あらすじ
平安最強のエリート部隊VS人非ざる者たち。
今、最も熱い歴史小説!
大力の青年・坂田公時は武士になるため都へ上る。初めて知る身分の境に戸惑う彼は、ある日「鬼」の噂を耳にする。一方、神の棲まう山・大江山では食糧たる獣たちが姿を消す。頭目の朱天は仲間たちのため、盗みを働く決断を下す。人と、「鬼」と呼ばれる者たち。二つの魂が交錯する時、歴史を揺るがす戦が巻き起こる!
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Posted by ブクログ
矢野隆らしい疾走感と躍動感あふれる戦闘描写はさることながら、古代日本の一種の排外思想を鮮明に映し出している超大作。
舞台は平安後期、金太郎で有名な坂田公時の鬼退治を描く。当時の京においては、帝の支配下にある者が「人」であり、その範疇にない者は全て人に非ずとされてきた。文化的に言うとナショナリズムが最も高まった時期と言えるのだろうか。その中で元は都の外で「鬼」として育った公時は人間であるはずの大江山の鬼退治に苦悩する。その悩みを彼らしく破天荒に霧消・昇華していく表現が実に魅力的である。
人に非ざる者は「鬼」「土蜘蛛」「蝦夷」「熊襲」と呼ばれ、彼らを見ると、どうしても私の好きな高橋克彦氏の作品を思い出さざるをえない。その作品の彼らが蝦夷に誇りを持つように、本作のラスボス酒呑童子も鬼であることを受け入れ、鬼として果てていく。人に非ざるとされた彼らが誰よりも人間らしく振る舞うのは非常に皮肉的であり、それが読者を惹きつけるのだと思う。