
特に印象に残ったのは、東京からの転校生(ややこしいがオスカルとは別人)である詩音が、戦闘機の音を聞いてパニック状態になるシーン。慣れっこでちっとも怖くないし「戦闘機は落ちない」と信じている珊瑚は、「戦闘機は落ちないからだいじょうぶ」と、その音に負けないように大きな声で言う。戦闘機が去ったあと、詩音は「あのねえ、オスプレイは名護の海岸に落ちたのよ!知らないの?ニュースを見ないの?」と怒ったように言った。珊瑚は知らなかった。ひとりで家にいるときはお笑いやアニメを見る。実をいうと、テロが起きたとか虐待で親が子を死なせたとかそんなことを聞かされるニュースを、怖くてひとりで見られないのだ。そして詩音とのこの会話以降、珊瑚も戦闘機の音が怖いと思うようになる。
「基地と隣り合わせの日常」については、「そういうことなんだ」と目が開かれる思い。「ニュースが怖いから見ていない」については私も同じで、たまにものすごく恥をかく(あるいは明らかに恥をかかないように口をつぐむ)ことがある。変なところで共感してしまった。
ちょっと世界が広がる良い読書だった。
Posted by ブクログ
とてもわかりやすく、沖縄の現在と過去を教えてくれている。
子供目線で沖縄を伝えてくれるのはとてもとても感情移入しやすかった。
突然、そして不条理にたくさん大変な思いをしなければならなかった沖縄…
もっと、せめて日本に住んでる人全員がきちんと歴史を学んで考えていかないといけない。
子供から大人まで読むべき本やった。
Posted by ブクログ
小学校高学年の課題図書です
沖縄に住んでいる6年生の珊瑚は東京から転校してきた子からバカにされ漢字の勉強を始めます
最初はひらがなが多いとこから漢字が増えていく文章
もう1人東京から越してきた月
彼女たちとの関わりを通して成長していく子どもたちのお話
沖縄の民謡、平和記念日、アメリカの基地、戦闘機の音
そこで生活している人たち
沖縄と戦争について考えさせられるお話でした
Posted by ブクログ
2020年度小学校高学年、課題図書
沖縄に住む六年生の珊瑚
自分の名前も漢字で書けなかった少女の成長物語
ラストの作文でそれが読者にもはっきりと分かる
横軸に沖縄の現実を織り交ぜながら
家族や友人の中で珊瑚は成長していく
読んでいて胸が痛くなるけれど
子どもたちにも知ってほしいことだ
ずっと切り捨て続けているのだから
この著者の作品をもっと読みたいと思う
≪ 沖縄の サンゴ礁には 血と涙 ≫
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沖縄の小学6年生の子たちの話
主人公の珊瑚は、民謡を歌うルリバーと二人暮らし。
東京からきた詩音と大阪から転校してきた泉、沖縄育ちの珊瑚とくるみ。沖縄に対していろんな思いをもちつつ将来を夢見る成長物語。
珊瑚の日記を通して、物語が進むのでとても読みやすい。
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読書感想文コンクール課題図書高学年の部、国内物語枠。
上条さなえさんの本が課題図書なんていいですね!
舞台は沖縄、沖縄戦、基地問題、貧困問題etcが絡んでくるので割と重たいです。しかも高学年に読ませるのに「アメリカ兵に犯された」はどう説明してよいのやら…しかし、子どもたちのみずみずしい青春物語はイイ。
感想文書くのは非常に難しそうな一冊。主人公に感情移入できるところは多々あるが、「沖縄」に触れようとすると途端に難しくなりそうな予感。
Posted by ブクログ
読み初めて、「あれ?これって小学高学年課題図書じゃなかったっけ?」と疑問を抱くほど、ひらがなだらけの文体だった。
それは、漢字が書けない、勉強ができない珊瑚の日記として書かれているからだ。
珊瑚は、自分の作文とクラスメートのしおんの作文との差に愕然とし、転校生の月に好かれたくて漢字の勉強を頑張る。
それは、4月に書いた作文「六年生の夢」と7月に書かれた作文「二十歳の夢」に大きな差となって現れる。
その間、祖母のルリバーと二人の生活は貧しいのはなぜなのか。ルリバーの秘密から沖縄の過去に向き合う。本土から来た沖縄を知らないクラスメートと基地問題、騒音問題と話は広がり、珊瑚自身も沖縄を深く知っていく。
珊瑚と一緒に読者も、沖縄が抱えてきたたくさんの問題を考えるきっかけになればいいな。
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沖縄の貧困と基地問題を盛り込んだ、県内の小学生の生活のお話。
第66回(2020年)青少年読書感想文全国コンクール課題図書
(小学校高学年部門)
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課題図書と言うことで読み始めました。
本州の小学校では、戦争についての学習は広島か長崎がほとんどだった気がします。今でも米軍基地があるのに沖縄と戦争が結びつきにくい。東京からの転校生と沖縄の子との、色んな点での温度差は戦争を知らずに育った大人世代の自分も同じだと思いました。
ジュリと言う言葉も私は初耳でしたが、日本の教育もちゃんと変わって来ているんですね。
Posted by ブクログ
現代に生きる沖縄の少女たちの日常。戦闘機が低空で飛ぶのが当たり前になっている世界。慣れすぎて怖いとも思わない。しかし沖縄以外から来た転校生たちに触発されておかしいと思うようになる。住宅地を飛ぶ戦闘機、基地反対の座り込み、遊郭に売られたジュリ、貧困率の高さ、そして沖縄であった戦争のこと。沖縄の小学生たちが、沖縄の未来を考え未来を真剣に想う。その純粋さが眩しい。
Posted by ブクログ
2020年度読書感想文コンクール小学校高学年の部課題図書
沖縄でおばあと暮らす、珊瑚という名前で勉強が苦手な6年生の女の子が漢字を覚える為に日記を書き始めた。母親は大阪で美容師として働いていて、おばあは琉球民謡の歌手で夜の居酒屋などで歌っている。そんな珊瑚の前に現れた転校生やクラスメイトの中で成長していく姿を描いている。
読後感爽やか。沖縄の辛い過去や、偏見も描きつつ、人の心の温かさがクッキリと印象に残った。
Posted by ブクログ
平和記念学習で学んだより胸に迫った。
本土でかつ原爆の落とされた地域でもないからそこまで深く勉強をすることはなかったし修学旅行でも胸は傷んだがどこか人ごとだったように感じる。
今はそれが恥ずかしいと思う。
沖縄の問題は根深い、私たちは普段それを知らずに生きている。でも向き合わないといけない、身に染みて感じた一冊だった。
Posted by ブクログ
沖縄と戦争の関係は切っても切れないわけで、そこらへんがひしひしと伝わってくる。それに対して、沖縄の人間が勝手にやってろと言い放つ東京からやってきた子どもの発言もリアル。
とは言ってもこの感覚は恐らく日本でも至るところにあるはずで、東京や都会にひたすら新しいものを取り込む混沌があるなら、田舎には過去を守ろうという徹底した保守がある。
そして最終的には沖縄の流れに乗って郷に入っては郷に従う東京育ちに、ある種の強さを見る。流されたり、迎合したり、そういうのも時として生きていくには大事なことだよね。
と、勝手に本筋と全然関係ない視点で分かったふうな口をきいてみる。