あらすじ
主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族の小説集。第155回直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
表題作がダントツでよかった。
理髪師の語る自身の半生と、社会の変化とともに移り変わる髪型の流行の変遷。
読んでいるだけでうっとりしてしまうような、調髪、シャンプー、ひげそり、マッサージという一連の流れの魅力ある描写。
最後にさりげなく語られる若い客との関係。
そして最後の理髪師のセリフにしびれた。
結末を知って再読すると、2人の会話は様々な含みがあったことに気づく。
数年前に録画していたドラマも視聴したが、2人の表情の演技が素晴らしかった。若い客が店に来た理由や、店の片腕を殴った理由、なぜ店を海の側で開いたか、など、ドラマだけに、よりドラマチックにアレンジされていた。
Posted by ブクログ
荻原さんの作品は文章が心にスッと入って来て、情景がくっきりと想像出来るような気がします。この小説は家族を描き出した短編集ですが、それぞれの登場人物の過去を消化し、未来に進み出す想いに共感します。表題作は伝説の理髪店の店主とその客である僕の関係を描いたものですが、2人のやり取りから描き出される父としての想い、子としての想いに心が震えました。事故で娘を亡くした夫婦が、娘の成人式に出ようとする「成人式」も印象的でした。
Posted by ブクログ
喪失と、その先のささやかな希望を描いた家族もの短編集。
6編それぞれが、母と娘、父と息子、夫と妻といった近くて遠い関係を扱っている。
表題作「海の見える理髪店」は
人里離れた海辺の理髪店に、
ある想いを胸に「僕」が訪れる。
店主が語り続ける身の上話を聞くうちに、二人の関係が静かに明かされていく構成が見事。
どの短編も、派手な事件は起きず沁みてくるお話。
Posted by ブクログ
表題作の「海の見える理髪店」では、理髪店の店主が淡々と自分の半生を語る形で物語が進んでいく。一見何気ない店主とお客さんの会話のように思えるが、最後直接の描写はないにせよ、2人が親子であり結婚の報告をしにきたという結末にはハッとさせられた。どの物語も色々な家族の形を題材にしていて、最後の展開に驚かされ心温まるような一冊だった。